若駒賞
 

2008年10月19日(日) 盛岡競馬場 1600m

 

アクシデントをものともせず、4馬身差圧勝で未来へ名乗り

 
 3歳馬によるダービーウイークに続き、2歳戦線を全国的に体系付けすべく今年からスタートした“未来優駿”。その初戦として行われたのが盛岡の若駒賞。一昨年まで重賞として行われ、昨年は特別に格下げされていたが、未来優駿の実施によって再び重賞へと格上げされた。
 注目されたのは、ここまで7戦3勝のワタリシンセイキ。盛岡の芝では4戦して4着が最高だが、ダートは3戦全勝。今回は得意のダートに戻って再び強さを見せられるかどうか。
 スタートで、そのワタリシンセイキが後手を踏んだ。ゲートが開いた直後にとなりの馬がヨレてぶつけられる格好になり、バランスを崩したのだ。これまでも中団から後方を追走することが多かったワタリシンセイキだが、今回は道中の手ごたえもいまひとつで、ほとんど最後方からという厳しい展開。三野宮通調教師は「今日はダメか」と思ったという。
 しかし3コーナーからがこの馬の真骨頂。大外を回って進出すると、4コーナー手前では先頭をとらえようかという位置まで進出。直線を向いて3番人気のダンストンジールが先頭に立ったが、並ぶ間もなくこれを交わし、4馬身差をつけての完勝となった。
 ワタリシンセイキは、これまでダートでは負けなしといっても、いずれも水沢でのレース。水沢とは逆の左回り、しかも砂の軽い盛岡のダートでどうか、というのが唯一の不安材料だったのだが、スタート直後のアクシデントをものともせず圧勝したことで、むしろその強さを際立たせる結果となった。
 しかもそのアクシデントが原因であろう、右後脚を落鉄、それでいてこのレースぶりには驚かされた。「バランスを崩すほどで、普通の2歳馬ならあそこで走る気をなくしてますよ。それがこの勝ち方ですからね」と関本淳騎手は、2歳馬離れした根性に感心することしきりだった。
 ワタリシンセイキの父は地方のダートグレード戦線で活躍したビワシンセイキ。そして2着に入ったダンストンジールの父も、ジャパンカップダートGIを制するなどダートで大活躍したウイングアロー。いずれも人気種牡馬とは言いがたいが、ダートグレードでの活躍馬が、こうしてまた地方のダートで活躍する産駒を送り出してくるというのは、なんとも感慨深い。
 ワタリシンセイキは、このあと11月16日の南部駒賞を使い、結果次第では全日本2歳優駿JpnIへの挑戦も視野にあるという。全国の“未来優駿”を制した2歳馬たちとの対戦が実現するのかどうか、それもまた楽しみではある。

取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ

 
関本淳騎手
 スタートのアクシデントで馬が行く気をなくしたんですが、途中から行く気になってくれました。ダートだとやっぱり走りが違いますね。水沢では強いのがわかっていたのですが、これでダートならどこでもだいじょうぶでしょう。 
 
三野宮通調教師
 やっぱりダートは強かった。なぜ芝はダメなんでしょうね。追い通しだったんですが、直線は伸びてくれました。行きっぷりが悪かったのは、連戦の疲れがあったのかもしれません。盛岡のダートも克服できたので安心しました。