10月中旬~11月上旬にかけて行われる各地の2歳主要競走(計7レース)を約3週間のうちに短期集中施行するシリーズ(2008年創設)。

 3歳馬によるダービーウイーク同様、各地の主要競走が短期間で楽しめる贅沢感や、先々への期待感を醸成できることが当シリーズ最大の魅力。また、11月以降のダートグレード競走(兵庫ジュニアグランプリ・全日本2歳優駿)への出走意識を高めることで、競走体系の整備促進にも資することが期待される。


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直線抜け出し半馬身押さえ込む
東厩舎4強対決は逃げ切り決着

 九州ジュニアチャンピオンは荒尾競馬が健在だった一昨年までは四国・九州交流競走として行われていたが、昨年から未来優駿シリーズに組み込まるとともに、佐賀デビュー馬限定戦となった。今年のJRA認定競走の第1戦は7月21日に行われ、ダイリンカザンが勝利したが、同馬は脚に故障を発症し、8月に引退。一方、そのレースで4着に敗れたマツノヴィグラスがその後の3戦を逃げ切りで連勝して2歳戦線のトップに台頭してきた。また、九州ジュニアチャンピオンの前哨戦として行われた2歳特別戦はアルデバラン特別をアオゾラセント、シリウス特別をマツノヴィグラスが勝利し、両レースともに東眞市厩舎の管理馬が3着以下を突き放して1、2着を独占した。その4頭が揃ってここに出走してきたが、それぞれの馬の力量は接近しており、「4頭のうちどれが勝つのか?」が注目される一戦となった。
 しかし、東調教師がレース前に「この中では一番の期待馬」と評していたミスタージャック(アルデバラン特別2着)と、アイスカチャン(シリウス特別2着)の両馬はスタートでダッシュがつかず中団からの競馬に。マツノヴィグラスが先頭を確保したものの、グリーンアロマら3頭の追撃を受けることとなった。
 直線ではマツノヴィグラスが抜け出しにかかったが、道中で同馬の直後をマークしていたケンシスピリットが内から猛追し、差し切ろうかというところまで追い詰めたが半馬身及ばず、マツノヴィグラスが4連勝で2歳チャンピオンの栄冠を獲得した。
 マツノヴィグラスを勝利に導いた田中直人騎手には、2011年春の九州ダービー栄城賞でリネンハイブリットに騎乗し、ゴール寸前まで先頭に立っていたものの、長田進仁騎手騎乗のコスモノーズアートに半馬身差し切られ重賞初制覇を逃した悔しい思い出がある(同年秋にリネンハイブリットでロータスクラウン賞を勝利し、重賞初制覇を達成)。今回もマツノヴィグラスで先頭に立ち、長田騎手のケンシスピリットが迫ってくるという、あの栄城賞と同じような構図となったが、今度は逆に半馬身押さえ込んでの重賞(S1)2勝目となった。
 結局、東厩舎の4頭は、勝ったマツノヴィグラスを筆頭に、3、4、5着。東調教師は一昨年のダイリンウィーク、昨年のロマンチックに続いてこのレース3連覇(4勝目)を達成。しかし3着以下の3頭は直線で前の2頭との差を詰められず、勝ち馬も半馬身差の辛勝とあって、「納得できない。4頭ともに力を出し切れず、勝つには勝ったけど素直には喜べませんね」と東調教師。レース内容には厳しい見方をしていた。
 佐賀県競馬組合はこの25日に、明け3歳馬によるレース(1月に牡馬限定、牝馬限定で各1戦。3月に牡馬牝馬混合戦)の新設と、そのレース名公募を発表した。この3競走は九州ジュニアチャンピオンと同様に佐賀デビュー馬限定戦として行われることとなっており、今回の上位陣が再戦することになりそう。一方で今回5着のミスタージャックと同6着のシゲルキタミの間には8馬身の差が開いている。上位と下位の力が大きく離れ、佐賀デビュー馬の層が厚いとは言えないことが浮き彫りとなった。3歳戦線での転入馬との戦いへ向けて、全体のレベルアップが急務となりそうだ。

田中直人騎手
ゲートは切れませんでしたが、行くしかない馬なので行きました。直線では外からアオゾラセントが来ましたが、どっちみち後ろから来るのは同じ東眞市厩舎の馬だと思っていましたので、(内から)よその(厩舎の)馬が来ていてびっくりしました。最後は馬ががんばってくれました。
東眞市調教師
他の馬が伸びてこず、最後は田中(直人騎手)なんとかしてくれという気持ちでした。他の2頭(アイスカチャン、ミスタージャック)は出足でもたれて反応せず、ちょっと情けなかったですね。今後は4頭ともに栄城賞に向けて鍛えなおしで、遠征とかは考えていないです。


取材・文:上妻輝行
写真:桂伸也(いちかんぽ)