dirt
2016年10月4日(火) 金沢競馬場 2100m

2番手に控え直線先頭で押し切る
3歳馬の勝利に今後の飛躍を期待

 連日、季節外れの暑さが続いていた金沢市内。この日も最高気温25度を超える夏日となったが、空気は爽やかで絶好の競馬日和に恵まれた。そんな天気の影響もあってか、年に一度のビッグレース白山大賞典JpnⅢが行われる金沢競馬場には、昨年より約1000人多い、4000人以上のファンが訪れた。
 白山大賞典が1997年にダートグレードとなって以降、優勝はJRA所属馬によって占められているが(地方馬のみで争われた2007年は除く)、近年、地元金沢の大将格が2着に好走する例が多かった。しかし、今年はそれに匹敵する実績馬が不在。人気はJRA勢に集中した。
 そのJRA勢5頭のうち、アムールブリエ、ストロングサウザー、モンドクラッセ、ケイティブレイブの4頭で人気を分け合ったが、最終的に1番人気に推されたのは3歳馬のケイティブレイブ(単勝2.1倍)。そして鞍上の武豊騎手とともに、その期待にしっかりと応えたのであった。
 ゲートが開くと、スタンドがどよめいた。逃げ候補とされていたモンドクラッセが出遅れたからだ。となれば、もう1頭の先行馬ケイティブレイブが大外から逃げることはすぐに予想できた。しかし、モンドクラッセのミルコ・デムーロ騎手は押して一気に先頭を奪うと、ケイティブレイブの武豊騎手は競り合うことをせず2番手に控えた。3番手にアムールブリエ、内にストロングサウザー、その後ろにトラキチシャチョウ、名古屋のカツゲキキトキトが続いた。
 向正面に入るとモンドクラッセが後続を引き離しにかかったが、3~4コーナーで徐々に差を詰めたのがケイティブレイブ。直線半ばで先頭に立つと、外からアムールブリエ、ストロングサウザーが猛然と追い込んできたが、そのまま押し切って1馬身差でゴールイン。スタンドからは大歓声が上がった。
 2着は、牝馬ながら57キロを背負ったアムールブリエ、その半馬身差の3着に4番人気のストロングサウザーが入った。
 2008年のスマートファルコン以来の3歳馬による優勝を飾ったケイティブレイブ。兵庫チャンピオンシップJpnⅡを勝って以降の3戦は、いずれも逃げて2着と悔しいレースが続いていた。今回は2番手に控えたレースになったが「逃げなくてもレースはできる馬ですから」と陣営は揃って口にした。目野哲也調教師によると「一気に追い上げる脚がなくてじわじわ行くタイプなので前にいた方がいい。だから、この馬の流れになれば相当しぶといんです」とのこと。今後、一線級の馬が相手になった時、その流れに対応できるかどうかが課題になるようだ。白山大賞典JpnⅢは、スマートファルコンをはじめGⅠ/JpnⅠ活躍馬を多数輩出している出世レースでもあり、ケイティブレイブの今後の活躍が期待される。
武豊騎手
ある程度スピードに乗せたほうがいい馬なので、抑えすぎずに2番手に切り替えました。終始手応えはよかったので前の馬は捕まえられると。金沢の短い直線なら何とかもってくれると思いましたが、がんばってくれました。大井、新潟と乗せていただいて2着だったので勝てて本当に嬉しいです。
目野哲也調教師
2着が続いていましたが、良く走ってくれていたので悲観はしていませんでした。ただ今回は間隔が短かったので少し心配しましたが、どうしても勝ちたかったんです。この馬はまだ攻め馬で負けたことがないんですよ。派手さはないけど強い馬です。JBCには登録しますが次走は浦和記念になるでしょう。

 そしてこの日の主役は、勝利に導いた武豊騎手でもあった。表彰式には、待ってましたとばかりに大勢のファンが表彰台の前に詰めかけた。「毎年のようにここに来て乗りたいです。応戦してください」という武騎手の言葉に、「ありがと~!」「また来てね~!」などと大きな声が飛び交い、ファンのみなさんの嬉しそうな姿が印象的だった。こうした様子を目の当たりにすると、スタージョッキーという存在の大きさや大切さを改めて実感させられる。
 大盛況に終わった今年の白山大賞典JpnⅢは、これまでの記録を7500万円余り上回る売得金額レコードを更新した。

取材・文:秋田奈津子
写真:宮原政典(いちかんぽ)