SJT タイトル
 本年11月24日および25日にJRA東京競馬場で実施される第26回ワールドスーパージョッキーズシリーズ(WSJS)には、地方競馬から代表騎手1名が参加しますが、この出場権を地方競馬トップジョッキーが競う「ワールドスーパージョッキーズシリーズ地方競馬代表騎手選定競走」の呼称です。下記に示しました、SJT本戦(第1ステージ、第2ステージ)の4レースにおける着順に応じた得点の合計により、WSJSの(※)地方競馬代表騎手(第2位の者が補欠騎手)が選ばれます。
 また、本年からSJT本戦に先がけて、各地方競馬場リーディング2位(南関東地区は5位)の騎手等による、本戦への出場を懸けた『SJTワイルドカード』が実施されます。
 ※ 地方競馬代表騎手については、10月25日(木)までに地方競馬全国協会から代表騎手1名、補欠騎手1名を日本中央競馬会に推薦し、同会が決定します。
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伏兵馬の好走に豪快な差し切り
2位に差をつけ地元での決戦へ

 11月24・25日にJRA東京競馬場で行われるワールドスーパージョッキーズシリーズ(WSJS)への一枚の切符を手にするために、今年も全国から地方競馬のトップジョッキーが集結した。また、本年からスーパージョッキーズトライアル(SJT)本戦に先がけて、各地方競馬場リーディング2位(南関東地区は5位)と推薦騎手2名による、本戦への出場を懸けた『SJTワイルドカード』が高知競馬場で実施された。リーディング2位といえども出場騎手は豪華な面々が揃い、大いに盛り上がった。SJTシリーズを見ていくうえでの楽しみが広がったといえる。そのワイルドカードの激闘を制したのは、岡田祥嗣騎手(福山)。「高知で一緒に戦ったみんなの分もがんばりたいです。雑草魂ですよ」とレースを前に、入念なストレッチを行っていた。
 SJT第1ステージの舞台は大井競馬場。日中は10月とは思えないような暑さだったのだが、日が暮れると心地のよい風が吹き、金曜日のナイター競馬としては抜群のコンディション。騎手紹介式が始まると大勢のファンがウィナーズサークルを囲み、お目当ての騎手に声援を送っていた。特に地元大井所属の的場文男騎手にはひときわ大きな声がかかり、期待の大きさが現れていた。
 第1戦のシルバーサドル賞は、全国リーディングトップの戸崎圭太騎手(大井)が、鮮やかな騎乗を見せた。道中は中団の内でじっくり脚を溜め、直線は先に抜け出した五十嵐冬樹騎手(北海道)のメッシの後ろにつけ、外からきっちりかわし切った。
 「馬の力があるとわかっていましたから」という穏やかな笑顔の中には、騎乗馬の力を引き出すという、いつもの競馬に徹した冷静さが感じとれた。2着には、先行して粘った五十嵐騎手のメッシ。終始、前を見る位置でレースを進めた山口勲騎手(佐賀)のナイトシェイドが12番人気で3着と健闘した。
 レースのVTRをしっかりと確認した後、「脱落したくないな~!」と口に出しながら次のレースに向かう騎手もいた。
 第2戦のシルバーブライドル賞は1800メートル戦。腕試しにはうってつけの条件なだけに、ポイントを稼ぎたいという心情がレースにどう絡んでくるのかと期待が膨らんだ。
 その期待通り、レース後半はスタンドから大歓声。大井の長い直線で、見応えたっぷりの接戦が繰り広げられた。先行争いを制してペースを握った戸部尚実騎手(愛知)のヒロキキュウと、断然人気となった吉田晃浩騎手(金沢)のマサノエクスプレスが並んで直線に入ると、好位で前を伺っていた森泰斗騎手(船橋)のキーパーも2頭に迫った。さらにその後ろから、道中後方に控えていた山口騎手のノーブルブラッドも外からまくってきた。
 残り200メートルあたりで4頭が横一線。目が離せない追い比べとなった。勢いが勝っていたのは、山口騎手のノーブルブラッド。ぐんぐんと加速するように大外を駆け抜け、豪快に勝利を飾った。最後まで食い下がったものの1馬身半及ばず2着には森騎手のキーパー。3着争いを制したのは、戸部騎手のヒロキキユウだった。
 実は山口騎手は、昨年川崎競馬場で行われたSJT第2戦でもノーブルブラッドに騎乗していた。この時は12着に敗れ、SJT第1ステージは13位に終わり、第2ステージには進めなかった。今年はその馬で勝利を収め、第1ステージ優勝を決めたのだから、なんともドラマチックである。「こんなこともあるんですね」と山口騎手は目を細めた。
 この結果SJT第1ステージは、山口騎手が33ポイントで優勝。第1戦を人気薄の馬で3着に好走したポイントが大きく、2位に8ポイントの差をつけてトップに立った。2位には1着、7着の戸崎騎手で25ポイント。4着、5着と堅実に入着した三村展久騎手(福山)が21ポイントで3位に続いた。
 今回あらためて感じたことは、コース経験が結果に繋がるということだ。ワイルドカードで優勝した岡田騎手は、高知での騎乗経験が豊富だったことを勝因に挙げていた。三村騎手は、エキストラ騎乗で馬場の感覚が掴めたと、レース後にコメントしていた。
 SJT第2ステージの舞台は佐賀競馬場(10月19日)。現在トップの山口騎手にとって、馬もコースも知り尽くしている地元での騎乗は、絶対有利のはず。「佐賀の馬は力関係を知っているからね」と自信をのぞかせていた。もしかしたら、このまま独走もあり得るかもしれない。

取材・文:秋田奈津子
写真:宮原政典(いちかんぽ)、NAR

第1ステージ優勝
山口勲騎手
まさかトップ通過だと思いませんでした。1戦目の3着で楽になっていたので、2戦目は思いきり乗れました。大井コースは右回りですし、左回りの競馬場より乗りやすいです。(地方競馬では)日本で一番大きい競馬場なので力は入りましたね。去年第1ステージで落ちてしまったので、いい形で佐賀で乗れると思います。
第1ステージ2位
戸崎圭太騎手
去年は第1ステージで1位だったんですけどね……。1戦目の馬は、休み明けでプラス体重でしたが、リズムよくいければと思っていました。トップジョッキーが集まってレースができることは刺激になります。WSJSに出たいですから、いい位置につけられたので優勝目指してがんばります。
第1ステージ3位
三村展久騎手
9レース(第1戦)はまったく納得いってないです。コース取りや判断など、改善する点がたくさんあります。去年は初出場で少しプレッシャーがあって、今年は直すところは直してきたつもりですが、まだまだですね。帰って勉強し直します。佐賀まで2週間あるので、しっかりと感覚と体調面を整えていきたいです。