未来優駿 タイトル
 10月中旬~11月上旬にかけて行われる各地の2歳主要競走(計7レース)を約3週間のうちに短期集中施行するシリーズ(2008年創設)。

 3歳馬によるダービーウイーク同様、各地の主要競走が短期間で楽しめる贅沢感や、先々への期待感を醸成できることが当シリーズ最大の魅力。また、11月以降のダートグレード競走(兵庫ジュニアグランプリ・全日本2歳優駿)への出走意識を高めることで、競走体系の整備促進にも資することが期待される。


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自慢の末脚で直線差し切る
期待の素質馬が重賞連勝

 2008年に創設された未来優駿は、南関東では大井のハイセイコー記念と船橋の平和賞が1年おきに指定されている。両レースとも2歳馬の伝統的な一戦で、平和賞は今年で58回目を迎えた。03年に東日本地区交流、06年に地方全国交流となってからは、2歳馬の宝庫・北海道勢の活躍が目立ち、ここ数年はそれが顕著に結果に表れている。
 しかし今年は船橋デビューのインサイドザパークの出現がひじょうに頼もしい。デビューから一度も連対を外したことがなく、前走鎌倉記念で北海道のクラグオーとミータローを一気に差し切った姿はインパクトがあり、負けたレースを含めても2歳離れしたレースぶりが光る。「根性と、動じないところがすごいよね。新馬戦からもまれても砂をかぶっても平気だったし、必ず自分の脚を使って伸びてくる。負けたレースも致命的な位置から伸びてきて、強いんだなぁと認識できた」(林正人調教師)
 前走の鎌倉記念(10月17日)からこの平和賞までは2週間しか間隔がなく、それが懸念材料だったが、しかしインサイドザパークにはそうした心配も無用だった。
 「あの位置につけられると思わなかったけど、前残りの展開だったから結果的にはよかったのかな」とコンビを組む左海誠二騎手。普段はスタートがゆっくりなのだが、この日は好スタートを切っていつもより前めの3、4番手を追走していった。「もたつきたくないので少し押したら、ちょうどペースダウンしてガツンと行きたがったんだけど、2コーナー手前でハミが抜けてくれたからよかった」(左海騎手)。
 岩田康誠騎手のヒデサンスピリットが逃げ、2番手には御神本訓史騎手のアメイジアがつけていき、インサイドザパークはその後ろから。最後の直線では絵に描いたように外へ持ち出すと、直線半ばで抜け出したアメイジアが粘りを見せるも、メンバー中最速の38秒8の上がりで差し切り、1馬身差をつけての完勝となった。「掛かった分どうかと思ったけど、気合いをつけたらグッと沈み込んだから大丈夫だと思った」(左海騎手)。
 インサイドザパークは437キロと牡馬の中では小柄だが、それを微塵も感じさせないスケールの大きな走りを見せている。個性的な愛らしいルックスと、追い出したときの重心の低いフットワークにも惹きつけられる。あくまでも状態次第だが、この後は全日本2歳優駿JpnIへの出走も選択肢のひとつとして考えていくそうだ。
 2着にはホスピタリティのひ孫アメイジア、3着はヒデサンジュニアの半弟でまだ1戦のキャリアだったヒデサンスピリット、4着は勝負どころでの接触が痛かったエスケイロードと、南関東勢が上位を独占。まだ幼さを残す将来性のある馬たちばかりだ。
 ついこの間までクラシックレースの取材をしていたかと思えば、すでに来年のクラシック候補生たちの取材が始まっている。2歳戦の取材は1年の早さを実感させられる。
左海誠二騎手
今日はスタートもよかったのでいつもより前めの位置につけましたが、中団くらいのほうがよさそうです。抜け出したら遊ぶところがあるのでそこも気をつけようと思いました。うまくゲートは出てくれましたが、課題はまだそのあたりにあるので、少しずつ教えていって注文のない馬に仕上げていきたいです。
林正人調教師
間隔はありませんでしたが、ピリピリするくらいに気合い乗りがよくなっていて、心臓も成長しているところだったし、当初からの予定通りにここは使うことにしました。この馬の力を出せば結果はついてくると思いましたが、ホッとしました。小さくても考えている以上にタフな馬です。本当に楽しみですね。


取材・文:高橋華代子
写真:三戸森弘康(いちかんぽ)