グランダム・ジャパン タイトル
レース名 実施日 競馬場 距離 地区
園田プリンセスカップ 9/19(木) 園田 1,400m 北陸・東海・
近畿・中四国
エーデルワイス賞 JpnⅢ 10/10(木) 門別 1,200m 北海道
ローレル賞 11/12(火) 川崎 1,600m 南関東
プリンセス特別 11/21(木) 笠松 1,600m 北陸・東海・
近畿・中四国
プリンセスカップ 12/2(月) 水沢 1,400m 東北
東京2歳優駿牝馬 12/31(火) 大井 1,600m 南関東
地方競馬では、牝馬競走の振興と牝馬の入厩促進を図るため、昨年に引き続き、世代別牝馬重賞シリーズ「GRANDAME-JAPAN(グランダム・ジャパン)」を実施します(創設2010年)。

全国各地で行われる牝馬重賞を世代別に体系づけ、競走成績によりポイントを付与。2歳、3歳、古馬の世代別ポイント獲得上位馬に対し、協賛各団体から(社)日本軽種馬協会を通じボーナス賞金が授与されます。地方競馬の優れた牝馬の活躍の舞台を広げるとともに、交流を促進して魅力ある牝馬競走の実施を目指します。

直線末脚勝負で突き抜ける
川崎生え抜きの伏兵が栄冠

 今年のグランダム・ジャパン2歳シーズンは、北海道のカクシアジが第5戦のプリンセスカップ(水沢)を勝利し早々と優勝を決め、最終戦では2位3位を巡るポイント争いに焦点が絞られた。  東京2歳優駿牝馬は毎年、翌年の南関東クラシック戦線を賑わす牝馬を輩出する出世レースといえる一戦。特にホッカイドウ競馬出身馬の活躍が著しく、2007年から6年連続で北海道から南関東に転入した馬が勝利を飾っている。今年もやはり移籍組に注目が集まり、その中でも筆頭は、新馬戦から大物の呼び声が高かったノットオーソリティ。栄冠賞とフローラルカップ制覇という実績を引っ提げて船橋・川島正行厩舎に転入し、その初戦も快勝。もちろんファンからの期待は大きく、単勝1.3倍と断然の1番人気に支持された。
 しかし、今年はその流れに待ったをかけた馬がいた。8番人気の伏兵馬、川崎生え抜きのブルーセレブだ。南関東デビュー馬の優勝は、2005年のダガーズアラベスク以来となる。
 波乱はスタート直後から起こった。ゲートが開くとノットオーソリティが躓いてバランスを崩し、最後方からのレースとなったのだ。先行した3頭がペースを作り、隊列はやや縦長の展開。ブルーセレブは中団後ろでじっくりと構えていた。
 向正面で動いたのはノットオーソリティで、大外からぐんぐん進出し3~4コーナーで先団に取りついた。直線に入ると、逃げていたタントタントが内で粘り、ノットオーソリティが抜け出そうとしていた。しかし、その後ろからブルーセレブが一気に脚を伸ばしてきた。「前を交わせる脚色だったので、ひょっとしたら勝てるかもと興奮しました」と森泰斗騎手が振り返ったように、並ぶ間もなくライバルたちを交わし去ると、馬場の真ん中を突き抜けて森騎手の左手が上がった。
 2着には大外から豪快に追い込んで場内を沸かせたストロベリーランが入り、川崎生え抜きのワンツーフニッシュとなった。3着も川崎所属馬で、北海道からの転入初戦だったクライリング。ゴール前にもう一伸びしてローレル賞勝ちの意地を見せた。「躓いたのがすべてです」(石崎駿騎手)というノットオーソリティは5着に敗れた。
 森騎手に勝因を尋ねると「展開がドンピシャリとはまりました!」と会心の笑み。そして、「それは馬の力があってこそですよ」と付け加えた。陣営がブルーセレブの能力を実感したのは2走前の若武者賞だ。1頭だけ次元の違う末脚で勝利を飾り、その瞬発力の高さに驚いたという。今回が重賞初挑戦で相手は上がったが、キレ味を生かす競馬に徹したことで最高の結果を出すことができた。2014年の目標はもちろん南関東クラシック制覇。今回が急仕上げだったこともあり、状態を見ながら浦和・桜花賞までのローテーションを考えるという。
 さて、これでグランダム・ジャパン2歳シーズンが終了。先述した通り、優勝は、合計47ポイントで他馬を圧倒した北海道のカクシアジ。2位は、最終戦3着で合計27ポイントを獲得した川崎のクライリング。3位は、最終戦2着で合計20ポイントを獲得した川崎のストロベリーランという結果となった。カクシアジは、すでにJRA(栗東・谷潔厩舎)に移籍している。田中淳司調教師は、「かなり厳しいローテーションの中でがんばってくれました。小さいのに、あんなにタフな馬はなかなかいないです。芝適性もあると思うので中央でも楽しみです」と新天地での活躍を願った。
森泰斗騎手
いい脚を持っているのは分かっていたので、それを引き出せればチャンスはゼロじゃないと思っていました。道中は無駄に動かずに最後のひと脚に賭けようと考えていて、素晴らしい末脚を使ってくれた馬に感謝です。折り合いもつくし距離が延びても大丈夫でしょう。今年最後の騎乗で勝てて良かったです。
武井和実調教師
大きい勝利はまだ先だと思っていましたが、厩舎の初タイトルは本当に嬉しいです。レース度胸もあるし溜めていい脚も使うし、今日も初めての馬場で物怖じしなかったように精神面も強い馬ですね。見た目は細いけど質の良い筋肉も持っていますよ。まだ自分たちも未熟なので馬と一緒に成長していきたいです。

取材・文:秋田奈津子
写真:宮原政典(いちかんぽ)