5着までコンマ1秒の大接戦
タイトル狙う2頭の同着決着

　全国でスピード自慢たちがしのぎを削る『スーパースプリントシリーズ』も今年で3年目を迎えた。一昨年と昨年は、笠松のラブミーチャンが名古屋でら馬スプリントからファイナルの習志野きらっとスプリントを格の違いで連覇を飾っている。
　今年も南関東の川崎スパーキングスプリント（900メートル）からスタートしたが、その緒戦を彩るすばらしいドラマを目の当たりにできたように思う。
　梅雨時期であることや台風3号が接近している影響で川崎競馬場にも激しい雨が降り、馬場状態は稍重。それでもメインレースの頃には雨も小康状態になり傘を差さずに観戦できたのは幸いだったが。
　今年デビューした笹川翼騎手が騎乗したダンシングロイヤルが48キロの軽量を生かしてハナを主張すると、スターボードやスパロービート、エンドスターらも好位につけていった。3～4コーナーでスターボードがダンシングロイヤルに並びかけ、直線半ばに入って競り落とし、そのまま押し切るかと思ったところに、中団から後方を追走していたアイディンパワー、タマモスクワートが猛追。最後はスターボード、アイディンパワー、タマモスクワートの3頭が横並びとなって一瞬のうちにゴール板を駆け抜けていった。
　写真を撮影していた報道陣は「どっちが勝った？」と顔を見合わせて瞬時に判断はできなかったのだが、それは騎乗していた騎手たちも同じだった。先に検量前に戻ってきたスターボードの戸崎圭太騎手は2着の枠場に入り、しばらくして引き上げてきたアイディンパワーの的場文男騎手も同じ2着の枠場へ。映像で見る限りはアイディンパワーが差したように感じた関係者も多かったため、この光景にざわついた。長い写真判定の末、スターボードとアイディンパワーの同着優勝が決まり、タマモスクワートはこの2頭からハナ差の3着。900メートルの勝ちタイムは53秒8（稍重）で、1着馬から5着馬までが0.1秒差の中でひしめき合う大激戦だった。
　優勝したスターボードとアイディンパワーは、ともに中央時代には短距離を中心に4勝を挙げている実力馬で、重賞を勝つことを目標にして南関東に移籍してきた共通点がある。「力は持っている」ということは、両馬にかかわる人たちが話していて、重賞初制覇までもう少しだ。2頭ともに優先出走権を獲得したファイナルの習志野きらっとスプリント（7月15日・船橋）に進む予定で、そこで最終決着をつけて欲しいと思う。
　川崎スパーキングスプリントは53秒台というあっという間の出来事だったが、記憶には十分過ぎるくらいに残った。『超短距離戦、おもしろい！』と高揚したのは、筆者だけではなかっただろう。