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2017年2月19日(日) JRA東京競馬場 ダート1600m

前日急死した父に捧げる勝利
得意の府中で念願のGⅠ初制覇

 フェブラリーステークスGI前日、ゴールドアリュールの死亡が伝えられた。18歳、心臓疾患だったとのこと。わずか1年7カ月ほどの現役生活で、フェブラリーステークスや東京大賞典などダートのGIを4勝。何より種牡馬となっての活躍が素晴らしく、近年の日本のダート競馬は、この馬なくして語れない。フェブラリーステークスGIでは、エスポワールシチー、コパノリッキー(2回)が父仔制覇。さらに、スマートファルコン、オーロマイスター、クリソライトというGI/JpnI勝ち馬を出している。
 この日、3歳馬によるダートの出世レースとして知られるヒヤシンスステークスにも期待のゴールドアリュール産駒がいた。北海道2歳優駿JpnⅢでの大差圧勝以来3カ月半ぶり、馬体重プラス18キロという成長を見せて出走したエピカリスだ。好位追走から満を持して直線で抜け出すと、2着に3/4馬身差ではあるものの、着差以上に強いレースぶり。デビューからダートで無傷の4連勝とした。
 そしてフェブラリーステークスGIにもゴールドアリュール産駒が2頭出走。勝ったのはそのうちの1頭、4歳の期待馬、ゴールドドリームだった。GI初制覇を果たすと同時に、産駒として6頭目のGI/JpnI勝ち馬となった。
 逃げたのはインカンテーションで、ぴたりと2番手がニシケンモノノフ。この2頭が緩みのないペースでレースを引っ張った。
 そしてやや離れた3番手を追走したのが、このレース3勝目がかかるコパノリッキーで、直線を向いて先頭に立ちかける場面があった。しかし直線半ばで徐々に後退。入れ替わるように外から延びてきたのがゴールドドリームで、そのシーンはまるで同じ父から受けたバトンを渡すかのようだった。
 内からはベストウォーリアが伸び、一瞬、前に出たかという場面もあったが、ゴールドドリームがもう一度グイっと伸びて差し返した。
 わずかクビ差及ばなかったベストウォーリアは、これで昨年のさきたま杯JpnⅡから5戦連続で2着。フェブラリーステークスGIには4年連続での出走で、4年前こそ13着だったが、その後の3着、4着は、ともに勝ち馬から0秒2差。そして今回はタイム差なしと、得意のマイルの舞台だが惜しい競馬が続いている。
 1番人気は、前走根岸ステークスGⅢで4コーナー最後方から大外一気を決めたカフジテイクだが、単勝4.5倍という数字が混戦を物語っていた。今回も同じように最後方からメンバー中最速の上がり3ハロン34秒9の末脚で追い込んだものの、2着馬に3/4馬身差で3着まで。
 残念だったのは、昨年のチャンピオンズカップGIの覇者で、今回は騎乗停止中の大野拓弥騎手から柴田善臣騎手に乗替ったサウンドトゥルー。後方3番手あたりを追走し、チャンピオンズカップGIと同じように直線ではラチ沿いから抜け出そうとした。ところが、ずらりと横に広がっが馬群から出るところを見いだせず。外へ外へと移動して、結局大外のカフジテイクの横まで持ち出すことになって8着に敗れた。
 それでも、6着のケイティブレイブでコンマ5秒差、昨年の勝ち馬モーニンが12着で1秒差だから、出走馬の能力的な差はそれほどない。
 勝ったゴールドドリームは、ちょうど1年前にヒヤシンスステークスを制してデビューから3連勝。ユニコーンステークスGⅢを制したが、1番人気に支持されたジャパンダートダービーJpnIは差のある3着。武蔵野ステークスGⅢでは2着と好走したが、チャンピオンズカップGIは出遅れもあり、初めての惨敗といえる12着。今回はそれ以来2カ月半ぶり、4歳になっての初戦だった。
 昨年のモーニンに続いて2年連続での勝利となったミルコ・デムーロ騎手は、「前回(チャンピオンズカップ)はすごくテンションが高くて、集中もしてなくて出遅れ、直線も伸びませんでした。今回はゲートの中で集中していて、直線でよく伸びてくれました」とのこと。

ミルコ・デムーロ騎手
平田修調教師

 今回も決していいスタートではなかったが、それでも無理せず中団につけることができた。東京競馬場ではこれで4戦3勝、2着1回と、広いコースが合っているようだ。
 「跳びが大きいので、小回りコースだとちょっと、というところがあります。府中に良績が集中していますが、府中だけの馬ではないし、決してマイラーではないと思っているので、これからいろいろなところに挑戦していきたいと思います。日本のダート界を背負っていく馬だと思っています」と平田修調教師。4歳になったばかりのゴールドドリームに対する期待は大きい。

取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ(早川範雄、国分智)