ウエブハロン2017　ダービーシリーズ　タイトル

大本命馬の回避で急遽の参戦
乗替ったベテランが勝利に導く

　幸運の女神が気まぐれなことは昔も今も同じ。今回の兵庫ダービーでは、大本命馬に故障でレースへの出走すら許さない試練を与えた。逆に女神がほほえんだのは、大本命馬に負け続けても、勝利にこだわって東奔西走したカルストンライトオ産駒だった。
　当初の大本命マジックカーペットは2歳王者決定戦の園田ジュニアカップ、兵庫三冠の一冠目・菊水賞などを制し7戦無敗。オオエライジンに続く無敗のダービー馬誕生が期待されていた。しかし、6月9日の追い切り後、まさかの左前管骨亀裂骨折を発症。無念の戦線離脱となった。
　このマジックカーペットに園田ジュニアカップ、菊水賞とも2着に敗れていたのがブレイヴコールだった。さらに5月26日の対戦では2秒8差の3着と大敗。この敗戦でブレイヴコールの諏訪貴正調教師は「マジックカーペットには勝てない」と兵庫ダービー回避を決断。3日後の高知優駿に照準を変更して調整を進めていた。そんな矢先、宿敵が突然の回避。協議の結果、改めて兵庫ダービーへの出走を決めた。
　大本命が抜けた兵庫ダービーの1番人気は中央未勝利から園田で5戦4勝、2着1回のジンバイッタイで単勝1.8倍。5月26日にブレイヴコールがマジックカーペットに大敗した際の2着馬で、その際、マジックカーペットとは0秒9差だが、ブレイヴコールに1秒9差と大きく先着した点が評価された。
　2番人気がブレイヴコールで4.9倍。3着大敗だった前走と、父がスプリンターのカルストンライトオで距離延長が不安視された。3番人気が兵庫若駒賞馬ナチュラリーで5.1倍、4番人気がマジックカーペットの僚馬ホープクリスエスで5.7倍。この4頭が単勝一桁台の人気だった。
　川原正一騎手に乗り替わったブレイヴコールがハナを奪うと、すぐにスローに落とすベテランらしい巧みな騎乗。1コーナーでアグネスフォースが、3コーナーでは1番人気ジンバイッタイが迫っても慌てない。4コーナーではコーナーワークを利してジンバイッタイを振り切ると、最後方からまくってきた伏兵スリーピーアイの猛追もアタマ差で抑えた。
　諏訪調教師は重賞初制覇が兵庫ダービーという快挙。川原騎手も笠松時代には東海ダービー（名古屋優駿）を3勝していたが、兵庫ダービーは初勝利だった。
　勝因として、諏訪調教師が「川原さんが馬のリズムを考えて上手に乗ってくれたことと、放牧先の坂路で鍛えたことが生きた」と言えば、川原騎手は「厩務員と（出走が決まるまで調教に騎乗していた）吉村君（吉村智洋騎手）がしっかり馬をつくってくれた」と縁の下の力持ちの存在を挙げた。
　放牧先だった三重県名張市の岩崎ステーブルでは、笠松競馬の元調教師、岩崎幸紀代表が栗東トレセン以上に傾斜が厳しい坂路で追い、園田のコース調教だけでは鍛えきれない箇所の筋肉と心肺機能を補った。
　倉橋明男厩務員はかつて重賞5勝のトーコーニーケを手掛けた腕利き。直前で長距離輸送の高知から、輸送のない園田に照準が変わり、仕上げに狂いが生じたはずだが、当日の馬体重も前走から7キロ増に抑え見事に修正した。
　調教に騎乗していた吉村騎手は当初参戦予定の高知で騎乗のはずだった。兵庫ダービーはブレイヴコールが一度は回避したため、セカンドインパクトへの騎乗を決めた。その後、ブレイヴコールが急転参戦となっても、セカンドインパクトとの先約で、相棒を川原騎手に譲らざるを得なかったのは不運だった。川原騎手の吉村騎手をねぎらう言葉の裏には、そんな事情が隠されていた。
　今年の大目標は10月22日、佐賀の西日本ダービーに置くが、具体的な次走は未定で今後検討される。