dirt
2016年11月23日(祝・水) 園田競馬場 1400m

2番手から直線先頭で後続を振り切る
北海道からの遠征馬が殊勲のタイトル

 ダートグレード競走では、常に中央勢に圧倒されてばかりの地方勢。しかし、今回はそんな地方の関係者やファンを大いに勇気づける結果となった。
 その立役者は北海道から参戦の6番人気ローズジュレップ。9月にJRA札幌の芝に挑戦も9着。2度目の中央勢との対戦となった今回は走り慣れた砂で、見事中央勢を正攻法で撃破した。
 そして同厩舎で7番人気のバリスコアもゴール前で猛然と追い込んだ。中央馬ゲキリンをアタマ差で差し、2着の中央馬ハングリーベンにハナ差と迫る3着。田中淳司厩舎の2頭による1、3着で3連単は30万6650円の大波乱だった。
 ファンにとっても、普段のダートグレードの傾向から中央勢優勢は周知の事実。しかし中央のどの馬が強いのかが、いまひとつはっきりせず混戦ムードだった。それが1番人気アズールムーン2.8倍、ゲキリン3.5倍、ネコワールド3.6倍、ハングリーベン4.2倍という接近した単勝人気に表れていた。
 またこのレース未勝利の地元兵庫勢だが、今回は園田プリンセスカップを勝ったナンネッタこそ回避したものの、園田で3戦3勝のブレイヴコール、兵庫若駒賞馬ナチュラリーなど3頭が参戦。ただしいずれも下位人気で、悲願の地元初Vは厳しいと見られていた。
 レースは、3番枠からスタートした兵庫の川原正一騎手が騎乗したローズジュレップが出ムチを入れてハナに立とうとするところを、前日の浦和記念JpnⅡで地方のダートグレード競走100勝を達成した武豊のネコワールドが外から制して主導権を奪う。ローズジュレップは進路を外に変えると、ぴったり2番手から追走した。
 3コーナーでハングリーベン、ゲキリン、アズールムーンの中央勢が後方から迫ってきたが、ローズジュレップの川原騎手は抜群の手応え。4コーナーで逃げるネコワールドに並びかけると直線では競り落とし、先頭へ躍り出た。そしてハングリーベン、バリスコア、ゲキリンの3頭による激しい2着争いに2馬身差をつけ、このレースとしては05年モエレソーブラッズ(北海道)、09年ラブミーチャン(笠松)、14年ジャジャウマナラシ(浦和)以来2年ぶり4回目の地方馬による勝利を飾った。また今年地方で行われたダートグレード競走でも、6月1日浦和・さきたま杯JpnⅡのソルテ以来となる地方馬としては2つ目という大きな勝利となった。
 6番人気の地方馬が勝った波乱の決着ではあったが、決してフロックではない。逃げ馬にぴたりと2番手の追走で速めのペースをつくり、直線で逃げ馬を競り落とすと、後続を封じたその内容は強い馬にしかできないもの。勝ち時計は1分29秒1と、例年よりもやや遅めだが、地方ならではの力の要る馬場状態となったことが、スピードに勝る中央勢を抑えた一因とも言えそうだ。
 ローズジュレップの次走は優先出走権を得た12月14日川崎の全日本2歳優駿JpnⅠへ、今回に続いて川原騎手で出走を予定している。北海道で勝った3勝はすべて逃げ切りで、2番手からの勝利と長距離輸送を克服したことで、川原騎手は「今日は収穫が多かった」と胸を張った。
 田中淳司調教師にとっても全日本2歳優駿JpnⅠは13年にハッピースプリントで勝った思い入れのあるレース。「次は(北海道2歳優駿JpnⅢを大差勝ちした)エピカリスが相手になるが、どうやったら勝てるか、これから考えていきたい」と3年ぶりの2歳ダート王獲得という次の目標へ、早くも照準を定めていた。
川原正一騎手
中央勢も速いけど、先生から積極的なレースをと言われていて、うまく2番手の外に付けられました。ペースは速いと思ったが、終始手応えはありました。道営の馬は強いと分かっていたので、どれだけ強いか楽しみにしていました。4コーナーでひょっとして勝てるかもと思いました。強い内容だった。
田中淳司調教師
川原騎手には行けたら行ってほしいと伝えていました。中央勢が強いのは分かっていましたが、今年は混戦ムードで、抜けて強い馬がいなかったので、チャンスはあるのではと思っていました。序盤でうまく外に切り替えられたのが勝因かな。4コーナーでは1番手応えが良かったので、やったと思いました。

ローズジュレップと同厩舎で3着のバリスコア
取材・文:松浦渉
写真:桂伸也(いちかんぽ)