10月中旬~11月上旬にかけて行われる各地の2歳主要競走(計7レース)を約3週間のうちに短期集中施行するシリーズ(2008年創設)。

 3歳馬によるダービーウイーク同様、各地の主要競走が短期間で楽しめる贅沢感や、先々への期待感を醸成できることが当シリーズ最大の魅力。また、11月以降のダートグレード競走(兵庫ジュニアグランプリ・全日本2歳優駿)への出走意識を高めることで、競走体系の整備促進にも資することが期待される。


2013年未来優駿の総括はこちらです

※下の“タブ”をクリックするとご覧になりたいレースの記事に切り替わります。


ここを目標に強めの調教が奏功
絶妙のペースでライバルを完封

 今年も未来優駿はここ盛岡から。2008年からスタートしたこのシリーズだが、それ以降若駒賞の勝ち馬は南関東へ移籍したワタリシンセイキを除き、いずれも3歳シーズンにやはり重賞を優勝。その名の通り岩手競馬の未来を占うレースになっている。芝コースのある盛岡競馬場の特性上、今年は芝路線を走る組と多少メンバーの分散があるが、トップクラス10頭(1頭競走除外)がここに顔を揃え、初めてのダート1600メートル戦を戦った。
 今年の2歳馬として、水沢競馬場で一番初めに行われた5月10日の能力検査、そして5月26日の新馬戦をともに1着で駆け抜けたのがラブバレット。その後も敗れたのは芝の若鮎賞6着のみで、ダートでは前走ビギナーズカップの5馬身差圧勝を含み3戦3勝。通算5戦4勝の数字も他馬をリードするものであり、単勝式1.3倍という圧倒的な支持を受けた。
 しかしゲートオープンから強気に逃げの手に出たのは2番人気ライズラインの小林俊彦騎手。「スタート次第で、誰かが行くようなら控えようと思っていた」とはレース後語ってはいたものの、1番枠からの積極策はかなりの確率で考えていたに違いない。対照的に大外11番枠から発走のラブバレットはこれをマークの2番手。4番人気シグラップロードが2頭を追い、上位人気馬が早くも前を固めた。重馬場でもありラップタイムは速めで緩まず推移するが、先頭ライズラインの小林騎手が「仕掛けて反応したので行ける」と自ら3コーナーからスパート。ラスト3ハロンを12.2-11.6-13.1秒でまとめ後続を完封。思えば1週前、マイルチャンピオンシップ南部杯JpnIでエスポワールシチー騎乗の後藤浩輝騎手が作り上げた流れに、時計は違えど酷似したペース配分だった。
 立場を逆転して主役となったライズラインは千葉幸喜調教師が、デビュー前から「今年の2歳世代で3本の指に入る素材だと思う」と期待していた馬。新馬勝ち後の7月20日に盛岡ダート1200メートルの一般戦でラブバレットと一度対決があったが、スタートからダッシュがつかず、ほぼ最後方からの競馬になったラブバレットが上がり3ハロン35秒5という驚異的な脚で差し切り。早め先頭のライズラインにとっては結果半馬身差とはいえ、完敗といえる内容だった。それからは芝の重賞惜敗も挟んだが、若駒賞へ向けて意欲的な攻め馬を続け、3カ月の時を経て雪辱。「強め強めに乗ってきた攻め馬も勝因」とは騎手と調教師が異口同音ながら、共通したコメント。ずっと3歳馬や古馬をパートナーに併せ馬を消化してきたことも、大きなプラスにつながっただろう。
 小林騎手は「枠順が逆ならとも思うし、本当に勝ったとは思っていない」、千葉調教師も「この馬の展開になって勝てたのであって、相手の流れになった時でも勝てるようになりたい」と、勝利のあとも2着となったラブバレットへの意識を忘れることはなかった。時計の出る軽い馬場ではあったが、従来の若駒賞を大きく上回るタイム。後続を大きく引き離した2頭のマッチレースに「未来」への期待をふくらませたい。
小林俊彦騎手
位置取りはスタート次第で、誰かが行くようなら控えようと思っていました。道中はラブバレットが直後にいるだろうから、自分から動いて早目にスパート。そこでうまく反応してくれたので行けるかなと思いました。最後の直線もバテている感じはなかったし、まだ伸びていました。
千葉幸喜調教師
ここを目標に十分な調教を積んできましたし、これで負ければ仕方がないという気持ちで臨みました。今回はこの馬の展開に持ち込んで勝てたという面があるので、そうならない時にも勝てるようになりたいですね。次走は南部駒賞になると思います。


取材・文:深田桂一
写真:佐藤到(いちかんぽ)