ハナを切って人気馬を競り落とす
スピード馬場に適応し連覇達成
秋の笠松を彩る大一番、笠松グランプリ。1着賞金は地方全国交流としては最高レベルの1000万円。確かに中央との交流重賞の方が賞金は高いが、JRA勢に勝たれてしまうケースがほとんど。「比較的、高い確率で1000万円が獲れるなら」との思惑もあってか、例年、ダートグレードでも活躍する実力馬が一堂に会するレースだ。北海道からは一昨年の兵庫ジュニアグランプリJpnⅡ・2着で、今年も北海道で数々の重賞を制しているオヤコダカ。岩手からは昨年の覇者であり、2走前にはクラスターカップJpnⅢで3着に健闘したラブバレット。浦和からは昨年ラブバレットに続く2着で、先のJBCスプリントJpnⅠで5着の実力馬サトノタイガー。兵庫からは前走で笠松の3歳重賞・岐阜金賞を快勝した若駒エイシンニシパ。中央準オープンで活躍し佐賀転入後は5戦4勝、2着1回のコウユーサムライ。例年以上ともいえる豪華なメンバーが参戦。
対する地元勢は、8月のくろゆり賞を勝った時点で、「秋の目標は笠松グランプリ」と公言したとおり、ここへ向けてしっかり調整されたきたサルバドールハクイ。今回が転入初戦ながら、前走JBCスプリントJpnⅠでサトノタイガーから0秒5遅れの7着だったオグリタイムにも期待がかかった。
そんな中でも1番人気に推されたのはオヤコダカ。11月10日の道営記念に出走(2着)し、北海道からの輸送と日程面に不安はあったが、直前の追い切りでは好時計をマーク。陣営のコメントも強気で実力通りの評価となった。続く2番人気は連覇を狙うラブバレット、地元期待のサルバドールハクイが3番人気でレースを迎えた。
結論から言えば、勝ったのは岩手のラブバレット。開催初日から好時計連発、逃げ、先行馬が大活躍していた超のつく軽い馬場を味方に好スタートからハナを切ると、スイスイと逃げ脚を伸ばした。2番手にぴったりつけるオヤコダカに3コーナーではクビ差まで迫られたが、4コーナーで差を広げると、そのまま押し切ってゴール。勝ち時計1分23秒6はコースレコード。
山本聡哉騎手は「スタート次第ではあったけど、やはりハナに行ければとは思っていました。オヤコダカを意識していましたが、4コーナーを回ってから何とかなりそうだなと思いました」とレースを振り返る。
敗れたオヤコダカの米川昇調教師は「日程は詰まっていたけど、予定していた遠征でデキは問題なかった。今日に限っては中距離が続いた後の1400メートルが、勝負どころでの反応とかに出たのかな。あとは門別で内回りが得意とはいえ、さすがに笠松の小回りには戸惑った面があったかな」と敗因を語る。3着サトノタイガーには1秒差をつけ、負けて強しの印象であり、レースはほとんどこの2頭のマッチレースだった。
年間を通してもめったにないくらいの特異なスピード優先の馬場、そして距離への適応力のわずかな差が、ラブバレットとオヤコダカの0秒3という差に出たが、どちらも地方競馬を代表する名馬であることは確か。
山本聡哉騎手
連覇ができてよかった。馬体重は減っていましたが、このくらいの体の方がシャープさが出ていい。この1年、いろんなところに遠征して精神面で強くなってきたから、今後は上のレベルでも頑張っていきたいですね。
菅原勲調教師
スピードの持続力が売りのタイプ。馬場やコースを含めて笠松は相性が良くて走りがいいね。しっかり乗り込んであったし鉄砲駆けもきくタイプで状態は良かった。次走は12月28日の兵庫ゴールドトロフィーを目標にしています。
勝ったラブバレットの菅原勲調教師は「できれば3連覇を狙いたいね」と早くも来年の期待を語っていたが、来年も今年と同様、ハイレベルかつスリリングな名勝負が見られることは間違いなさそうだ。
負けて強しの2着オヤコダカ
取材・文:竹中嘉康
写真:岡田友貴(いちかんぽ)
写真:岡田友貴(いちかんぽ)