同厩舎、同馬主のワンツー
若き才能が大舞台で弾ける

　ダービーウイーク前半の3戦は、人気馬がきっちりと結果を出し、固い決着のレースが続いていた。しかし、第4戦の東京ダービーは傑出馬不在の混戦模様。南関東の3歳戦線は、これまで牝馬クラシックを含め、ステップレースはすべて違う馬が勝っており、さらに一冠目の羽田盃は何頭かの馬が接触するアクシデントがあり力を出し切れなかった馬もいたことが、予想をさらに難しくさせた。16頭中9頭が単勝オッズ20倍以下にひしめく中で、最終的にはエミーズパラダイスが3.1倍。アートサハラが3.3倍と、羽田盃の2着、1着馬が人気を分けあった。
　予想通りキョウエイロブストが先手を取り、外枠の馬たちが先団を形成。エミーズパラダイスは中団に控え、3番人気のプーラヴィーダがそれをマーク。アートサハラは後方から3頭目に位置し、プレティオラスがしんがり追走でレースは進んだ。
　3コーナーにさしかかるとペースアップした前の4頭と後方集団の差が開いたが、直線に入ると様相が一変。後続が一気に押し寄せ、どの馬が抜けてくるのか一瞬たりとも目が離せない状況となった。真ん中からエミーズパラダイスがわずかに先頭に立つが、その内からプーラヴィーダが勢いよく伸びた。しかし、3～4コーナーで大外を回って一気に脚を伸ばしたプレティオラスが、外から2頭を豪快に差し切った。
　終わってみると、森下淳平厩舎の2頭で決着。しかも馬主、種牡馬（フィガロ）、生産牧場まで同じという、非常に珍しいワンツーフィニッシュとなり、口取りの記念撮影も2頭が並んで行われた。
　ダービー馬の称号を手にしたプレティオラスは、前走の羽田盃では11番人気で3着。離れた後方に位置しながら、断トツの上がりタイムで追い込んできた。今回は、馬群についていきながら最後方で脚をため、「4コーナーを回った時、勝てると思った」と本橋騎手がコメントするほど、絶好の手ごたえで直線をむかえ、羽田盃での末脚が本物だったことを証明した。そしてプレティオラスは、なんとダービー当日の6月6日が誕生日で、周囲では「お誕生日もおめでとう！」と祝福の声が飛び交っていた。
　鞍上の本橋孝太騎手は、「ダービージョッキーと言われることが、こんなに嬉しいと思わなかった」と笑顔がはじけた。07～08年の高知競馬での武者修行の後、船橋に戻って急成長を遂げている23歳。昨年は南関東リーディング10位まで勝ち鞍を伸ばし、今年JRAでも初騎乗を果たすなど、まさに充実一途だ。
　また、現在大井所属では最も若い32歳の森下淳平調教師は、調教師として最年少での東京ダービー制覇となった（1973年以降の記録）。開業2年目の今年、牝馬のエンジェルツイートで浦和・桜花賞3着、東京プリンセス賞2着と、もう少しのところで結果に結びつかず悔しい思いをしたという。どうしても手にしたかったクラシックのタイトルを“ダービートレーナー”という名誉とともにつかみ獲った。
　今年の東京ダービーは、そんな若き才能に満ち溢れたレースとなった。プレティオラス、プーラヴィーダは、ともに状態次第でジャパンダートダービーJpnⅠに向かうとのこと。この若さと勢いは、今後大きな武器となることだろう。
　一方、今年で31度目の東京ダービー挑戦となった的場文男騎手は、未勝利馬のダイヤモンドダンスを気迫の騎乗で4着に導いた。レース後「勝ちたかったけど…。仕方がない、仕方がない…」と静かにその場を後にした。悲願の東京ダービー制覇は、来年以降に持ち越しとなった。