重賞を狙う逸材がレコード勝ち
3年前の2歳女王も初距離で存在感

　1000メートル以下の距離で実施される『スーパースプリントシリーズ（SSS）』。2011年の創設以来、笠松のラブミーチャンが名古屋でら馬スプリントからファイナルの習志野きらっとスプリントを3連覇し、圧倒的なスピードと強さを示してきた。そんなラブミーチャンが引退して繁殖入りしたことで、混戦の様相を呈している。どの馬が、スピードチャンピオンに輝くのだろう。
　今年もSSSは川崎スパーキングスプリント（900メートル）から始まった。1着馬と2着馬には習志野きらっとスプリントへの優先出走権が与えられる。優勝したのは脇田創騎手が手綱を取ったユーリカ、2着には真島大輔騎手のショコラヴェリーヌ。混沌としたこの路線にニューヒロインたちが誕生しそうな予感だ。
　ユーリカは船橋の新馬戦（1000メートル）を1分00秒2（良）で駆けて優勝している快速牝馬だが、脚元の不安と戦いながら、ここまでゆっくりじっくりと育てられてきた。川崎900メートル戦の実績もあり、最近の成績からも、「重賞を狙っている馬なので、ここでは負けられないと思っていました」と脇田騎手。
　スタートはゆっくりだったが二の脚が速く、抜群の手応えでハナに立った。「抑えると伸びないタイプなので、この馬のストライドでリズムを崩さないように走らせました」（脇田騎手）。残り800～600メートルでは9秒9というラップタイムを刻みながらも、ユーリカのそのスピードは最後まで衰えることはなかった。2着のショコラヴェリーヌに2馬身差をつける完勝、タイムは900メートル51秒5（不良）でレコード。3年前の川崎スパーキングスプリントを優勝したコアレスピューマが出したレコードタイム（51秒8）よりも0秒3速いものだった。これだけの時計が出たにもかかわらず、レース後の息の入り方はいつもと変わらなかったそうだ。
　普段は大人しくて懐っこい気性をしているそうだが、レースにいけば持ち前のスピードを存分に発揮する。習志野きらっとスプリントも主役の1頭になるだろう。「次に向けても自信を持って臨めますね」（脇田騎手）
　2着のショコラヴェリーヌは短距離戦といえば1200メートルまでしか走ったことがなく、900メートルは未知の領域だった。それでも、道中は3番手を追走できるスピードを持ち合わせていることがわかり、今後に向けても視野が広がっただろう。「スタートから一歩目はもっさり出たけど、追っつけていけば進んでくれました。3コーナーで（他馬に）寄られたのでコーナーをもっときれいに回れていれば、また違う結果だったかもしれません。初距離なのによく対応してくれました」と真島騎手も手応えをつかんだ様子。こちらも次は習志野きらっとスプリントを視野に入れていて、1000メートルの方がもっと走りやすいと見ている。初距離でも勝ち馬のレコードに0秒4差まで迫る走りは価値がある。3年前のグランダム・ジャパン2歳シーズンの女王が、この新路線でどんな存在感を示していくのだろう。
　SSSは、偉大なる先輩ラブミーチャンと同じ栗毛の牝馬2頭が、まずは一歩リードした形だ。