僅差の決着も地力を見せる
さらなる高みを目指しJBCへ

　グランダム・ジャパン古馬シーズン第7戦、秋桜賞。今年は11頭立てで行われたが、本来ならばそこに、兵庫サマークイーン賞を勝利したエーシンサルサが加わっているはずだった。しかし同馬は摂津盃を制したあと、放牧に出てしまった。第6戦の終了時点でポイント2位となっている同馬が不在という事態は、グランダム・ジャパンの上位入賞を狙う陣営にとっては色めき立つ心境になったに違いない。
　しかし、名古屋競馬場で秋桜賞の馬体重が発表になったとき、その風向きは少し変わった。大井からの遠征馬、キモンレッドがマイナス15キロ、そして佐賀のサマーチャンピオンJpnⅢで2着に入った地元のピッチシフターは、プラス14キロとなっていたのだ。ピッチシフターの単勝オッズは1.3倍。前走で9キロ減った体重が戻った形とはいえ、パドックを歩く姿は見た目にも元気がなかった。
　対して、パドックのあちらこちらから「デキがいいなあ」という声が聞こえていたのが、笠松のタッチデュール。こちらもグランダム・ジャパンの上位入賞を狙う存在で、単勝こそ3番人気だったが、ピッチシフターとの馬連複のオッズは最終的に2.3倍と、3.0倍だったキモンレッドとの組み合わせ以上の支持を得ていた。
　ただ、それでも断然人気はピッチシフター。馬連複ではその2通りに人気が集中するなかで開いたゲートからは、キモンレッドとピッチシフターが積極的に先行していく姿勢をみせた。
　1コーナーでは先手を主張したマコトクオバディスに続く位置をキモンレッドが確保して、ピッチシフターは4番手。そして向正面に入るとピッチシフター鞍上の大畑雅章騎手は早くもゴーサインを出し、3コーナー手前から先頭を奪いにいった。
　それを追いかけたのが、中団からレースを進めたタッチデュール。3コーナーではインコースを狙って上昇し、4コーナーでは外に出して追撃。最後はクビ差でピッチシフターが先頭を守り抜いたが、その攻防は見ごたえがあるものだった。
　検量室前の1着の枠場にピッチシフターが入ってきたとき、大畑騎手は大きく息を吐いて、肩の荷が下りたという表情をみせた。「正直、状態はあまりよくなかった」というなかで断然人気の馬に騎乗するのは、相当なプレッシャーになっていたのだろう。
　逆に2着となったタッチデュール鞍上の佐藤友則騎手は、「3コーナーの手応えでは逆転できると思ったんですが」と悔しそう。それでもグランダム・ジャパンでは6ポイントを加算して2位に浮上と、上位入賞の可能性が高くなった。
　続く3着には逃げたマコトクオバディスが粘り込み、大井のキモンレッドは4着まで。どうやら向正面での動きがいまひとつだったようで、岡部誠騎手はパトロールビデオを見ながら、やるせない顔つきでレースを振り返っていた。
　さて、僅差とはいえ1番人気の支持に応えたピッチシフターだが、このあとは大舞台への挑戦が予定されている。グランダム・ジャパンでも、表彰対象の地方馬では、3位のエーシンサルサに4ポイント差の4位に浮上してきた。最終戦までは中16日。10月2日に行われるレディスプレリュードJpnⅡは、かなりの混戦となることだろう。
　

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