逃げ馬をとらえ4馬身差圧勝
さまざまな縁に導かれた勝利
南関東クラシックの最終戦であり、3歳ダートチャンピオン決定戦でもあるジャパンダートダービーJpnⅠ。ここ2年は雨に見舞われていたが、今年は梅雨空ではあったものの天気は回復し、非常に蒸し暑い中で行われた。“ダービーウイーク”の勝ち馬からは、東京ダービー馬バルダッサーレと、東海ダービー馬カツゲキキトキトの2頭が参戦。残念ながら、羽田盃の勝ち馬タービランスは感冒のため出走取消となった。JRA勢は、ユニコーンステークスGⅢの1、2着馬、ゴールドドリームとストロングバローズや、兵庫チャンピオンシップJpnⅡを圧勝したケイティブレイブなど、骨っぽいメンバー6頭が揃った。
ゲートが開くと、予想通り大外枠のケイティブレイブが内を見ながら先手を主張した。2番手にストロングバローズ、その後ろにダノンフェイスやキョウエイギアが続き、好スタートを決めたカツゲキキトキトも好位集団に加わった。直後をゴールドドリームが追走、バルダッサーレは有力馬たちを見る位置取りでレースを進めた。
ケイティブレイブが後続を4~5馬身離してマイペースで逃げる中、向正面半ばあたりで動いたのはバルダッサーレだ。外から一気に前へと進出し2番手まで押し上げた。するとケイティブレイブは3~4コーナーで再びリードを広げ、先頭のまま直線へ。ライバル達も5頭が横並びになり、前を目がけて追い出しにかかった。その中から勢いよく伸びて来たのが、大外のキョウエイギアだ。残り200メートルを過ぎたあたりでケイティブレイブをあっさり交わすとそのまま突き放し、4馬身の差をつけてゴールイン。鞍上の戸崎圭太騎手の左手が大きく上がった。
2着に粘ったケイティブレイブの武豊騎手は、「いいペースで行けたけど、早めに動かれて脚を使わされてしまいましたからね。力はある馬です」と振り返った。
3着には1番人気に支持されたゴールドドリーム。平田修調教師は敗因に首をかしげ、「砂の質だったりコースの相性もあるのかもしれません。目に見えない疲れもあるのだと思います。JRAではまだ負けてないですし、いずれは大井も克服したいです」とコメントを残した。
見事に3歳ダートチャンピオンの称号を手にしたキョウエイギアは、4番人気で単勝14.2倍と、JRA勢の中では伏兵的存在。「ここまで強い競馬をしてくれるなんて、びっくりしました。嬉しい驚きです!」と矢作芳人調教師も感激の様子だった。母は、船橋所属として2006年のエンプレス杯GⅡを優勝したローレルアンジュ。また戸崎騎手は大井出身、矢作調教師も大井で調教師として活躍した父のもとで育った。南関東に縁のある人馬ということもあってか、表彰式はとても温かい雰囲気に包まれていた。さらにこの日は、田中晴夫オーナーの誕生日でもあった。
矢作調教師は感極まった表情で自身のことについて語った。「実は、病気を患っていて、来週手術の予定なんです。そういう意味でも今日は渾身の仕上げでした。馬が僕のことを分かっていて励ましてくれたんじゃないかなと思います。大井は自分の故郷なので、ここでジーワンを勝てたことは本当に感無量です」。人と人との繋がりやさまざまな想いがゴールへと導く、そんな競馬の魅力を改めて感じた勝利でもあった。
キョウエイギアの今後だが、当初はレパードステークスGⅢを予定していたそうだが今回勝ったことで見直し、秋のJBCを視野にいれていきたいとのことだ。
地方馬最先着は4着のバルダッサーレ。直線では最後までしっかり伸び、東京ダービー馬の意地を見せてくれた。「強気に一発狙って乗りました。さすがにまくりきれる相手ではなかったけど最後までがんばってくれました。力のあるところは見せてくれましたね」と吉原寛人騎手。3歳世代の地方代表として秋の活躍に期待したい。
戸崎圭太騎手
今日はオーナーの誕生日ということもあって力を込めて騎乗しました。どこからでも競馬ができる馬なので、行く馬を行かせてそれを見ながらレースをしました。終始手応えも良く、いつでも抜け出せる状態で、追ってからの反応も良かったです。このメンバー相手にこの勝ち方ですから今後も楽しみですね。
矢作芳人調教師
オーナー、スタッフみんなの気持ちが集結した勝利です。堅くて仕上げづらい馬なのでユニコーンステークスをパスしてここに絞ったことが結果に繋がりました。前走より体は良くなっていましたね。この馬は青森の小さな牧場の生産。馬主さんとの相性の良さもありますしこういう馬での勝利も自分らしいです。