当コーナーでは、地方競馬に関するイベントや注目レース等の気になる話題を写真と共にご紹介します。

第17回JBC総括

2017年11月3日
大井競馬場
【リポート動画】

大井では7度目の地方競馬の祭典
地方馬が10年ぶり2頭目の勝利

好天でにぎわったウマイルスクエア

 17回目を迎えたJBCは、2年ぶり7度目の大井競馬場での開催。2年前の開催では旧2号スタンドがリニューアルされ、G-FRONTとしてオープン。あれから2年、今度は旧3号スタンドが撤去され、そこにはあらたなスタンドをつくるのではなく、ウマイルスクエアという多目的スペースとなった。
 そのウマイルスクエアでJBCの開催に合わせて実施されたのが、『“馬産地”北海道ウマいものフェス』。今やJBC開催では、こうしたご当地グルメなどの出店が定番となり、どこもかなりの行列となっていた。旧3号スタンドが撤去されるまで、どちらかといえば競馬よりも家族やグループで食べたり飲んだりを楽しむイベントは内馬場で行われていたが、そのにぎわいがスタンド側のウマイルスクエアに移動。特に今回は祝日の昼間ということもあり、家族などが目立っていた。
 馬券の発売額の9割以上を場外・ネット投票が占めるようになった現在、大井競馬場といえども重賞のない普段の開催では、入場人員は1万人にも満たない。たしかにその状況で、ゴール前から4コーナーまでという規模のスタンドは必要ない。特別に多くのファンの来場が見込まれる開催だけ、特設テントなどで対応するというのは時代の流れだ。
 ウマイルスクエアの馬場側に仮設のスタンドができていたのもよかった。欲を言えば、もう少し高さのある大きな仮設スタンドでもよかったと思うが。
 その仮設スタンドの前は芝生広場になっていて、そこでは広げたシートの上でくつろぐ家族連れやグループも目立った。
 何よりそうした光景が見られたのは好天に恵まれてのこと。この秋の中央競馬では、菊花賞、天皇賞・秋と、2週連続大雨の中でGⅠが行われたため、関係者にとってもファンにとっても、待ちに待った太陽の下での大レースとなった。2日ほど前までのピンポイント予報では午後に傘マークがついていたが、当日は朝から青空が広がった。最高気温は20度超で、陽が沈むまではシャツ1枚でも少し動くと汗ばむほど。生ビールの売上もよかったに違いない。
 ウマイルスクエアの一角で、競馬ファン、というより、競馬マニアの注目を集めていたのが、全国の地方競馬場を紹介する展示。単に競馬場の施設やグルメを写真で紹介するだけでなく、秀逸だったのはコースで使用している砂の展示。実際に手で触ってダートの質を比べてみることができた。最近では騎手の移動も活発になり、「○○競馬場の砂は顔にあたると痛い」というような話を聞くこともあるが、なるほど、実際に触って砂の粒子を確かめてみると、そういうことがわかるような気がした。
 入場人員は28,147人。前年川崎の28,718人よりやや少なく、一昨年大井の34,153人よりもだいぶ少なかった。これはどうしたことだろう。この日、JRAと同日開催だったことについてはまたあとで触れるが、大井競馬場はJ-PLACEとして福島・京都の馬券も買うことができた。にもかかわらず入場人員が伸びなかったのは、中央もJBCも両方ネットで買えるから競馬場に行かなくても、と思った“馬券ファン”が少なからずいたということだろうか。好天にもかかわらず、一昨年大井との比較で82.4%という理由については、正直よくわからない。

3競走ともゴール前は接戦

 JBC3競走とも、ゴール前は見ごたえのある接戦となった。
 中でもレディスクラシックは、地方期待のララベルと、地方初参戦のプリンシアコメータが馬体を併せての一騎打ちとなり、ララベルが競り勝った。ララベルがプリンシアコメータに接触したことで審議となったが、到達順どおりララベルの先着で確定。真島大輔騎手は2日間の騎乗停止が課せられた。
 とはいえ、ひとまず地方馬による史上2頭目、レディスクラシックでは地方馬初となるJBC制覇は快挙といっていい。
 ララベルは大井の生え抜きであることに加え、騎手の乗替りが当り前の時代にあって、怪我・病気のときの2度以外、真島大輔騎手は乗替っていないことなど、関係者の思い入れが強いことも伝えられていた。まして昨年のJBCでは当日朝に競走除外となっており、念願のダートグレード制覇をJBCの舞台で達成したことでは、荒山勝徳調教師も表彰式後のインタビューでは感極まった様子だった。
 近年、ダートグレード戦線で地方馬は苦戦が続いていたが、今年はヒガシウィルウィンのジャパンダートダービーJpnⅠ制覇をはじめ、かきつばた記念JpnⅢ(トウケイタイガー)、クラスターカップJpnⅢ(ブルドッグボス)、東京盃JpnⅡ(キタサンミカヅキ)、エーデルワイス賞JpnⅢ(ストロングハート)とここまで地方馬が5勝。そうした地方馬好調の流れもあったかもしれない。
 そういう意味で地方馬の活躍がもっとも期待されたのがスプリントだった。前記、クラスターカップJpnⅢ、東京盃JpnⅡでは地方馬のワンツーという決着。一方で、JBCクラシックを2度勝っているコパノリッキーの参戦も興味深いものとなった。
 そしてゴール前は、4着までタイム差なし、5着馬でもコンマ1秒差という大接戦。勝ったニシケンモノノフは、中央所属ではあるものの、デビューしたのはホッカイドウ競馬。2歳時には門別1200メートルのコースレコードでの勝利もあり、6歳になって頂点を極めることとなった。
 コパノリッキーはJBC2階級制覇にわずかアタマ差及ばず。東京盃ワンツーの2頭もブルドッグボス3着、キタサンミカヅキ5着と、掲示板を確保する健闘の走りを見せた。
 またコパノリッキーの鞍上は森泰斗騎手、直線一旦は先頭に立って見せ場をつくり4着だったネロの鞍上は、今年スーパージョッキーズトライアルの優勝で一躍注目の存在となった中野省吾騎手、5着のキタサンミカヅキには繁田健一騎手と、地元南関東の騎手3名が見せ場をつくった。
 クラシックは中央馬7頭中5頭がGⅠ/JpnⅠ勝ち馬と、実績面で地方馬を圧倒しており、そのとおり6着まで中央馬が独占という結果になった。
 このレース連覇と、鞍上の武豊騎手にはJBCクラシック9勝目がかかるという話題性もあって1番人気に支持されたアウォーディーは残念ながら4着。直線、持ち味である末脚を存分に発揮したサウンドトゥルーがJBCクラシック3度目の挑戦での勝利となった。

売上げではスプリント、クラシックがレコード

 そして興行面にかかわることでは、JBC17回の歴史で、2003年以来2度目、JRA-IPATで地方競馬の馬券が発売されて以降では初めて、中央競馬と同日開催となった。中央は関東圏は避けられ福島・京都の開催。第7レースに組まれたレディスクラシックは、福島(15:25)、京都(15:35)メインのあとの15:45発走。スプリントは京都最終レース発走の15分後(16:25)という設定で、その後がクラシック。で、JBC3競走の発売額は次のとおり(カッコ内は、前年川崎比/前々年大井比)。

 Lクラシック  763,865,300円(89.7%/95.5%)
 スプリント  1,079,040,900円(106.3%/104.2%)
 クラシック  1,812,368,300円(112.1%/120.1%)

 さすがに中央の最終レース前に行われたレディスクラシックは発売額レコードだった昨年より10%以上も減少したが、中央の最終レース後に行われたスプリント、クラシックは、それぞれの発売額レコードを更新した。
 そしてJBC当日の1日の売上げ4,640,685,830円(SPAT4LOTO含む)は、前年比95.2%と、わずかに減少。それが中央と同日開催だったからなのかどうなのか。レディスクラシックの売上げが減少していたことから、それ以前のレースの売上げもあまりよくなかったということはあっただろう。
 ちなみに地方競馬の1レースあたり、および1日あたりの売上げレコードは昨年の東京大賞典とその当日で、それぞれ3,732,695,200円、6,194,933,590円。それには遠く及ばなかった。東京大賞典は、さすがに有馬記念後の年末という状況で売上げが集中し、その1レースの売上が、今回のJBC3競走の合計とほとんど同じ額というのもすごい。今年の東京大賞典でも、さらにレコード更新となるのだろうか。
 さて、来年のJBCは初めて中央の京都競馬場での開催となる。それでどんな変化があるのか、1年後を楽しみに待ちたい。




文:斎藤修
写真:斎藤修、いちかんぽ、NAR