dirt
2017年1月25日(水) 大井競馬場 1800m

好位から直線力強く抜け出す
気鋭の4歳馬が実績馬を一蹴

 今年で20回目を迎えた牝馬のダートグレード、TCK女王盃JpnⅢ。注目を集めたのは、昨年のJBCレディスクラシックJpnⅠの覇者、女王ホワイトフーガだ。斤量58キロという厳しい条件にもかかわらず、単勝1.7倍と圧倒的な支持を集めた。2番人気以下は混戦模様で、中央ダートの準オープンまで2連勝の上がり馬、ワンミリオンスが5.7倍。昨年のレディスプレリュードJpnⅡでホワイトフーガを破ったタマノブリュネットが6.5倍で続き、マイティティー、トーセンセラヴィまでが10倍を切っていた。
 ゲートが開き先行争いを制したのは、最内枠のマイティティー。スタート抜群だったディアマルコが2番手、今回は積極策のリンダリンダが3番手、その内にはトーセンセラヴィがつけた。続いてワンミリオンスとホワイトフーガが併走し、その直後にタマノブリュネットと、上位人気馬は好位でレースを進めていた。
 4コーナーあたりで前の2頭が下がり始めたため、リンダリンダが早めに先頭に立つ形に。それを目がけて後続も押し寄せ、直線ではリンダリンダを中にして、内に進路を取ったワンミリオンス、外から伸びてきたホワイトフーガ、この3頭の激しい追い比べとなった。
 大接戦を制したのはワンミリオンス。3/4馬身差の2着にリンダリンダ。アタマ差の3着にホワイトフーガという決着となった。
 なお、地方馬の筆頭として期待された浦和のトーセンセラヴィは、残念ながら馬体故障のため向正面で競走を中止した。
 見事優勝を手にしたワンミリオンスは、重賞初挑戦での初制覇。道中の位置どりや、直線内を突く立ち回りで勝利に導いた戸崎圭太騎手の手綱さばきも見事だった。これまでダートはすべて1400メートルを走っており、「とにかく距離だけが心配だった」と陣営は口を揃えていただけに、1800メートルをこなせたことの価値は大きい。また、地方の馬場に対応できたこと、賞金を加算できたことも今後に繋がる大きな一歩だ。「まだ明けて4歳ですから、これからの馬ですよ」と小崎憲調教師。新星ワンミリオンスが、これからダート牝馬戦線でどんな存在になっていくのか注目である。次走はエンプレス杯JpnⅡを視野に入れているとのことだ。
 連覇達成とはならなかったホワイトフーガだが、蛯名正義騎手はまったく悲観していなかった。「斤量58キロでしたし、今日のパサパサした馬場で滑っていたりと、条件が悪かったですね。でもスムーズに走れて競馬が上手になっていますし内容は良かったです」と前向きなコメントを残した。高木登調教師によると、左回りの1600メートルがベストということもあり、次走は昨年同様フェブラリーステークスGⅠに挑戦したいとのこと。今年の最大目標はJBCレディスクラシックJpnⅠ・3連覇だ。
 そして、あわやの2着で場内を沸かせた大井のリンダリンダ。このレースで地方馬が馬券に絡んだのは、2012年のハルサンサン(1着)以来のこと。「荒山調教師の指示でいつもより前につけました。今日のような最後の粘り強さは強味ですね。ホワイトフーガに先着したわけですし、これからもチャンスはありますよ」と初コンビの吉原寛人騎手は笑顔で語った。昨年は東京プリンセス賞を制し、安定した走りで牝馬戦線を盛り上げたリンダリンダ。今年のさらなる成長と活躍が楽しみである。
戸崎圭太騎手
前走から乗せていただいてすごく乗りやかったので自信を持って乗りました。レースセンスがあるので、いい位置でリズムよく競馬ができれば最後は伸びてくれるというイメージを持っていました。4コーナーも手応え十分でがんばってくれました。反応がとても良くどんな展開でも大丈夫なところが強味です。
小崎憲調教師
調整しやすい馬ですし、馬体重も前走と変わらず状態は良かったです。牝馬ですが物怖じしないので初コースも気にしていませんでした。4コーナーの手応えが良かったのでそのまま押し切ってくれるんじゃないかと思っていました。今後のローテーションも組みやすくなったし、馬を労ってあげたいです。

大井のリンダリンダが2着

取材・文:秋田奈津子
写真:早川範雄(いちかんぽ)