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当時の写真や映像を交えて90年代の名勝負を振り返ります!

2020年3月13日(金)

第66回 『7歳牝馬が最後方からごぼう抜き』
1999年 全日本サラブレッドカップ
 マジックリボン

中央・地方交流となって3年目となる「第10回全日本サラブレッドカップ」。「勝ちに来た」前年の2着馬ストーンステッパー(JRA)を抑えて、ファンが1番人気に推したのは、地元笠松の牝馬マジックリボンだった。

1400mの短距離戦。レースはスタートから激しい先行ポジション争いとなる。2番枠を主張して前に行く金沢のエーブジャパンに、地元のロングリリーフ、2番人気のストーンステッパー、そして大井の韋駄天サントスが2番手グループを形成し、ハイペースとなった。

さらに名古屋のゴールドプルーフ、北海道のトウカンイーグル。岩手のサカモトデュラブは先行争いをしていたが砂をかぶってズルズル後退し向正面では7~8番手に、その後ろにはJRAのテセウスフリーゼとサンエムキング。1番人気のマジックリボンはなんと最後方。

「今日は行く馬ばっかりだったんで、位置は何番手でもいいと思っていました」と安藤勝己騎手。

3コーナー手前から徐々に位置取りを上げ、4コーナーで前で競り合うロングリリーフとゴールドプルーフを並ぶまもなく交わして先頭に立つと、2着ゴールドプルーフに1馬身半の差を付けこのレースを制した。

最後方からのごぼう抜き。しかも地方の7歳牝馬。観ている側からすれば衝撃的なレースだったが、乗っていた安藤勝己騎手はそうでもなかった様子。

「最後キレる脚があるんでまったく慌てることはなかった。最後方からでも大丈夫だと思っていました。この馬はいつも力通り走ってくれる」と。

当時筆者は地方競馬の番組に出演していて、ロケや取材で幾度となく安藤勝己騎手からお話を伺う機会があった。その中で、この全日本サラブレッドカップの話を聞いた時、「笠松や名古屋で乗っとるぶんには、馬もよう知っとるし、どんなレースをしても勝てるもんで」と言っていたことを思い出した。語尾が「もんで」だったかどうかはあんまり覚えてはいないが、ある種「やり尽くした感」を感じた。

そのきっかけは遡ること4年前の1995年のライデンリーダーではなかったか。たまたま京都出張で桜花賞を観戦し、1番人気に推されたライデンリーダーに騎乗し4着に破れ、悔しそうな顔で上がってきた安藤勝己騎手の顔を思い出した。当時毎週のようにJRAへ参戦していた。そこに笠松ではもう味わえない「刺激」を求めていたのではないだろうか。2003年にJRAの騎手免許を取得したのはみなさん御存知の通りだ。

その後マジックリボンは中京の名古屋記念に勝ち、ラストランとなったTCK女王盃2着を最後に吉田牧場で繁殖入り。ハイセイコー記念に勝ったショウリュウ(父バゴ)などを送り出し、2015年7月8日にこの世を去っている。

  • 文・日刊競馬
  • 小山内 完友
  • 写真
  • いちかんぽ

全日本サラブレッドカップ 平成11年(1999年)11月23日

サラブレッド系4歳以上 1着賞金3,000万円 笠松 1,400m 曇・良

着順 枠番 馬番 馬名 性齢 重量 騎手 タイム・着差 人気
1 3 3 マジックリボン 牝7 53 安藤勝己 1.26.6 1
2 8 9 ゴールドプルーフ 牡5 56 丸野勝虎 1 1/2 5
3 6 6 サンエムキング 牡8 55 中舘英二 ハナ 9
4 7 7 ロングリリーフ 牡7 55 濱口楠彦 3 7
5 1 1 テセウスフリーゼ 牡8 56 的場 均 1 1/2 3
6 7 8 ストーンステッパー 牡7 56 熊澤重文 1 1/2 2
7 2 2 エーブジャパン 牡6 56 渡辺壮 1 1/2 8
8 5 5 サカモトデュラブ 牡7 57 阿部英俊 5 6
9 8 10 トウカンイーグル 牡6 56 米川昇 2 10
10 4 4 サントス 牡7 55 鈴木啓之 2 1/2 4

払戻金 単勝190円 複勝120円・220円・640円 枠連複750円