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2016年11月3日(祝・木) 川崎競馬場 2100m

連勝の勢いで実績馬を圧倒
ダート王に名乗りを上げる

 第16回となる今年のJBCは28,718名の入場者を集め、1日の勝馬投票券の売得金額が地方競馬歴代1位となる48億7402万2850円を記録、JBCクラシックとレディスクラシックの売得金額も、昨年の大井を上回るレコード。要因は、好メンバーが集まったことといえるだろう。
 その舞台はコーナー6回の2100メートル。GⅠ/JpnⅠの優勝回数でトップを目指すコパノリッキーにとっては初めての距離だが、前走のマイルチャンピオンシップ南部杯JpnⅠで日本レコードに迫る圧勝をみせたそのスピードは、ここでも1番人気として信頼された。
 ホッコータルマエはその記録で追われる立場ではあるが、単勝では3番人気。逆に1番人気に迫る注目を集めたのが、ダートに転じて5連勝中のアウォーディーだった。この3頭に加えてノンコノユメまでが単勝10倍未満。そのあとはサウンドトゥルーが14.6倍、クリソライトは47.5倍という分布になった。
 それらの強敵たちに真っ向勝負を挑んだのが、船橋所属のサミットストーン。スタート後、先手を取ったホッコータルマエを交わし、単騎逃げの態勢に持ち込んだ。ホッコータルマエはそれを見て2番手に下げ、その後ろにイッシンドウタイ、コパノリッキーなどが追走。アウォーディーも先行グループに加わっていった。
 1周目スタンド前での隊列には落ち着きがあったが、再び向正面に入ると勝利を狙う争いは一気に活気を帯びてきた。コパノリッキーはホッコータルマエをターゲットに動き出し、その背後からアウォーディーも仕掛けていく。3コーナー過ぎでは上位人気3頭が先頭争いをする構図になったが、外を回ったアウォーディーの勢いは、遠くから見ていても一枚上のものがあった。
 結果、アウォーディーがゴール前200メートル付近で先頭に立って押し切り勝ち。その姿には、この日いちばんの歓声がわき起こった。
 それを見届けた前田幸治オーナーは「次はチャンピオンズカップ。来年はラニと一緒にドバイに行きたいね」と満足げな表情で宣言。まさに夢が広がる勝利になった。
 3/4馬身差で2着だったホッコータルマエの鞍上、幸英明騎手は「今日は展開的にちょっと厳しかったですね」とのこと。それでも「残り2戦(チャンピオンズカップGⅠ、東京大賞典GⅠ)、がんばります」と気を取り直していた。
 しかしながらアウォーディーの勢いは、他の陣営も一目を置かざるを得ないことになったようだ。
 3着に入ったサウンドトゥルーを管理する高木登調教師は「ウチの馬もすごく良くなっていたけれど……、強いね」と、悔しさよりもその走りに感心した様子。5着に敗れたコパノリッキー鞍上の田邊裕信騎手も「コーナー6回のコースで馬が少し力んだところはありましたが、今回は相手が上でした」と振り返った。チャンピオンズカップGⅠは適条件といえるコーナー4回の1800メートル。巻き返しを狙ってくるはずだ。
 4着に食い込んだノンコノユメを管理する加藤征弘調教師は「去勢して走りの反応がよくなりましたね。次は中京。これからどんどん行きますよ」と、笑顔を見せていた。
 12月に控えるトップホースたちの戦いには、おそらくモーニンなども加わってくることだろう。輪をかけてハイレベルになっていくダート界の頂点をめぐる争い。その行方が今から楽しみだ。
武豊騎手
どういうペースになるのかわかりませんでしたし、先行勢には離されない位置で行こうと思っていましたが、1周目がスローペースだったので早めに動きました。最後の直線での手応えもよかったのですが、先頭に立ちたがらないタイプなので、抜け出すタイミングを間違えないように気をつけました。
松永幹夫調教師
今日は日本のダート界でいちばん強い馬たちが集まっていましたから、そのなかでいいレースができました。早めに抜け出すと走るのをやめる面があるところだけは心配していましたが、走りはいつものアウォーディーらしくて、安心して見ていられましたね。ジョッキーがうまく乗ってくれました。



取材・文:浅野靖典
写真:いちかんぽ(国分智、岡田友貴)