落ち着いた騎乗で接戦を制す
顕著な成長を見せ重賞2勝目

　2009年から未来優駿シリーズに組み込まれ、今年から重賞（H2）に格付けされたサッポロクラシックカップ。1週前には、同じ1200メートルで争われる牝馬限定のJpnⅢ、エーデルワイス賞が行われ、短距離路線を歩む2歳牝馬の有力馬の多くが、そのエーデルワイス賞を選択する中、1200メートルのオープン勝ちの実績があり、1700メートルのフローラルカップでは1番人気の支持を集めながら4着に敗れていたサプライズソングが、このサッポロクラシックカップに参戦。中央馬が相手となるエーデルワイス賞を見送り、ここに標準を絞ってきたあたりに陣営の本気度がうかがえた。1番人気は、そのサプライズソング。2番人気に続いたのが、最低人気ながらイノセントカップを勝利し、鞍上の石川倭騎手と父カネヒキリに重賞初制覇を授けていたコールサインゼロだった。
　先手を奪いたいメンバーが揃った中、最内枠の利を生かしてチェリーサマーがレースの主導権を握った。一方、人気のサプライズソングは大外枠が響いたのか、位置取りを下げざるを得なくなり、スタートで若干立ち後れたコールサインゼロもまた、馬群の後方からのレースを余儀なくされた。
　だが、コールサインゼロの鞍上を任された石川騎手に焦りはなかった。「ゲートで立ち後れて先手こそ奪えませんでしたが、道中は内で我慢をさせて、勝負どころでは外に進路を取ろうと作戦を切り替えました」
　コーナーで馬群がばらけたのを見計らったかのように、コールサインゼロは直線を向いて内から4、5頭ほどのコースを抜け出してくる。その眼前には逃げていたチェリーサマーがいた。コールサインゼロが一完歩ずつチェリーサマーとの差を縮めていく一方で、外からはアオジャシンも迫ってきた。
　3頭が並んだかに思えたゴール前、真ん中を走っていたコールサインゼロがチェリーサマーをアタマ差だけ交わしていた。2着とはアタマ差でアオジャシンが3着。人気のサプライズソングは追い込んだものの3馬身離れての4着に敗れた。
　レース後のインタビューでは、「勝ててホッとしている」と話した石川騎手。当初のプランとは違ったレースでも、コールサインゼロの能力を引き出すことができたのは、やはり重賞勝ちの経験と自信の成せる業だったのかもしれない。
　デビュー2年目で、まだ19歳の石川騎手。副賞の賞品となったビールは、「まだ飲めないので誰かにあげます」と話して笑いを集めていたが、この堂々たる騎乗ぶりからして、成人となる来年以降は、美酒に酔いしれる回数も増えていきそうだ。