第1戦 ファイティングジョッキー賞 |
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第2戦 エキサイティングジョッキー賞 |
第3戦 チャンピオンジョッキー賞 |
名手同士の戦いは激戦続き
紙一重で田中学騎手が優勝
25回目を迎えたゴールデンジョッキーカップ。近年は冬の時期に実施されていたが、今年は9月に日程が変更となった。その当日の天気予報は降水確率が60%ということで、雨具を持参しているファンも多かった。しかしながら、その予報は不的中。第6レース終了後に吉田勝彦アナウンサーによって行われた騎手紹介式のときは、真夏のような陽射しで無風。騎手紹介式が終わり、検量室方面に引き揚げていくとき、12名の騎手のほとんどの口から「暑い」という言葉が発せられていた。距離が違う3つのレースで争われる『ゴールデンジョッキーカップ』に出場できるのは12名。資格がある2000勝以上の地方競馬の騎手はそれよりもはるかに多い。兵庫県競馬組合広報の谷口和男さんによると「番組編成の部署と調整して出場者を決めていますが、本当にむずかしいんですよ」とのことだった。
それを経てのラインナップなのだが、選ばれた12名のなかに的場文男騎手(大井)の名前があったのは、主催者側のファインプレーといえるだろう。的場騎手が前日まで挙げている地方通算6906勝(ほかに中央4勝、海外1勝)は、日本の現役騎手ではトップ。そしてこの日が60回目の誕生日なのである。それを受けて最終レースには『的場文男騎手還暦メモリアル』というレースが行われ、場内の実況放送でもさかんに「還暦」という言葉が使われていた。
そのことは、出場騎手全員が知っていたことだろう。しかしレースとなれば話は別。今年は3戦とも激しいペースでの戦いになった。
第1戦は、1230メートルのファイティングジョッキー賞。丸野勝虎騎手(愛知)のワンダーグロワールが単勝1.3倍の断然人気に推され、7馬身差で逃げ切り勝ち。しかしその後ろの戦いが熱かった。2着に入ったのは1コーナーでは最後方にいた内田博幸騎手(JRA)のダーリングリップ。3着は中団から差を詰めた的場騎手のクラリスだったが、2着と3着の差はハナ。「残ったと思ったんだけどなあ」と的場騎手が首をひねるほどの微差だった。
続く第2戦は1400メートルのエキサイティングジョッキー賞。単勝1番人気に推された内田騎手のセイギノミカタが後続を離して逃げたが、3コーナー過ぎから失速して11着に大敗。勝ったのは2番手からレースを進めた2番人気の田中学騎手(兵庫)だった。
2着には中団から山口騎手が流れ込み、3着は1コーナーで後方2番手にいた岩田康誠騎手(JRA)。またしても差し馬が台頭する流れになった。
そして、第1戦で1、2着に入った2名が11着と12着だったこともあって、得点争いは大混戦に。この段階では山口騎手がトップで田中騎手が第2位になっていたが、全員に優勝の望みがある状況になっていた。
その最終戦を前に山口騎手は「次に乗る馬は成績的に厳しそうなんだよなあ」と思案顔。田中騎手は「うまく乗ってくれば逆転できるかな」とニヤリ。1着と12着で第3戦を迎えた丸野騎手は「どうもジョッキーレースでは極端な結果になることが多いんですよね。だから次も一発を狙いますよ」と、専門紙に目を落とした。検量エリアでの会話には、それぞれの思惑も含まれているような様子。
それもあってか、1700メートルの第3戦、チャンピオンジョッキー賞は、またしても激しい展開に。逃げた木村健騎手(兵庫)が最下位に敗退し、1番人気に推された岩田騎手も好位追走から失速。その流れに乗って制したのは、1周目のゴール地点では最後方にいた戸崎圭太騎手(JRA)。2着も道中では後方2番手あたりにいた東川公則騎手(笠松)だった。
3戦すべてで、差し、追い込みタイプが上位に入った今年のゴールデンジョッキーカップ。そして3着以内に2回入った騎手がひとりもいないという結果になった。となると、有利になるのは大きい着順が少なかった騎手。
最終結果は、第3戦で的場騎手をアタマ差交わして5着に入った田中騎手。その5着と6着が逆だったら、的場騎手が優勝していた。
それを速報として田中騎手に伝えると「空気が読めないヤツだって、的場さんに怒られちゃうかな」と言いつつ満面の笑顔。的場騎手は「第3戦は勝てるレースでしたよ。スタートでトモを滑らせて出遅れて、そこからいい位置につけるまでに脚を使ってしまいましたから」と悔しがった。
第3位には最終戦が10着だった山口騎手。こちらも11着という結果だったら第4位になっていた。本当に紙一重。まさに運が左右したといえる結果だった。
表彰式のあと、記念撮影用のエリアからたくさんのファンが色紙を手に「的場さん!」と大きな声で呼びかけ、的場騎手はそれに応えてペンを走らせた。ファンに愛されるレジェンド、それが的場文男騎手。「来年もまた呼んでくれるかなあ」と気にしていたが、準優勝でも今年の主役は、間違いなく的場騎手だった。
そしてもうひとり、その様子を見て意欲を燃やしている騎手がいた。最終レースを制した下原理騎手は、これで地方、中央を合わせての勝利が2000の大台に乗った。「今年は9月開催なので無理でしたが、来年は出させてもらいたいなあ」と笑顔。地方競馬の騎手にとってあこがれの舞台。それがゴールデンジョッキーカップなのだろう。
取材・文:浅野靖典
写真:桂伸也(いちかんぽ)
写真:桂伸也(いちかんぽ)
田中学騎手
(兵庫)
的場文男騎手
(大井)
山口勲騎手
(佐賀)