逃げてレースの流れを支配
60キロでも直線突き放し圧勝
東北の猛暑は一段落ついたが、今度は台風が東日本に接近。翌日の天候についてのニュースが流れる中、クラスターカップJpnⅢの行われる盛岡競馬場は曇・稍重のコンディション。雨に降られることもなく、多くの入場者を迎えて実施することができた。登録メンバーが出た時点から目についたのは、昨年の覇者ダノンレジェンドの存在だが、今回の負担重量は60キロ。2011年からクラスターカップJpnⅢは別定条件が変わり、4歳以上54キロ(牝馬2キロ減)の基礎重量から、JpnⅡ含むグレード7勝のダノンレジェンドには6キロが加重され、上限一杯の重量が課せられた。他には芝でクイーンカップGⅢを勝っているフォーエバーモアが1キロを増量されているだけ。過去にはサマーウインドやタイセイレジェンドが60キロで走っているが、いずれも完敗しており、これまで58キロまでしか経験のないダノンレジェンドに対しては評価が分かれた。
一方、グレード未勝利ながらデビューから5着以下がなく、東京スプリントJpnⅢ・4着、かきつばた記念JpnⅢ・2着と勢いもあるブルドッグボスが54キロならばと評価が上がり、単勝では1.9倍と僅かながらダノンレジェンド(2.5倍)を逆転した。4月の東京スプリントJpnⅢで3着のダノンレジェンドと0秒1差、それが1キロ差から一挙に6キロ差になるなら、逆転するという計算が成り立っても何ら不思議ではなかった。
しかし、レースの流れをスタートからゴールまで完全に支配したのはダノンレジェンドの方だった。「なにも指示はしていない」(村山明調教師)とのことだったが、好スタートを切って逃げの戦法に。外からラブバレットがマークし、後続はにらみ合うような形になってひとかたまり。レースのラップは12.5-11.0-11.5-11.4-11.1-11.6と、むしろ後半に余力を残している流れとなった。
4コーナーから直線に向いて、一気に後続を突き放す脚はまさに格の違い。2着ブルドッグボスに騎乗したルメール騎手の「(相手が)強すぎた。ランクが1つ上」という言葉がすべてを物語っており、60キロを背負っていたことを忘れさせてしまうような、ダノンレジェンドのゴールシーンであった。
地元ファンを沸かせたのは、3着のラブバレット。スタートを決めて勝ち馬の外へピタリとマークする形を取り、4コーナーでは先頭へ出ようかというシーンも作った。「調子は今季一番、リラックスして走っていたし、雰囲気良く直線を向いた」と山本聡哉騎手だったが、一方で「もう少し食らいつきたかった」とも。昨年の3着以上が期待されたが、最後は決定的な差がついてしまった。ただこれは素直に上位2頭の強さと見て差し支えなかろう。
勝ったダノンレジェンドはJBCスプリントJpnⅠの有力候補になる。ラブバレットもその相手にこれだけの内容であれば、引き続き全国の交流競走へ挑み続けてくれることを期待したい。
騎手