2017年3月20日(祝・月) 帯広競馬場

障害5番手からでも余裕の独走
満を持しての初挑戦で頂点に

 好天が続いてやや強い風も吹いていた帯広競馬場は、前々日から馬場水分量が1パーセントを切り、そしてばんえい記念当日の朝は0.8パーセント。レースが進むごとに馬場が乾いて砂埃が舞うようになり、本番直前には0.6パーセントにまで下がった。これは史上もっとも時計を要した2008年(勝ち馬トモエパワー)と同じ、もっとも乾いた馬場で迎えたばんえい記念となり、パワー勝負が予想された。
 当初、出走意思を表明していた馬は11頭いたが、2頭が回避となって出走は9頭。今シーズンここまで重賞3勝のオレノココロが単勝2.4倍で1番人気。ばんえい記念連覇のかかるフジダイビクトリーも同じく今シーズン重賞3勝を挙げており、単勝は3.1倍。連勝系のオッズを見ると、2頭が人気を分け合う形となっていた。
 人気2頭を含めた有力先行勢が第2障害の下に到達するのに要したのが1分54秒。馬場水分1.7パーセントだった昨年より、やはり時計はかかっていた。
 フジダイビクトリー、オレノココロがまず仕掛けたが、障害を先頭でクリアしたのは昨年と同じくニュータカラコマ。直後にフジダイビクトリーで、やや離れてカイシンゲキ、コウシュハウンカイと続いた。
 そして障害で2度ほどヒザを折りかけたオレノココロは5番手で障害を下りたが、高重量での平地での行き脚は抜群だった。前の4頭がすでに2度、3度と止まるところ、オレノココロは残り30メートルあたりで並ぶ間もなく先頭に抜け出した。残り20メートルの手前で一度息を入れ、後続との差を広げてそのままゴールへ。直前でもう一度止まったものの、態勢を立て直すと余裕のゴールとなった。
 抜きつ抜かれつとなった2着争いには、障害6番手から一昨年の覇者キタノタイショウも加わった。これがラストランで種牡馬になることが決まっているだけに、スタンドからも「タイショウ!」の声援が飛んでいた。
 2着争いでリードしていたのはフジダイビクトリーだったが、残り10メートルを切るとキタノタイショウが一気に抜け出し、ゴール上で止まったものの、すぐに立て直して2着を確保。ゴール寸前で詰まったフジダイビクトリーを交わしてニュータカラコマが3着に入った。
 オレノココロは昨シーズンも帯広記念を制するなど古馬のトップクラスで活躍していたが、6歳という年齢を考慮してばんえい記念は自重。さらなる成長を待って、7歳でのばんえい初挑戦で頂点に立った。
 鈴木恵介騎手は2012年のニシキダイジンに続いてばんえい記念2勝目。「オレノココロには能力検査から乗っていて、最初の頃から乗っている馬でばんえい記念を勝つというのはなかなかできる経験ではないので、馬主さんにも感謝しています」と感慨深げに語った(デビューから6戦目までは騎乗停止中のため工藤篤騎手だった)。
鈴木恵介騎手
障害はもう少し早めに3番手くらいで降りられるかと思っていたのですが、下りてから前の馬の脚色を見たとき、こちらの脚色のほうがよかったので、なんとかなるかなと思いました。オレノココロはこれからばんえい競馬を代表する馬になると思いますので、連覇を目指して来年度も頑張ります。
槻舘重人調教師
普段よりも重量を積んで、長めに時間をかけて、持久力をつけるような調教をしてきました。第2障害でヒザをつくことは想定していましたが、下りてからが強いので、思った以上にしっかり走ってくれました。今シーズンは重賞でハンデを積まれても勝ってきたところに成長を感じます。

 管理する槻舘重人調教師は、開業17シーズン目でのばんえい記念初制覇。管理馬には圧倒的な強さで4歳シーズン三冠を制した、明け5歳の最強馬センゴクエースもいて、調教師としての1シーズン重賞最多勝記録を更新する10勝をマークした。
 ばんえい競馬は帯広市単独開催となってちょうど10年。今回のばんえい記念1レースの売上げ5808万1400円は、この10年で最高額を記録。また1レースの売上げでも、今年の帯広記念の6377万2300円に次いで2番目の記録となった。

取材・文:斎藤修
写真:中地広大(いちかんぽ)、NAR