逃げ馬を競り落とし重賞初制覇
見せ場をつくった地方馬も健闘
中央競馬の新人・藤田菜七子騎手の船橋競馬初騎乗や、ブチ模様の白毛馬ブチコの地方初参戦など、今年のマリーンカップ・デーは大きな注目を集めていた。しかし、競馬は何が起こるかわからないことを改めて実感した人も多かっただろう。マリーンカップJpnⅢのパドックに馬が出てくるころに降りだした雨は、レース直前には本格的な降りとなった。何かを予感させるものだったのだろうか……。単勝1倍台の人気を集めていたブチコが、ゲートで突進して飛び出し、ゴール板付近まで止まらなかったのだ。
引き返して馬体検査を行ったが、競走除外(右上眼瞼挫創)のために出走は叶わなかった。その場内アナウンスが流れると、観客席から悲鳴にも似たような落胆の声が上がり、一気に涙雨に変わった船橋競馬場。まずは何よりブチコの傷が早く癒えて、元気な姿で再びダートグレード戦線をにぎわせて欲しいと願う。
そんな波乱の幕開けとなったマリーンカップJpnⅢ。陣営が公言していた通り、大井のブルーチッパーが岩田康誠騎手エスコートの下、二の脚速く先頭に立っていった。2番手には戸崎圭太騎手のヴィータアレグリアがぴったりマーク。
最後の直線に入ってもブルーチッパーの軽快な走りは続いたが、ヴィータアレグリアが外からとらえにかかり、3着争いの後続との差をみるみるうちに広げていった。ブルーチッパーも懸命に粘ったが、ヴィータアレグリアは力でねじ伏せる形で半馬身差つけたところがゴール。勝ちタイムは1600メートル1分40秒2(稍重)。
この2頭から2秒以上離された3着には笹川翼騎手が手綱を取った兵庫のダブルファンタジー、ハナ差の4着には中野省吾騎手の笠松・タッチデュールが入り、地方勢の健闘が光った。
ヴィータアレグリアはダートグレードに初参戦となった前走のエンプレス杯JpnⅡではアムールブリエの2着に涙を呑んだが、ここはしっかりと決めて重賞初制覇。
「手応えもあったので追い出しは少し早くなりましたが、強い競馬をしてくれました。前走で初めて乗せていただいてレースセンスが高くてどこからでも競馬ができるのは強みですし、今後さらに楽しみな馬だと思います」(戸崎騎手)。
一方、ブルーチッパーにとっては非常に悔しい結果に終わった。これまでも持ち前のスピードを生かして先手を取ると最後まで渋太く、優勝したスパーキングサマーカップも東京シンデレラマイルも猛烈な勝負根性を発揮してきた。今回もそのよさが発揮されたのだが……。
「スタートのアクシデントで2回目にゲートへ入った時にボーッとしちゃったようで、少し遅れてしまった分、脚を使いましたが、その後は速かったですね。並ばれてからの根性があるので、食らいついてもう一回伸びかけたのは持ち味です。岩田君も牝馬の交流レースなら十分に行けるって言ってくれたし、また挑戦したいです」と、荒山勝徳調教師は悔しさをにじませていた。今後の予定は決まっていないが、最大目標はJBCレディスクラシックJpnⅠになるそうだ。
同じ荒山厩舎には、東京シンデレラマイルでブルーチッパーと死闘を演じて2着になった、昨年のNARグランプリ3歳最優秀牝馬のララベルも所属している。ララベルはしらさぎ賞(4月27日・浦和)へ向かう予定で、こちらも秋には同じくJBCレディスクラシックJpnⅠを目指していくだろう。
地方の牝馬路線の主役を担っていくこの2頭の存在が、非常に頼もしい。
戸崎圭太騎手
競馬がとても上手な馬なので、スタートさえ出てくれればどの位置でもいいと思っていました。いい雰囲気だったし、ゆったりとリズムよく走ってくれました。初めての船橋のナイターで、とても気持ちよく乗せていただきました。(ファンの皆さんも)競馬場に足を運んで楽しんでください!
高柳瑞樹調教師
乗り方は戸崎騎手に任せました。前走も状態はよかったですが、今回はそれ以上だったと思います。華奢ですがダートもこなせて器用さも機動力もあるので、小回りの競馬場は合っていますね。(調教師として重賞初制覇は)うれしいですが、1頭ずつ全力でやっているので、どのレースも気持ちは変わらないです。