競走馬にとって最高の名誉、それはダービー馬の称号。
全国各地の6競馬場(佐賀・盛岡・門別・大井・園田・名古屋)で行われる“ダービー”6競走を約1週間で短期集中施行する夢のような6日間、それが「ダービーウイーク(Derby Week)」(創設2006年)です。
ダービーウイーク各レースで勝利を掴んだ各地の世代ナンバーワンホースは、全国3歳馬のダート頂上決戦「ジャパンダートダービーJpnⅠ(大井・7/9)」出走に向け、大きなアドバンテージが与えられます(※)。
※ 東京ダービーの1・2着馬にはジャパンダートダービー(JDD)への優先出走権が与えられ、その他5競走は指定競走(注)として認定されている。
(注) 指定競走とは、その1着馬が根幹競走の選定委員会において、同一地区内の他の馬に優先して選定される競走をいう。なお、他の優先出走権の状況や指定馬の数によって適用されない場合がある。
前年秋の「未来優駿」シリーズを皮切りに、一世代でしのぎを削る熱き戦いは、集大成への大きな山場を迎え、興奮はクライマックスへ。今年もダービーウイークから競馬の未来が生まれる。(注) 指定競走とは、その1着馬が根幹競走の選定委員会において、同一地区内の他の馬に優先して選定される競走をいう。なお、他の優先出走権の状況や指定馬の数によって適用されない場合がある。
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断然人気にこたえ圧勝
金沢所属馬が初の栄冠
東海ダービーの3日前に発表された出馬表。それを見た多くの人は、驚きと疑問をもったことだろう。デビューから地元名古屋で連戦連勝、すべてワンサイドゲームで圧倒していたリーダーズボードの名前が見当たらないのだ。1月のレース後に休養して、前哨戦となる5月の駿蹄賞も5馬身差で圧勝。東海ダービー制覇に向けて万全の準備を整えていたと思われていたリーダーズボードだが、好事魔多しとはこのことか。駿蹄賞のあとに脚元に不安が発生、このレースを回避するという決断となってしまった。
圧倒的な存在が不在となれば、それ以外の陣営としては色めき立つところ。しかしそこに金沢からケージーキンカメという圧勝続きの馬がやってきた。とはいえ、同馬は初めての重賞挑戦。しかも金沢勢はこれまで東海ダービーに参戦してもなかなか勝利にまでは至らなかった。今年も相手関係の比較がむずかしいところだったが、ファンが下した判断は、単勝1.4倍というものだった。
東海勢11頭対金沢1頭、そんな様相のなか東海ダービーのゲートが開くと、リーダーズボードの主戦でもある戸部尚実騎手が手綱をとったホウライナデシコが真っ先に飛び出していった。続く2番手にはケージーキンカメが無理なくつけ、それを右斜め前に見る形でドクターナイーヴがマーク。そのあとはほとんど一団で最初のゴール地点を通過していった。
先行押し切りを狙うケージーキンカメと、逆転を狙うドクターナイーヴ。しかし、2周目3コーナー手前の勝負どころで、その2頭の明暗はハッキリと分かれた。
仕掛けにかかろうとするドクターナイーヴは、鞍上の岡部誠騎手がムチを振るっても腰を落としても加速していけない状況。それを視界の隅で確認したケージーキンカメ鞍上の青柳正義騎手は、そこから一気に突き放しにかかった。逃げるホウライナデシコを楽々と交わし、あとは独走でゆうゆうとゴール。6馬身差の2着には「一発を狙っていた」という大畑雅章騎手のノゾミダイヤが入線。ドクターナイーヴは3着に粘り込んだが、勝ち馬との差は2.7秒、2着馬とは7馬身の差がついていた。
レースが終わって検量室に戻ってきた青柳騎手は、うれしいけれども信じられないという感じの表情。デビューからの成績は目立ったものではなかったが、しかし一昨年から急成長。昨年4月に北日本新聞杯で初の重賞タイトルを獲得し、秋にはスーパージョッキーズトライアルのワイルドカードから本戦にも出場。そして今年は“ダービージョッキー”の称号を得た。
「水曜日にダービーを勝った先輩に続くことができてよかったです」
東京ダービーを制した同じ金沢所属の吉原寛人騎手は、少し前までは別世界の人という感覚だったのかもしれないが、今はその活躍をモチベーションにできている。そこに現れたケージーキンカメという実力馬との出会いは、決して偶然ではないのだろう。
しかしながら場内では、「リーダーズボードとのレースを見たかったなあ」という言葉が複数のファンから聞かれた。名古屋から全国を狙える存在としてスピードを見せたその馬の復帰を、ファンは待ち望んでいる。
青柳正義騎手
夢みたいです。馬の仕上がりは完璧で、パドックでもおとなしくしていたので、あとは僕ががんばるだけだと思っていました。道中では、すぐ後ろにいた岡部さんが来たらこちらも動こうと考えていましたが、相手に思ったほどの手応えがなかったので、自分のペースでレースをすることができました。
鈴木正也調教師
柔らかみがあるすばらしい馬なので、北日本新聞杯は別の馬に任せてこちらを狙いました。トレーナーとしてダービーという称号は魅力に思っていましたし、いい出会いをいただけました。ウチで育った青柳騎手で勝てたこともうれしく思います。ジャパンダートダービーはオーナー次第ですが、行きたいですね。
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