dirt
2016年6月29日(水) 大井競馬場 2000m

上がり最速で後続を突き放す
秋はアメリカの大舞台へ挑戦

 今年からJRA所属馬が7頭出走可能になった帝王賞JpnⅠ。地方馬の参戦は5頭と寂しくなったが、JRA勢は現ダート界のトップホースが揃って参戦。上半期ダート頂上決戦に相応しい組み合わせとなった。
 いったいどの馬が1番人気になるのだろうか? 実績、展開など、様々な要素を考えれば考えるほど悩ましく、ファンにとっては予想のしがいがあるメンバー構成。最終的には、もっとも若い4歳のノンコノユメが単勝3.1倍で1番人気。6.6倍のコパノリッキーまで5頭がひしめき合う混戦模様となった。
 前日までの雨の影響で、この日の馬場は不良のコンディション。当日も不安定な空模様だったがメインレースの時間帯には雨も止み、大井競馬場に集まった2万2千人余りのファンの熱気に包まれながらレースがスタートした。
 注目の先行争いは、大外枠のクリソライトが積極策で先手を取りきった。2番手にアスカノロマン、外の3番手にコパノリッキーがつけた。マークするようにホッコータルマエ、アムールブリエ、その後ろにサウンドトゥルーとノンコノユメが続き、JRA勢7頭が前を占めた。
 隊列はほとんど変わらなかったが、3コーナー過ぎでコパノリッキーが一気に先頭に躍り出た。後続を引き離しながら直線に向かうと、ホッコータルマエやノンコノユメが追いかけた。しかし、先頭を行くコパノリッキーに上がり最速の脚を使われては後続もなすすべがない。そのまま力強く突き放し3馬身半の差をつけてゴールイン。大歓声の中、圧巻のパフォーマンスを披露した。2着はノンコノユメ、さらに5馬身差の3着にサウンドトゥルーが入った。
 とにかくコパノリッキーの強さが際立ったレースだった。ノンコノユメのクリストフ・ルメール騎手は「4コーナーで外をまわった時は手応えが良く勝てると思った。でも前が止まらなかった。コパノリッキーは強すぎです」とコメント。「リズム良く行けましたが4コーナーで離されてしまいました。力は出せましたが相手が強かった……」とサウンドトゥルーの大野拓弥騎手。ライバルたちも、それぞれが納得のレースをしての結果に、勝者を称えるしかなかった。
 今回は前走からプラス15キロ、547キロという過去最高体重で登場したコパノリッキー。それが影響したのか、パドック周回の間にも少しずつオッズが上がって最終的には単勝6.6倍。「僕が信頼されていなかったんでしょう(笑)」とマイクパフォーマンスで場内を沸かせた武豊騎手はさすがだったが、「馬体重を見て少し心配になりました。でも勝てたということはいい馬体だったということでしょう」と村山調教師の不安も杞憂に終わったようだった。
 6歳ながら、もう1段階パワーアップしているかのような走りでGⅠ/JpnⅠタイトル7つ目を獲得。そしてこの勝利で、以前から陣営が話していたアメリカ遠征のプランが現実味を帯びてきた。「ブリーダーズカップのクラシックかダートマイルか、出走予定馬なども考えて決めます。オーナーの意向からも、ほぼ向かう予定です。良い結果が出ればアメリカで種牡馬という可能性もあります」と村山調教師は語った。ダートの本場アメリカでコパノリッキーはどんな走りを見せてくれるのか。陣営の想い、ダート競馬ファンの夢は世界へと続いている。
 過去最強ともいえるJRA勢が揃った今年の帝王賞JpnⅠだったが、その中で地方馬では大井のユーロビートが5着に食い込んだ。「いくら強いといっても、レースは展開・思惑があるから中央馬7頭全てが自分の競馬ができるわけではありません。だからそれを見ながら上位を狙うという作戦でした。昨年の4着より今年の5着は完璧でした。馬も騎手も本当に凄いと思います」と笑顔の渡邉和雄調教師。次走は、7月18日に盛岡競馬場で行われるマーキュリーカップJpnⅢで連覇を狙う。
武豊騎手
今日は無理に先手を取る気はなかったので、他の馬の出方を見ながら想定した展開になりました。道中少し力んで走っていたのでなんとか我慢させて乗り、早めにスパートをかけました。4コーナーの手ごたえがすごく良かったのでいい時の走りだなと。この馬のポテンシャルの高さを改めて感じました。
村山明調教師
これだけ強いメンバーと戦って勝てたことが大きいです。道中かかっていたので最後までもつか心配でしたが強かったですね。今が一番いい体なのかもしれません。アメリカに直行か南部杯をはさむかは状態を見て考えます。気性からも海外遠征は大丈夫でしょう。こんな馬を管理できて本当に幸せです。

大井のユーロビートが5着に食い込んだ。

取材・文:秋田奈津子
写真:いちかんぽ(国分智、岡田友貴)