ベテラン川原騎手の見事な逃走劇
人気の連勝馬を7馬身突き放し圧勝
3歳世代によるダートグレード競走の開幕戦となる兵庫チャンピオンシップJpnⅡ。中央ではクラシックを頂点とした競走体系のもと、芝路線は多くの重賞が組まれているが、ダート重賞は6月のユニコーンステークスGⅢまでない。中央馬にとっても園田で行われるこのレースが、待ちに待った重賞と言える。昨年も中央馬クロスクリーガーが、2着リアファルに9馬身差をつけて圧勝。その後もジャパンダートダービーJpnⅠではノンコノユメの2着、レパードステークスGⅢ・1着と活躍しながらも、9月に急死。皮肉にも、リアファルやノンコノユメのその後の活躍でクロスクリーガーの強さが浮き彫りにされ、兵庫チャンピオンシップJpnⅡの価値もさらに高まった感がある。
今年も例年通り、中央のダート路線を歩む3歳の強豪が参戦。上位人気を占めた。1番人気はヒヤシンスステークスの覇者で3戦3勝のゴールドドリームが単勝1.3倍と圧倒的。2カ月半ぶりだが、馬体重は前走から1キロ増のみ。ここへの意気込みを感じさせた。
2番人気は伏竜ステークス3着のケイティブレイブで4.6倍。伯父にダートグレード8勝のビーマイナカヤマがいる。これに前日、名古屋のかきつばた記念JpnⅢを制し、2日連続重賞制覇を狙うミルコ・デムーロ騎手のレガーロが続き6.0倍。この3頭が単勝1桁台だった。
一方、地元兵庫勢は2歳重賞の覇者マイタイザン、ノブタイザンが不在。兵庫三冠一冠目の菊水賞を勝ったシュエットも回避。主力は菊水賞2着タケマルビクター、3着エイシンニシパと、中央勢に対抗するには力不足は否めなかった。
レースは大方の予想通りケイティブレイブがハナを奪うと、地元エイシンニシパが2番手、レガーロ、ゴールドドリームが前の様子を見ながら追走。隊列が固まった1周目の3コーナー付近で、逃げるケイティブレイブの川原正一騎手がペースを落とすと、直線でもレガーロのデムーロ騎手が「スロー過ぎ」と振り返るほど、ゆったりと隊列を誘導した。
1コーナー過ぎで、1番人気ゴールドドリームが外から上がっていくが、余裕十分のケイティブレイブは少しずつペースを上げて、向正面、そして3コーナーでもセーフティリードを保った。最後の直線では、追走一杯になったゴールドドリームを突き放すと、7馬身差の圧勝でゴールを駆け抜けた。
2000年にミツアキサイレンスで第1回のこのレースを勝った川原騎手にとっては16年ぶりの勝利。ダートグレードの勝利も2002年に同馬で勝った佐賀記念JpnⅢ以来14年ぶり。先月26日に史上4人目の地方競馬通算5000勝を達成した57歳のベテランは、「年齢のことはよく聞かれるけど、まったく衰えは感じないし、むしろ経験を増すことで、技術は進歩している」と話したが、まさにそれを実証する技ありの騎乗だった。
管理する目野哲也調教師にとっても、中央・地方を通しても2005年兵庫ゴールドトロフィーJpnⅢをニホンピロサートで勝って以来11年ぶりの重賞勝ち。過去にはニホンピロサートだけでなくストーンステッパー、ニホンピロジュピタなどダート巧者の調教に実績があるだけに、将来が楽しみになってきた。
「次走はユニコーンステークスかジャパンダートダービーか使えるところを使いたい」と話すように、今後もダート路線を歩む模様。2018年2月に定年を迎える目野調教師の晩年を飾るダート馬に育つのか注目される。
川原正一騎手
ヨーイドンの競馬では後ろの馬に差されると言われていたので、後続と差をあけるように乗りました。前半うまくペースも落とせたし、いい流れに持ち込めました。道中は物見したり、フワフワして幼い面はありますが、強かった。目野先生には以前から乗せてもらっていたので恩返しができて良かった。
目野哲也調教師
調教の併せ馬でも負けたことがないくらい攻め馬も動くし、レースでも先行できるのが、この馬の強みですね。ヒヤシンスステークスや伏竜ステークスで強い相手とレースをして、この馬も強くなった。今後はユニコーンステークスやジャパンダートダービーなど、使えるところは使っていきたいですね。