SJT タイトル
 本年11月24日および25日にJRA東京競馬場で実施される第26回ワールドスーパージョッキーズシリーズ(WSJS)には、地方競馬から代表騎手1名が参加しますが、この出場権を地方競馬トップジョッキーが競う「ワールドスーパージョッキーズシリーズ地方競馬代表騎手選定競走」の呼称です。下記に示しました、SJT本戦(第1ステージ、第2ステージ)の4レースにおける着順に応じた得点の合計により、WSJSの(※)地方競馬代表騎手(第2位の者が補欠騎手)が選ばれます。
 また、本年からSJT本戦に先がけて、各地方競馬場リーディング2位(南関東地区は5位)の騎手等による、本戦への出場を懸けた『SJTワイルドカード』が実施されます。
 ※ 地方競馬代表騎手については、10月25日(木)までに地方競馬全国協会から代表騎手1名、補欠騎手1名を日本中央競馬会に推薦し、同会が決定します。
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今年も首位争いは大激戦
紙一重の差で地方代表が決定

 ワイルドカードを含めた3つのステージで争われた今年のスーパージョッキーズトライアル(SJT)。本当に不思議なのだが、最近は必ずといっていいほど、第4戦の着順が確定した時点で、どの騎手が優勝したのか誰も即答できない状況になる。昨年は1位から3位までが1ポイント刻み。今年も第4戦が終わってからしばらくの間、その答えがわからない大混戦となった。いったい、1着20ポイント、2着15ポイント、3着13ポイント……という得点分布を設計したのは誰なのだろうか。その着順に設定されたポイント数が、今年も明暗を大いに分けた。
 大井競馬場で行われた第1ステージが終了した時点でのトップは、山口勲騎手(佐賀)で33ポイント。戸崎圭太騎手(大井)は2番手につけていたが、25ポイントでトップとは少し差のある2位だった。続いて三村展久騎手(福山)が21ポイント。それでも第2ステージの内容いかんでは、それはたやすくくつがえる。
 しかし今年の第2ステージは、暫定1位でこの日を迎えた山口騎手の地元が舞台。騎乗馬を自分で選べないレースではあるが、砂の質、コースの特徴、そして出走馬の性格や力関係などをもっとも把握しているのは、山口騎手である。そのアドバンテージは絶対的なものと感じられたし、本人もまた「あまり緊張していなかった」と、ホームの利をいかせる心境になっていたようだ。
 とはいえ、すんなりとおさまらないのがポイント制のレース。第3戦のシルバーブーツ賞での山口騎手の騎乗馬は、JRAからの転入初戦を楽勝して臨んだシゲルパパイア。内枠優勢の傾向が出ていたなかでの2番枠も、同馬を2番人気に押し上げる要因のひとつだったかもしれない。
 しかし、ゲートが開いてから最後まで首位争いを続けたのは、10番と12番の外枠2頭。4コーナーでの競り合いを制した戸部尚実騎手(愛知)が20ポイント追加で第2位に浮上。2着の三村騎手が1ポイント差で続いて第3位。山口騎手は5着に敗れたが、それでも2位とは6ポイント差で首位を保っていた。
 最終戦は1800メートル戦。人気の中心は吉田晃浩騎手(金沢)のシルキーカレントだったが、再転入初戦の影響か、イレコミがきつくてパドックの中に入れないという状態。やむなく出走全馬がパドックを去ってから吉田騎手が装鞍所で騎乗して、そのまま馬場への通路を走っていくほどだった。
 それでも締切時刻まで、そのシルキーカレントが単勝1倍台の人気をキープ。続いて戸崎騎手のレコパンが3.3倍の支持を集め、あとの10頭はすべて10倍以上。しかしながら、締切数分前の段階では、その10頭すべてが30倍未満となっていた。伏兵多数の中距離戦で、誰もが一発を狙う最終戦。となれば、流れが遅くなるのは必然的ともいえるだろう。
 それを読んだのか、ゲートが開くと同時に先手を取った戸崎騎手が、ペースを自在にコントロールして逃げ切り勝ち。インコースをうまく立ち回った五十嵐冬樹騎手(北海道)が2着に入り、吉田騎手は3着という順での入線となった。
 バックヤードではその結果をもとに計算作業が始まったが、誰も確証がもてる数字が出せないという状況。しばらくして、山口、戸崎、三村の各騎手による三つ巴とわかり、そしてついに、山口騎手優勝という確定成績が発表された。山口騎手から1ポイント差で戸崎騎手が2位になり、同ポイントでの3位には三村騎手。今年のSJTはまたしても、競馬の神様のサジ加減ひとつで結果が変わっていたといっても過言ではない、紙一重の結果となった。ちなみに最終戦で山口騎手が8着ではなく9着だったら、戸崎騎手が逆転優勝。また、三村騎手が5着ではなく4着だったら、順位はひっくり返っていた。このシリーズは、どのレースにおいても1頭でも余計に負かしておくことが、最終的に大きな意味をもつ。山口騎手も「大井での3着(12番人気)が大きかったですね」と、それを総合優勝の要因に挙げていた。
 そう考えるとSJTは、その年でいちばん運がいいトップジョッキーを選ぶ舞台といえるのかも。山口騎手には11月24、25日の東京競馬場で、その運をも味方にしつつ、地方競馬の底力を披露してもらいたい。
表彰式前に談笑する3位までの各騎手

取材・文:浅野靖典
写真:桂伸也(いちかんぽ)、NAR

総合優勝
山口勲騎手
最初のレース(第3戦)で5着に負けて、これはマズイかなと思っていました。それで2戦目も後ろのほうでしたから、優勝は「まさか」という感じ。2戦目の検量を終えたところで1位と聞かされたとき、ウソでしょと思ったくらいです。でも、出場権を獲得できたのはうれしいですね。地方競馬の代表として行くわけですから、みんなの分まで頑張りたいと思います。
総合2位
戸崎圭太騎手
点差が点差ですからね。優勝したかったです。それでも、大井と佐賀でいい馬に乗ることができたおかげで2つ勝てましたし、個人的にはいいパフォーマンスができたと思います。自分自身にとってもいい刺激になりました。
総合3位
三村展久騎手
去年も3位で今年も3位……。(出場メンバーのなかで)JRAで乗ったことがないのは僕だけですし、去年が惜しくて今年は1点差。悔しいです。人気薄の馬はある程度の着順に連れてこられたんですが、人気馬での結果がいまひとつだったのが反省点ですね。自分自身の課題はわかっているので、それを克服して来年につなげたいと思います。