トライアル勝ち馬がファイナルに集結
新たな短距離王の座は8歳の古豪に
スーパースプリントシリーズが始まってから昨年までの3年間、言うまでもなく主役の座にいたのはラブミーチャン。まさに完全制覇とでも言えるような形で名古屋でら馬スプリントから習志野きらっとスプリントで3連覇を果たした。その主役ともいえたラブミーチャンが引退し、超短距離戦線の新たな主役に就くのはどの馬かということが注目されて迎えた4年目。
このシリーズの実施概要には、『超短距離戦で能力を発揮する異才の発掘』とある。これまではラブミーチャンのスピードが突出していたということがあったにしても、ほかに“この距離でこそ”という能力を発揮した馬の存在はあまり目立つものではなかった。しかし今年は、「ラブミーチャンがいないから」という意識も作用したのかどうか、各地で“この距離でこそ”という馬の活躍が見られたように思う。
川崎スパーキングスプリント
まずは川崎スパーキングスプリント。船橋転入後、1200メートル以下しか使われてこなかったユーリカにとっては、B1B2クラスの特別を勝ったまでという格付けでも、おそらく大きな期待を抱いての出走だっただろう。51キロと斤量に恵まれたこともあったが、3コーナーで早くも後続を離すと、直線ではほとんど追われないまま。ゴール前で差を縮めたのはショコラヴェリーヌだけだった。
園田FCスプリント
園田FCスプリントを勝ったのは、佐賀から遠征のエスワンプリンス。3~4コーナーで先頭に立っていたのはスターボードだったが、まさにワンターンのコーナーで内をうまく立ちまわった鮫島克也騎手の好騎乗。デビュー戦の1300メートルがそれまでの最短距離だったが、この超短距離でも通用するスピードを見せた。2着のスターボードは昨年の川崎スパーキングスプリントの勝ち馬(1着同着)で、3着のディープハントとともに昨年は南関東所属で習志野きらっとスプリントに出走し、それぞれ5、2着だった。6着の高知・ファイアーフロートは昨年(3着)に続いての参戦。回を重ね、こうして超短距離を意識して使う馬が増えてきた。
グランシャリオ門別スプリント
グランシャリオ門別スプリントは、笠松から門別に移籍して2年近く、1200メートル以下のみを使われてきたアウヤンテプイが連覇。エトワール賞2着、北海道スプリントカップJpnⅢ 4着からという、着順まで含めて昨年とまったく同じ臨戦過程での参戦だったというのもめずらしい記録だろう。
名古屋でら馬スプリント
名古屋でら馬スプリントは、中央で準オープン勝ちの実績のあるワールドエンドが他馬を寄せ付けない強い勝ち方。中央でも1000メートルで2勝しているように、距離は短ければ短いほどというところを見せた。あまり目立ってはいないが、2年連続で4着だったシンゼンユメノスケは、昨年はC1級特別のトライアルを勝って、そして今年もB1級特別の参考競走を勝っての参戦。川崎で勝ったユーリカもそうだが、条件クラスの馬でもこの超短距離ならオープンクラスでも通用するという、隠れた才能を持っている馬は確実にいるということだろう。
習志野きらっとスプリント
そしてファイナルの習志野きらっとスプリントには、優先出走権のあるトライアルの勝ち馬(川崎スパーキングスプリントの2着馬も含めて)の全馬が出走してきたという点で、今年は画期的な年となった。
しかし勝ったのは、過去のこのシリーズに一度も参戦したことがなかった8歳の古豪、船橋のナイキマドリードだった。トライアルの川崎スパーキングスプリントにも出走経験がなかったのは、得意とする浦和コースのさきたま杯JpnⅡと日程が近いため。そして地元の習志野きらっとスプリントに出走がなかったのは、夏に弱いため。それゆえ7月のレースに出走するのは、まだ条件クラスだった2010年以来4年ぶりのこととなった。レース後の勝利騎手インタビューで話していたが、出走は川島正太郎騎手からの進言だったようだ。今年まで3連覇している船橋記念と同じ得意の舞台ということもあったのだろう。「8歳でもまだまだ戦える」と船橋記念のあとにコメントしていたが、全国交流の舞台でもそれを証明して見せた。
ユーリカとワールドエンドという、両トライアルの勝ち馬が互いに譲らず競り合ってという展開もあったが、ナイキマドリードは無理には行かず、この超短距離ながら3コーナーで息を入れるという落ち着いたレース運び。船橋記念の3連覇でも、好位~中団追走からゴール前で差し切るという同じようなレースぶりだったが、特に今回の川島正太郎騎手の好騎乗は光っていたように思う。
今回のナイキマドリードの勝ちタイムは59秒0(重)で、船橋記念3連覇の勝ちタイムでもっとも速いものでも同じ59秒0。対してラブミーチャンの過去3年の勝ちタイムは、第1回から順に、58秒4(重)、58秒2(良)、58秒3(良)というもの。競馬は相手があることゆえ単純にタイム比較とはならないとはいえ、あらためてラブミーチャンの圧倒的なスピードを思わせた。
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