理想の展開で直線抜け出し快勝
コースレコードでGⅠ・8勝目
レースの3日前に岩手山の今年初冠雪で、一気に秋が深まった岩手県。前々日には最終レースが霧のため取り止めとなるアクシデントも発生したが、10日は好天に恵まれて、マイルチャンピオンシップ南部杯JpnⅠが実施された。1600メートルという距離から、例年はダートのベストメンバーが必ずしも揃うというわけではなかったが、今年は計19個のGⅠ/JpnⅠタイトルを持つ3頭、ホッコータルマエ、コパノリッキー、ベストウォーリアが登場。文句なしに過去最高のメンバーとなった。その3頭が結果として1、2、3着となったが、優勝したのはコパノリッキー。逃げの手に出た北海道のロイヤルクレストを巡り、ホッコータルマエ、コパノリッキー、ベストウォーリアが追走。コパノリッキーは「砂を被らない位置で」(村山明調教師)ベストの3番手をキープ。2ハロン目から12秒を切るラップでレースは流れ、緩むことがない。1000メートル通過58秒0、1400メートル通過1分21秒5は、高速馬場でもあり盛岡のコースレコードを大きく上回る。コパノリッキーは外を回って残り200メートル地点で抜け出し先頭。ベストウォーリアは終始ぴたりとマークしてきたが、最後まで馬体を併せるところに至らないままのゴールとなった。
勝ち時計は1分33秒5。2010年のマイルチャンピオンシップ南部杯JpnⅠでオーロマイスターがマークしたタイムを1秒3更新する大レコードを樹立した。そしてコパノリッキーのGⅠ/JpnⅠタイトル8つのうち、フェブラリーステークスの2つ、かしわ記念の2つに続いて1600メートルで5つめ。距離適性の高さがGⅠ/JpnⅠ馬3頭の中でも抜きんでていたといえる。そういえばと、クロフネの武蔵野ステークスGⅢ(2001年)を調べ直せば、1600メートル1分33秒3。この日のコパノリッキーは日本レコードに0秒2と迫る快走であった。
戸崎圭太騎手が「いい走りはできていたのですが……」という、同一レース3連覇を狙ったベストウォーリアも1分33秒8。「交わされてからもズルズルいかなかった」(幸英明騎手)ホッコータルマエも1分34秒3。1分34秒6の4着アスカノロマン、5着レーザーバレットまでが従来のレコードタイムを突破していた。
小林祥晃オーナーに「今年中にジーワン11勝を」と目標を示され、苦笑いの村山調教師だったが、次走はJBCクラシックJpnⅠ。その後はこれまで獲り逃がしているチャンピオンズカップGⅠと東京大賞典GⅠがあり、すべてを勝てば11勝になるという計算だ。楽な道のりではないと思うが、田邊裕信騎手は「楽に勝たせてもらった」とも。あの時計、あの内容で楽だというのなら、その目標も決して不可能なことではないと思えてくる。
田邊裕信騎手
休み明けでも仕上がりが良く、自信を持って乗りました。外枠で思った通りの位置。道中の力みがないし、ペースが速いとも感じませんでした。いろいろな競馬場で走っていますが、1600メートルがいいし、広いコースも合う。(南部杯の)騎乗依頼を受けて、乗るのが待ち遠しかったです。
村山明調教師
砂を被らない位置でという指示で、その通りの競馬を騎手が冷静に乗っていたと思います。ペースは速かったようですが、そうは見えなかったし、同じペースで走る馬なので、後ろから抜かれるとは思いませんでした。追い切りは遅いように思ったのですが、スタッフが優秀でした。