スタートを決め直線突き放す
短距離でこその強さを見せる

　スーパースプリントシリーズ（SSS）の中でももっとも短い800メートルで争われる名古屋でら馬スプリントには、第1回から昨年まで、3連覇を果たしたラブミーチャンという絶対的な存在があった。そのラブミーチャンが引退し、迎えた第4回。東海地区からはどの馬が名乗りを上げるのか。期待は2頭に集まった。中央準オープンから転入し、3着のあと2連勝中のワールドエンドが単勝1.8倍。ダートグレードでも入着実績のあるサイモンロードが2.2倍。2頭の馬連複は1.5倍というもの。しかし結果は明暗の分かれるものとなった。
　外枠から好ダッシュはマルヨスバルだったが、ワールドエンドの岡部誠騎手も気合を入れてハナを譲らず、マルヨスバルは2番手で、サイモンロードが3番手につけて隊列が決まった。
　3～4コーナーを回るあたりでワールドエンドの手ごたえはまだ楽なまま。対してマルヨスバル、サイモンロードは追い通し。直線を向いて岡部騎手が軽く気合をつけると、ワールドエンドは一瞬にして突き放し、ゴール前は手綱を抑える余裕の勝利となった。
　4馬身差の2着にマルヨスバルが入り、サイモンロードはさらに2馬身差で3着。まさに展開不問のスピード比べ。4着以下までほとんど4コーナーを回った順のままの決着となった。
　まずは3着に敗れたサイモンロードだが、今年に入ってこれが7戦目。しかもそのうち3戦がダートグレード。地元東海地区同士ならほとんど負けることがなかったものが、4月の東海桜花賞ではピッチシフターの5着に敗れていた。さらに今回は門別（北海道スプリントカップJpnⅢ・9着）まで輸送があっての中1週で、厳しいレースが続いての疲れがあったのかもしれない。
　それだけに勝ったワールドエンドの強さが際立つものとなった。勝ちタイムの46秒9は、ラブミーチャンが3年前（第1回）のこのレースで出したコースレコードにコンマ5秒と迫るもの。乾いた良馬場で、しかも最後は流すような感じでのゴールだったことを考えれば、この超短距離ではラブミーチャン級のスピードと言ってもいいかもしれない。さすがに中央での全14戦中13戦でダート1200メートル以下を使われ、そのほとんどで逃げていただけのことはある。
　名古屋への転入初戦は3着に負けていたが、それは1900メートルという距離ゆえ。「体型的に距離ももちそうだと思って、時期的にその後にオグリキャップ記念があったので、1900メートルをこなせればオグリキャップ記念と考えていましたが、あたりの柔らかい岡部騎手でも折り合えないんだから、やっぱり短距離の馬なのかなと。最初はそういう試行錯誤がありました」と川西毅調教師。2戦目の1400メートル戦を楽に逃げ切り、しかし続く前走1600メートル戦は、勝つには勝ったもののノゾミカイソクにクビ差まで迫られた。そして今回の超短距離戦は、期待通りの圧勝となった。
　ワールドエンドの次走はSSSファイナルの習志野きらっとスプリント。ラブミーチャンは引退したが、同じく東海地区代表のサウスヴィグラス産駒が4年連続でSSSチャンピオンとなるのかどうか。陣営の期待は大きいようだ。