逃げて人気馬をハナ差振り切る
鞍上は移籍後うれしい初タイトル

　北海道の夏のダートグレードレースとして定着していたブリーダーズゴールドカップが今年から牝馬限定のJpnⅢに変更され、グランダム・ジャパン古馬シーズンにも組み込まれた。ノースクイーンカップは、約1カ月後に行われるブリーダーズゴールドカップに繋がることから、今まで以上に注目のレースとなった。
　これまでホッカイドウ競馬の古馬戦線を牽引し、ともにノースクイーンカップの勝ち馬となり、その対戦も注目の的となってきたクラキンコとショウリダバンザイが昨シーズン限りで引退。新女王決定戦である今年は、オープン馬が不在、他地区所属馬も登録のみで回避し、どの馬にもチャンスがありそうなメンバー構成となった。したがって人気も割れ、1番人気のハッピーメイカー（単勝3.2倍）から5番人気までが単勝オッズ一桁となった。
　ゲートが開くと、好スタートを切ったココロバがほとんど競り合うことなく先手を取った。同厩舎のプリュムローズが大外から積極策で2番手に。先行争いが予想されていたフレアリングマリーは内の3番手に控えた。2番人気のマヤノポルカが好位を追走し、ハッピーメイカーは中団で前をうかがう態勢で、縦長の隊列でレースが進んだ。ほぼそのままの位置取りで各馬が勝負どころを迎えると、「自分のペースでいけば粘ってくれる馬」という阪野学騎手の言葉どおり、直線ではココロバが持ち味のしぶとさを発揮。ゴール前では、馬群を割って伸びてきたハッピーメイカーが猛追したが、ココロバがハナ差しのいで逃げ切り勝ち。重賞初挑戦でタイトルを手にした。
　「直線半ばあたりから後ろの馬が近いことは分かっていました。最後は馬に、頑張れ！と心の中で言っていました」と柔らかな笑顔で振り返る阪野騎手にとっても、わずかな差で掴みとったこの重賞勝利は大きなものになったに違いない。
　今年1月まで愛知に所属していた阪野騎手は、2012、13年と続けて北海道での期間限定騎乗を経験し、今季から完全移籍。心機一転で勝負服も変更し、北の大地で新たな騎手人生が始まった。しかしスタートダッシュとはいかなかった。シーズンに入って2勝をあげたのち、5月13日の能力検査の最中に馬の下敷きになり、腰の打撲、太ももの肉離れという怪我を負ったことが原因で、約1カ月半の間戦列から離れることとなった。「自分が乗るかもしれない馬が勝つと、悔しくていてもたってもいられない気持ちでした。けっこう苦しかったです」と休養中の心境を語った。7月1日に復帰し、ノースクイーンカップ当日は重賞を含め3勝と固め打ち。「この重賞勝ちは自分を勇気づけてくれる勝利。僕は勝つと波に乗るタイプなんですよ（笑）」と、完全復活をアピールした。これからの活躍が楽しみな成長著しい26歳。新天地でますます輝いてくれることだろう。 　

ツイート