スーパースプリントシリーズ特集

 競走距離1000メートル以下のレースのみで構成されるシリーズ競走、『スーパースプリントシリーズ(略称:SSS)』。5年目となる本年は6月11日(木)~7月20日(祝月)の間、トライアル4戦およびファイナルの計5戦で実施します。
 SSSは、超短距離戦で能力を発揮する異才の発掘と、各地方競馬場で実施可能な最短距離を極力活かすためワンターン(コーナー通過が3~4コーナーのみ)のスプリント戦によるシリーズとして2011年に創設されたもので、各地区の超スピードホースが、トライアル、そしてファイナルで極限の速さを競います。

 昨年のファイナル、習志野きらっとスプリントは8歳馬のナイキマドリードがトライアルを勝利してきた馬たちを抑えて勝利。今年も古豪が意地を見せるのか、それとも新たなスターの誕生か。

 激戦必至の究極のスプリント戦をぜひお見逃しなく!


2015年スーパースプリントシリーズの総括はこちらです
※下の“タブ”をクリックするとご覧になりたいレースの記事に切り替わります。

好位追走から直線で抜け出す
歴戦の古馬相手に3歳馬が殊勲

 スーパースプリントシリーズ・ファイナルの習志野きらっとスプリント。ハートビートナイターが始まった船橋競馬場だが、この日は祝日ということもあって薄暮開催で行われた。日中は33度近くまで気温が上がりうだるような暑さだったが、メインレースが近づくにつれ暑さも和らぎ、全国から集まったスピード自慢たちが電撃の5ハロンを戦い抜いた。
 ここを制したのは、早田功駿騎手とのコンビで優駿スプリントを勝った3歳馬ルックスザットキル(大井・中村護厩舎)。53キロという斤量も味方をしたが、初古馬への挑戦も、初コース・初左回りというハードルも、楽々クリアをしたのはすばらしかった。
 レースは、前哨戦の川崎スパーキングスプリントの1、2着コンビ、カベルネフランとキョウエイロブストが集団を引っ張る展開になり、ルックスザットキルは3、4番手の外目を追走。
 前半3ハロンのタイムは34秒0で、「流れは速いくらいに感じました。前の2頭についていったらいいのか正直悩んだのですが、焦らないであの位置から進めました。結果的にはサトノタイガーが脚を伸ばしてきたので、もし前についっていったら終いの脚はなくなっていたかもしれません」(早田騎手)。気難しさのある馬だが、デビュー戦から手綱を取り続けて信頼関係を築き上げてきたからこその好判断でもあっただろう。
 直線では早田騎手のゲキに応え前をとらえると一瞬のうちに抜き去り、サトノタイガーやサーモピレー、高知のサクラシャイニーなども襲いかかってきたが、最後まで抜かさせない根性を見せ、2着のサトノタイガーに3/4馬身差をつけてのゴール。勝ちタイムは1000メートル59秒3(稍重)。このレースを3歳馬が制したのは初めてで、地方競馬の短距離界に新星誕生となった。
 早田騎手の話しでは、船橋競馬場へスクーリングに来たときは左回りの方が上手に走る印象を受けたそうだが、レースでスピードにのるとモタモタしていたそうだ。「慣れてくれば違いますね」(早田騎手)とのことで、さらに強くなる要素は秘めている。
 今後はクラスターカップJpnⅢやアフター5スター賞も選択肢に入っているそうだが、あくまでも馬のコンディションと相談をしながら決定していくという。
 ルックスザットキルはバレッツ3月セールで購買されたアメリカ産馬。オーナーが、『息が止まるほどのルックス、素晴らしい体』ということで名づけた馬だそうだ。持ち前のスピードで、これからも息が止まるほどの衝撃を与え続けて欲しい。
 一方、昨年のJBCスプリントJpnⅠ2着で、NARグランプリ最優秀短距離馬に輝いたサトノタイガーは、自身にとって初の1000メートル戦でも2着に入った。「勝った馬との5キロ差は大きかったよね。でも、1000メートルでこんなにも動けるのがわかったから収穫だった」と小久保智調教師も手応えをつかんだようだ。この好走により、キーンランドカップ(JRA札幌芝1200メートル)に挑戦するプランも浮上。
 小久保厩舎はこの夏も全国を視野に所属馬たちが遠征し続ける予定で、このチャレンジ精神にはワクワクさせられる。暑い夏がさらに熱くなりそうだ。
早田功駿騎手
今日の段階で斤量差は大きいと思いますが、それがなくても勝つ馬になっていかなくては困るので、もう一回一から作り上げたいです。交流戦や、大きいことを言うと外国の馬が来ても通用するようなスプリンターに育てていきたいですね。自分自身もこういう馬をオファーされるような騎乗をしていきたいです。
中村護調教師
調整過程も状態もよかったので、馬体減は気にしないようにして臨みました。ポテンシャルの高さは信じていましたが、いろんな経験をしている馬たちは計り知れない底力などがあるし、ここで勝つのは簡単なことじゃないと思っていましたが、これまでとは違う勝ち方をしてくれたので今後につながりますね。

サトノタイガーは、初の1000メートル戦でも2着に入った。

取材・文:高橋華代子
写真:国分智(いちかんぽ)、NAR