dirt
2016年11月3日(祝・木) 川崎競馬場 1400m

ハナを奪って逃げ切り完勝
1年越し悲願達成のJpnⅠ制覇

 舞台は川崎1400メートル。スピードのみならず、器用さと強さが求められる一戦。1周1200メートル馬場の多い地方競馬場ならでは、そして、それがむしろ誇りとも言える“地方競馬の根幹距離”に、12頭のスプリンターが集結した。
 大井のソルテにとっては、願ってもない舞台設定だった。さきたま杯JpnⅡ制覇に加えて、かしわ記念JpnⅠでも2着に奮闘。いまや地方競馬のエースに成長した。本質的にマイルがベストだが、馬場を1周する1400メートル戦なら、持ち前の器用さが存分に生かせるはず。まして、コーナーのきつい川崎コース。不慣れな馬は、コーナーで減速せざるを得ない状況にもなりうる。すなわちそれが、全馬初コースというJRA勢の最大の課題。地の利か、スピードか――。川崎1400メートルであるがゆえのおもしろさが、このレースをさらに熱くさせた。
 結果は、スピードの勝利だった。最内枠から五分にスタートを切ったダノンレジェンドが、ソルテとコーリンベリーを制してハナを切った。コーナーを無難にこなして最後の直線に向くと、正面から秋の陽光を受け、ゴールに向かってひた走る。トップスピードのまま大観衆の前を駆け抜け、3馬身差の完勝を演じた。
 ゆっくりと、激戦の足跡をたどるようにウィニングランを行ったダノンレジェンドとミルコ・デムーロ騎手。実際のところは「ウィニングランは物見をしていて、乗っていて怖かったよ」(デムーロ騎手)とのことだったが、馬にとっては悲願のJpnⅠ初制覇、そして鞍上にとっては地方で初めてとなるJpnⅠ制覇の余韻を楽しんでいるかのように見えた。
 その鞍上の笑顔とは対照的に、村山明調教師は「1年間、いっぱい悔しい思いをしてきた」と思いを吐き出した。世界を知るデムーロ騎手からは「ドバイに行こう、海外に行こう」と言われていたそうだ。しかし、まずは昨年のリベンジから。この1年間、出遅れや展開のアヤで勝利を逃したこともあったが、酷量に耐え、持ち前のスピードを振り絞ってきた。それが、このレースで結実。村山調教師は「来年はドバイ遠征も視野に入れたい」と口にした。
 ベストウォーリアの堅実さにも脱帽する。結果的に1番人気には応えられず2着だったが、内を突いて伸びてきたあたりは器用に立ち回った証拠だろう。これで1400メートルは【3・3・0・1】。斤量との戦いにはなるものの、今後は小回り1400メートルでも実績馬らしい走りをしてくれるはずだ。
 一方、2番人気に推されたソルテは、4コーナーで手ごたえがなくなり6着。ここを目標に調整され、涼しくなったことで体調も上向いていたが、道中の行きっぷりや手ごたえは本来のものではなかった。さきたま杯JpnⅡでは2キロの斤量差こそあったものの、ベストウォーリアに完勝しており、力負けとは考えにくい。大舞台で結果を出すことは、それほど難しいということか。
 その点、ダノンレジェンドは大舞台で最高の結果を出した。1年間の悔しさ、苦しさをバネに、リベンジを果たした。
 さあ、行こう。地方で培った強さを武器に、世界の大舞台へ――。
ミルコ・デムーロ
騎手
地方でジーワンを勝っていなかったから本当にうれしいです。やはり1200~1400メートルでは強いですね。ゲートでも落ち着いていたし、前走のように道中でプレッシャーを受けるようなこともなく、いい手ごたえで直線を迎えられました。でも、最後は太陽がまぶしかったですね。
村山明調教師
この1年間は悔しい思いをしてきましたが、いつも通りの走りができれば一番強いと思って調整してきました。スタートで控えずに行き切ってくれたし、ミルコもうまく乗ってくれましたね。年内は休養。来年はオーナーとの相談次第で、ドバイも視野に入れたいと思っています。



取材・文:大貫師男
写真:いちかんぽ(国分智、岡田友貴)