SJT タイトル
 本年11月30日および12月1日にJRA阪神競馬場で実施される第27回ワールドスーパージョッキーズシリーズ(WSJS)には、地方競馬から代表騎手1名が参加しますが、この出場権を地方競馬トップジョッキーが競う「ワールドスーパージョッキーズシリーズ地方競馬代表騎手選定競走」の呼称です。下記に示しました、SJT本戦(第1ステージ、第2ステージ)の4レースにおける着順に応じた得点の合計により、WSJSの(※)地方競馬代表騎手(第2位の者が補欠騎手)が選ばれます。
 また、本年もSJT本戦に先がけて、各地方競馬場リーディング2位(南関東地区は5位)の騎手等による、本戦への出場を懸けた『SJTワイルドカード』が実施されます。
 ※ 地方競馬代表騎手については、地方競馬全国協会から代表騎手1名、補欠騎手1名を日本中央競馬会に推薦し、同会が決定します。

※下の“タブ”をクリックするとご覧になりたいレースの記事に切り替わります。

ベテランの技が光り全4戦で入着
川原騎手が2度目のWSJS出場へ

 スーパージョッキーズトライアル(SJT)第1ステージから3週間。舞台は第2ステージの園田競馬場に移った。
 第1ステージ終了時点でのポイント第1位は、兵庫の川原正一騎手。しかし8位の騎手でも首位と11ポイント差という混戦模様は例年通りで、第2ステージで逆転できる可能性は多くの騎手に残っていた。
 それを現実に近づけるためには第3戦が重要。しかし最低人気馬の単勝オッズは、騎乗合図がかかった段階で33.1倍。各騎手は「A評価」と「B評価」の馬に1回ずつ騎乗するのがルールだが、それで分類するには厳しいと思えるオッズだった。
 それでも最終的には、単勝10倍以下が5頭、10倍台が1頭、20倍以上が5頭という分布になったが(金沢の青柳正義騎手の騎乗馬は競走除外)、それぞれの騎手が普段以上に力が入るこのシリーズでは、人気がアテにならない傾向がある。地元の川原正一騎手以外は園田競馬場に不慣れ、そして重馬場のコンディションとなれば、ペースが速くなりがちだ。
 その予想どおり、1400メートルのシルバーブーツ賞は2コーナー付近で縦長の展開に。しかしその差は3コーナーあたりでは縮まって、先行勢が苦しくなっているのは明らかだった。
 その流れを味方につけたのが、序盤は後方にいた伏兵勢。向正面入口では後方2番手にいた尾島徹騎手(笠松)がインコースを強襲して勝ち、2着には中団から差を詰めた桑村真明騎手(北海道)が入って、3着は最後方から突っ込んできた大畑雅章騎手(愛知)。最低人気馬が勝ち、3着馬が9番人気というのは、SJTらしい結果ともいえた。
 その着順をいち早く気にしたのは金沢の吉原寛人騎手。「川原さんは何着だった?」と言いつつ向けた視線の先は、着順表示板。写真判定で空欄だった5着の場所には、しばらくして川原騎手を示す「1」が点った。

 SJTの得点表は、5着が10ポイント、6着が6ポイントと、そこにやや差がある設定になっている。川原騎手は第3戦で5着を死守したことで、大畑騎手と同点ながらトップをキープしたまま最終戦を迎えることになった。とはいえ、第4戦の結果次第で順位は大きく変わってくる。だが、気持ちばかりが急いてもいけない。第3戦を制した尾島騎手は、第1ステージでの11位から逆転優勝が狙える位置にまで浮上してきたが、「ハイ、まあ、普通に乗ってきます」と、自分に言い聞かせるように話して、馬道に向かっていった。
 その第4戦シルバーホイップ賞は、吉原騎手のチャンピオンホークが断然の人気。一発勝負を狙いたい騎手はたくさんいたはずだが、「みんなが出方を窺っている感じ」(御神本訓史騎手・大井)という後続勢を尻目に、吉原騎手が逃げ切り勝ちをおさめた。2着には御神本騎手が入って、3着には桑村騎手。桑村騎手は第3戦の終了時点で首位と4ポイント差だったから、この3着はとても大きい。一方、暫定首位だった大畑騎手は10着。しかし川原騎手は、またしても写真判定となった5着争いのなかに入っていた。川原騎手は5着なら優勝、6着なら桑村騎手が優勝。緊張の空気のなかでしばらく待つと、そこには川原騎手を示す「3」の数字が点った。
 それを受けて報道陣から「川原さんが優勝だと思います」と声が挙がった。すると川原騎手は、「マジで!?」と大声。あまりの目の輝きように計算間違いはないのかと心配する声も聞こえてきたが、ほどなく配布された得点表には間違いなく、1位の欄に「川原正一」と印字されていた。
 しかしながら、1位と2位の差はわずか1ポイント。2戦連続で6着とはハナ差で5着に入ったことが優勝の決め手になった。「運がよかったね」と川原騎手は話したが、全国リーディングを走っている54歳の勝負強さが、この舞台で発揮されたといえるのではないだろうか。
 地元の競馬場でSJT優勝を決めた川原騎手は、すぐ近くの阪神競馬場で11月30日、12月1日に行われるワールドスーパージョッキーズシリーズで、1997年に続く2度目の総合優勝を目指すことになる。そこではたくさんの兵庫競馬ファン、そして兵庫競馬関係者がエールを送る姿が見られるはずだ。

取材・文:浅野靖典
写真:桂伸也(いちかんぽ)、NAR

当日の様子はこちら
(YouTube地方競馬チャンネル内)

総合優勝
川原正一騎手
騎手を何年やっていても、こういうレースは気が急いてしまうんですよね。兵庫の関係者からはプレッシャーをかけられていましたし(笑)。最終戦は5着までに入れればとは思っていましたが、優勝が確定したときはうれしかったです。(WSJSでは)地方代表として恥ずかしくないレースをしたいと思います。
総合2位
桑村真明騎手
SJTは初めてでしたし、この4戦を経験できたことに満足しています。小回りコースも1400メートル戦も経験が少ないので難しかったですが、少しでも上にという気持ちで乗りました。北海道のリーディング争いは年々厳しくなっていますが、また来年もこの舞台に進めるように頑張ります。
総合3位
御神本訓史騎手
普段とはレースの流れが違いますが、馬に乗るという部分では同じですからね。でも、第3戦がもう少し上の着順だったらよかったんですけれど……。これまで3位になったことがありましたが、今回も3位。次に参加するときには1位になりたいと思います。