2009年6月3日(水) 大井競馬場 2,000m
大外一気で2強を撃破、鞍上はデビュー30年目の大金星
凄いダービー、驚きのダービー、そして見ごたえのあるダービーだった。
その戦いはレース前から始まっていた。どこで牡馬と対戦するのかと話題になっていたネフェルメモリーが、この東京ダービーへの出走を表明したときからだ。
前日発売から2頭の単勝オッズを見ているだけでドキドキしてきた。その単勝オッズは、2倍あたりで抜きつ抜かれつ。最終的にはネフェルメモリーが1.9倍で1番人気、ナイキハイグレードは2.1倍。3番人気のブルーラッドが13.7倍で、完全に2頭の一騎打ちだった。
いざレース。内田博幸騎手のネフェルメモリーが好スタートからハナに立つと、掛かりぎみに15頭を従えた。縦長の展開となり、ナイキハイグレードは中団よりうしろを追走していたが、向正面の中間から徐々に進出を開始。3コーナーでは早くも好位集団にとりついた。
直線を向いてネフェルメモリーが先頭、これにナイキハイグレードが襲い掛かった。文字どおり、予想どおり、2強の一騎打ち。見ているものの多くがそう思ったのではないだろうか。
しかしゴール前、大外を矢のように伸びてくる馬が1頭。道中は後方2番手、4コーナーでも後方5番手にいたサイレントスタメンだった。人気2頭が内でもつれるところ、大外から並ぶ間もなく差し切った。連れて伸びたブルーヒーローが2着に入り、3頭出しの足立勝久厩舎のワンツー。ナイキハイグレードは3着、ネフェルメモリーが4着、そして5着にワタリシンセイキが入り、大挙4頭出しの川島正行厩舎勢は3〜5着に敗れるという結果となった。
まずは1番人気で4着に敗れたネフェルメモリーについて触れておきたい。祖母のカシワズプリンセスは京浜盃、黒潮盃、羽田盃で牡馬を負かし、断然人気で臨んだ東京ダービーでは14着と惨敗。曾祖母のシヤドウも浦和・桜花賞、関東オークスの牝馬二冠制覇から臨んだ東京ダービーは12着に敗れていた。牝馬として代々挑戦してきた東京ダービー制覇の夢は、今回も叶わなかった。
そして勝ったサイレントスタメン。父レギュラーメンバーの祖母ロジータは、言うまでもなく南関東三冠に加え、東京大賞典まで制した女傑。血統の格の違いを見せつける結果ともなった。
サイレントスタメンは、前走クラウンカップでは4コーナー最後方から豪快に直線一気を決めたが、前々走の京浜盃でナイキハイグレードの7着と惨敗していたことから、今回は8番人気とまったくの伏兵扱いだった。
しかし足立調教師は、その京浜盃でメンバー中3番目の上がりタイムを記録していたことから、距離が伸びるこの東京ダービーには期待を持っていたようだ。それが確信に変わったのはクラウンカップの勝利。そのときのインタビューで、まず東京ダービーへの期待を語っていたことが思い出される。
殊勲の金子正彦騎手はデビュー30年目のベテラン。川崎のリーディングでは常に上位を賑わしてきたが、不思議と重賞タイトルには恵まれず、初重賞制覇は99年の戸塚記念(勝ち馬:トッキーステルス)。デビューからすでに20年が経っていた。以来、9個目の重賞タイトルが東京ダービーのビッグタイトルとなった。まさにいぶし銀の活躍といえよう。
2強が揃って敗れたとはいえ、決して凡走したわけではない。実は今年の南関東3歳戦線は、ひじょうに高いレベルで上位拮抗なのではないか。それはおそらくジャパンダートダービーJpnIで証明してくれるに違いない。
取材・文:斎藤修
写真:宮原政典(いちかんぽ)
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足立勝久調教師 |
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