福山競馬場では現在、『福山・荒尾フレンドリー騎手交流』と題し、荒尾競馬所属騎手を招待し交流競走を実施している。その騎手紹介式の際、今年いっぱいで廃止が決まっている荒尾所属騎手が現在の心境を述べると共に、福山競馬への応援の言葉を投げかけた。22日は、ベテラン尾林幸彦騎手が「福山がんばれ！」と熱く語り、30日は岩永千明騎手が「どうか、福山競馬の応援を宜しくお願いします」と、気持ちのこもったメッセージを送った。ファンや関係者は改めて、自分たちで福山競馬を守らなくてはならない、と心に誓った瞬間であった。
　そんな福山競馬の未来を担う若駒たちの重賞、未来優駿・第4回福山2歳優駿。注目を集めたのは、4連勝中の牝馬クーヨシンである。大半のメンバーとは勝負づけが済んでおり、単勝オッズは1.1倍と断然の支持を集めた。そして、ここ2戦クーヨシンの2着に甘んじ、今回逆転を狙うトールキングが単勝5.8倍。まだキャリア2戦で、クーヨシンとの対戦経験がないという未知の魅力でアグリノキセキが単勝8.1倍で続いた。
　前走、前々走は押し出されるように逃げる形となったクーヨシンだが、今回は外枠からのスタート。予想通りアグリノキセキが先手を取り、クーヨシンはその外から2番手にぴたりとつけた。トールキングは少し離れた4番手の位置取りで前を伺う態勢だ。3〜4コーナーにかかるとアグリノキセキが後退、クーヨシンが単独先頭に踊り出ると、トールキングもすかさず外から迫り、この2頭の一騎打ちかに見えた。しかし、手ごたえが違った。直線に入るとクーヨシンはぐんぐんと突き放していった。これまでは最大でも1馬身半差をつけての勝利しかなかったクーヨシンだが、今回は3馬身差。重賞の舞台で、力差をまざまざと見せつける結果となった。
　またも2着に敗れたトールキングは、攻めた結果であり現時点では完敗ではあるが、着実に成長が伺えるレースぶりだった。また道中は最後方ながら、直線強襲で3着に食い込んだカンピオーネロサも今後が非常に楽しみといえる。
　レース後、関係者に囲まれながら安堵の表情を見せていた佐原秀泰騎手は、「圧倒的な人気だったし、連勝もかかっていたし、プレッシャーの二乗でしたよ」と、当日の朝から相当緊張していたことを明かした。「でも、クーヨシンが優勝に導いてくれました」と相方を褒める姿がとても印象的だった。
　クーヨシンは、福山ならではの血統である。祖母は、福山で活躍し通算11勝をあげたアングロアラブの名牝ラインココ。その娘でクーヨシンの母であるラピッドリーランは、牝馬ながら金杯や福山菊花賞、タマツバキ記念アラブ大賞典を制すなど、アラブの快速牝馬として名を馳せた馬だ。その血を受け継いだクーヨシンという娘が、祖母や母が活躍した福山の地で世代のトップに君臨するとは、何とも感慨深いものである。この三代の繋がりを目の当たりにしてきた那我性哲也調教師も、「やはり、他の馬とは思いが違います。すごいことですよ」と、しみじみと語った。