未来優駿 タイトル
 10月中旬~11月上旬にかけて行われる各地の2歳主要競走(計7レース)を約3週間のうちに短期集中施行するシリーズ(2008年創設)。

 3歳馬によるダービーウイーク同様、各地の主要競走が短期間で楽しめる贅沢感や、先々への期待感を醸成できることが当シリーズ最大の魅力。また、11月以降のダートグレード競走(兵庫ジュニアグランプリ・全日本2歳優駿)への出走意識を高めることで、競走体系の整備促進にも資することが期待される。


2012年未来優駿の総括はこちらです
※下の“タブ”をクリックするとご覧になりたいレースの記事に切り替わります。


3コーナーから突き放し独走
大差圧勝で佐賀2歳王者に

 昨年までの九州地区の2歳重賞路線は、10月に荒尾の九州ジュニアグランプリが未来優駿シリーズの一環として行われ、そこでの上位馬と佐賀の特別戦を使われてきた馬が11月の九州ジュニアチャンピオンで激突するという構図だった。しかし、昨年末で荒尾競馬が廃止となり、今年は九州ジュニアチャンピオンが約1カ月繰り上がって未来優駿に新たに加わった。また、今年からJRA認定競走の制度が変わり、重賞のこのレースを含め、賞金上位馬によるレースがJRA認定競走として行われることとなり、佐賀の2歳戦線は昨年までとは大きく様変わりしたものとなった。
 佐賀での2歳戦は5月27日の新馬戦でスタートし、このレースで2着に5馬身差をつけて勝利したカシノアルテミスが3連勝でJRA小倉のフェニックス賞に挑戦して5着を確保。まずはこの馬が2歳戦をリードする存在となった。しかし、夏から秋にかけて東眞市厩舎の素質馬が次々と勝ち上がり、直前の特別戦でカシノアルテミスに5馬身差をつけて勝利したロマンチックを筆頭に、九州ジュニアチャンピオンへは東眞市厩舎から6頭が出走。同厩舎の上位独占なるかが注目の的となった。
 スタートからシャインリターンが先頭に立ち、ロマンチックが好位を追走。前走のシリウス特別と同じ位置取りとなったが、同レースではスタートで躓いて中団につけていたカシノアルテミスが、今回はシャインリターンの2番手につけ、この3頭が後続をやや離して先行集団を形成。
 向正面に入るとロマンチックが先頭に立ち、カシノアルテミスも離されずに併走。しかし3コーナーでついていけなくなり、ロマンチックが早くも独走態勢に。直線では後続との差をさらに広げ、実況の中島アナウンサーが「ロマンチックが止まらない!」と往年のヒットソングを引き合いに出すほど。2着との差は前走の1秒0からさらに広がって1秒9の大差圧勝となり、佐賀2歳チャンピオンの座についた。
 ロマンチックから大きく離れた2着争いは、道中では中団の位置を進んでいたオリンポスとフレンドクィーンに、さらに外から追い込んできたミヤノダイアナの3頭での争いとなったが、中のフレンドクィーンが一歩抜け出して2着を確保。東眞市厩舎勢の上位独占を阻止した。
 半馬身差で3着のミヤノダイアナの兄は佐賀で活躍したミヤノオードリー。東調教師も「今回の出走馬の中で将来性は一番」と期待を寄せており、兄同様に3歳戦線での飛躍が期待できそう。また、5着に敗れたカシノアルテミスも、夏のJRA遠征後は馬体が減少傾向で万全の状態ではないだけに、復調してくればまだまだ巻き返しはありそう。
 勝ったロマンチックは、シリウス特別、九州ジュニアチャンピオンを横綱相撲で2連勝と、文句なしの佐賀2歳チャンピオンとなったが、今後に課題も残る。今年は上級競走で行われるJRA認定競走を佐賀デビュー馬限定戦としたため、転入馬そのものの数がまだ少なく、今回の出走馬には他場からの転入馬との対戦実績がほとんどない。そのため、東調教師、山口勲騎手ともにここまでの2歳世代のレベルについては「これからもっと力をつけていかなければ、転入馬に太刀打ちできないのではないか」(東調教師)と厳しい見方をしている。このレースの上位馬が転入馬を打ち破り、来年の3歳戦線に名を連ねていくのか、期待を込めて見守っていきたいところだ。
山口勲騎手
ゴールしたときはあそこまで離れているとは思わなかったけど、気持ちよかったです。(東厩舎の)他の5頭はこの馬よりスピードがありますが、こちらは差し脚が鋭いです。強い勝ち方をみせていますが、馬込みがダメなところがあったりでまだ競馬が下手な面がありますね。
東眞市調教師
中団から行く予定でしたがスタートが切れたのでスンナリ2番手につけられました。今後は12月に2歳同士で走れるレースを使って、その後は1月の花吹雪賞へ直行する予定です。3着のミヤノダイアナはこれから伸びてきますよ。うちの期待馬の筆頭ですね。


取材・文:上妻輝行
写真:桂伸也(いちかんぽ)