dirt
2016年6月9日(木) 門別競馬場 1200m

上位人気2頭のマッチレース
昨年3着の借りを返す勝利

 「北海道には梅雨がない」と言われているが、地元在住のかたによれば、この時期は雨が多いとのこと。今年の北海道スプリントカップJpnⅢ当日は、朝から強い雨が降り続いた。
 そのため、馬場には水たまりが多数。そうなるとレースタイムが速くなるのは必然で、北海道スプリントカップJpnⅢに出走する13頭の人気上位が、4頭のJRA勢に偏ったのは仕方のないところだろう。
 しかしそのなかで、地元の期待を集めている馬がいた。門別競馬場で27戦24連対。目下4連勝中のアウヤンテプイだ。過去3年ともこのレースに出走し、4着、4着、5着。今年はそれ以上を狙っていたはずだが、パドックに登場したアウヤンテプイは、終始小走りで腹下からは汗がポタポタ。出走馬のなかで背中から猛然と湯気を立ち昇らせていたのは1頭だけと、この時点で勝負あったという感じだった。
 対するJRA勢の4頭は落ち着いた雰囲気。なかでもダート短距離重賞で安定しているダノンレジェンドが単勝1.6倍と断然の人気を集め、前走で重賞初勝利を挙げたノボバカラが2.9倍で続いていた。
 ただ、その2頭には課題があった。ダノンレジェンドは昨年のこのレースで出遅れが響いて3着。前走の東京スプリントJpnⅢでも出遅れて3着に敗れていた。そしてノボバカラは1200メートル戦が初めて。それでも今後のために賞金を重ねようと、早くから門別に入厩してこの一戦に備えた。
 それが実ったのか、ノボバカラは好スタートから先頭に。続いてダノンレジェンドが追走し、JRAのスノードラゴンとレーザーバレットはその後ろから。アウヤンテプイは先頭争いの直後でレースを進めた。
 しかしやはり、この馬場状態では前に行った者が有利。3コーナー付近からはノボバカラとダノンレジェンドの一騎打ちになり、その戦いはゴール地点まで続くことに。マッチレースとなった勝負の結果は、外を回ったダノンレジェンドがわずかに先着を果たしていた。
 ハナ差2着となったノボバカラ鞍上の桑村真明騎手は、検量室前で下馬するなり天間昭一調教師に「悔しいです」と心情を吐露。その隣でダノンレジェンド陣営が喜びに包まれていたのとは対照的だった。
 その4馬身後方の3着にはスノードラゴンが入線。騎乗した大野拓弥騎手は「前走(かきつばた記念JpnⅢ・5着)は、高松宮記念GⅠの反動が感じられましたが、今回はそれがなくなっていました」と、今後への手応えを感じているようだった。
 地方馬の最先着は、4着に入ったクリーンエコロジー。岩橋勇二騎手は「地元馬同士だとペース的に行きたがりますが、この相手になると流れが速くなりますからね」と、好走の要因を振り返った。8歳だがJRA所属時はオープンクラスまで行った馬だけに、今後はスーパースプリントシリーズでも注目できそうだ。
 アウヤンテプイも同様。今回は6着だったが、「あれだけイレ込んだらね。でもまたこういう舞台に挑戦しますよ」と、米川昇調教師。掲示板は外しても大負けはしなかったという結果なら、次走以降の巻き返しが期待できるだろう。
ミルコ・デムーロ騎手
前走は3着に負けてしまいましたが、最近は少し気が悪いところがあるようで、スタートのときにあまり動いてくれないんですよ。でも今日は大丈夫でした。この馬はとてもパワーがあって、すごく走る馬ですよ。今日はギリギリで勝ちましたが、最後までいい手応えがありました。
村山明調教師
去年はゲートで失敗して悔しい思いをしましたし、前走もそうだったので、中間はゲート練習を入念にしました。でも今日もスタートは速くありませんでしたが、ジョッキーがうまく運んでくれましたね。このあとは北海道でひと息入れて、昨年と同じくクラスターカップから大目標のJBCに向かいます。


取材・文:浅野靖典
写真:中地広大(いちかんぽ)