厳しいペースも直線後続を突き放す
トライアル以上の強さでダービー制覇

　春の開催開幕当初は最低気温が3度、4度などという日もあった盛岡地方だが、約1カ月を経過して連日最高気温は30度前後まで上昇。ダートコースは真夏の開催を思わせる乾いた良馬場になり、猛烈な砂煙を上げて、岩手ダービーダイヤモンドカップが行われた。
　昨年若駒賞と南部駒賞を制して岩手の2歳最優秀馬となったライズラインは、冬期間大井へ移籍して南関東のレースに挑戦するも2戦とも大敗して水沢へ帰ってきた。復帰初戦のやまびこ賞は7馬身差で圧勝したが、陣営はまだ物足りなさを口にしながらのレース。ダービー当日は当然のように単勝1.2倍と圧倒的な支持を集めていたが、千葉幸喜調教師は「（やまびこ賞を）あの状態で勝てたのだから、今回は負けられない」と。そして、その内容が大切だと、復調度合いが最大の焦点となった。
　前週の競馬でライズラインの主戦だった小林俊彦騎手が落馬負傷。急遽デビュー当初に騎乗していた村上忍騎手に手綱が戻っていた。ジャイアントスターがマイル戦でも戦うかのようなハイペースで飛ばし、ライズラインは離れての2番手だったが「マークされるポジションだった」（村上騎手）と、この後ろに4頭が離れず追走してペースが緩むことを許さない。ジャイアントスターの失速に伴い4コーナー手前で先頭に立ったライズラインだったが、厳しいラップタイムを刻み続けており、最後の200メートルは15秒1を要していた。まさにバタバタといえるゴールインだったが、直線で食い下がったのは2着のシグラップロードだけで、その差は6馬身。3着のラブバレットはそこから大差、やまびこ賞以上の差をつけられた。
　2着以降も各自のポジションで意地を見せた。左回りが今ひとつの印象があるシグラップロードは有力どころの中では最後方に位置し、末脚勝負にかけて馬連複2.2倍という一本被りの人気に応えた。2歳時にライズラインのライバルであったラブバレットは「今日は乗ったときに、ちょっと夢を……」と齋藤雄一騎手が思ったほどで、4コーナーではラブバレットに接近するシーンを作った。こちらは父ノボジャックと、どうみても距離適性に問題があると思えただけに、今日の走りで復調の手がかりは掴んだと判断して良いだろう。
　2日後には東京ダービーが控えている。大本命となるであろうハッピースプリントがそうであるように、近年の南関東クラシックに北海道デビュー馬は欠かせない存在となっているが、これに加えて今年は岩手デビュー馬も2頭（ワタリキングオー、ツルマルブルース）が名を連ねた。いずれも南関東移籍後に大きな成長を見せた馬だが、これらを見ればライズラインがなぜ南関東で通用しなかったのか？と千葉幸喜調教師は首をかしげる。それだけに、再び態勢を整えて強い相手との戦いを挑もうという気持ちはどこかに秘めているのではないだろうか。今年は地元にもJBCやダービーグランプリという大きな舞台が控えている。ショッキングだった南関東での2回の大敗が、その時のための“糧”となることを期待している。

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