2017年1月24日(火) 高知競馬場
第1戦
第2戦

第1戦

第2戦

混戦模様のメンバーによる激戦
優勝は2戦とも2着の藤本現暉騎手

 大陸からの強烈な寒気団によって、北海道ではマイナス30度以下を記録したところもあるという状況では、南国高知でもその影響が避けられないところ。それでも10名の騎手が戦う2つのレースは太陽の下で行われた。
 今年の全日本新人王争覇戦は、出場騎手10名のうち8名がデビュー2年目。地元の松木大地騎手と高知で期間限定騎乗をしていた林謙佑騎手(船橋)以外は初めての高知競馬となる。
 しかしながら、普段と違うメンバーで戦うという意味では条件的に同じ。このレースは的中させるのはもちろん、予想するのもむずかしいのだが、さらに今年は地元のファンが「第1戦も第2戦も、よくこんな比較しにくい馬をそろえたなあ」というほどのメンバー構成。第1戦の単勝人気は割れに割れて、1番人気馬で5.3倍、9番人気馬でも13.6倍という数字になった。
 そのあたりが各騎手の頭にもあったのだろうか。第1戦はゲートが開いてから全馬が先手を主張したがらない感じさえする流れ。見た目にもペースが遅いという印象は、最初の400メートルが25秒3という橋口浩二アナウンサーの実況音声で裏付けられた。
 それでも出走馬は下級条件馬であるがゆえに、溜めて行ってもそのぶん末脚が伸びるわけではないようで、「遅いとは思ったんですが、でも最後は一杯になってしまって」(金沢・柴田勇真騎手)、「遅いペースで主導権を取りましたが、向正面で厳しくなってしまいました」(JRA・野中悠太郎騎手)など、レースを終えた騎手たちはレース運びの難しさを口にしていた。
 そのなかで第1戦を制したのは林騎手。「今日は馬場の内側も使えるとアドバイスされまして。4コーナーでもインがかなり開いていたので、そこをうまく走らせることができました」と、高知での経験もアドバンテージにして好結果につなげた。
 2着もインコースをうまく回った藤本現暉騎手(大井)が入線。レース後はすぐに、第2戦でコンビを組む馬のことを、その馬の主戦騎手である別府真衣騎手に教えてもらっていた。
 3着に入った小林凌騎手(岩手)は「ペースを考えて早めに仕掛けましたが、最後は苦しくなってしまって」とのことだったが、「それよりもこんなにいい馬場で乗るのは久しぶりです」と、不良馬場が続いた水沢競馬場とは違うコンディションに笑顔をみせていた。
 間にレースをひとつはさんで始まった第2戦も下級条件馬たちによる戦い。単勝人気は10倍未満が5頭で、そのほかの5頭は20倍以上ながらも最低人気馬が30.9倍という混戦模様。西啓太騎手(大井)が「馬場の雰囲気は感じ取れました」と話したように、各騎手はそれぞれに掴んだところがあった様子。それゆえか、第1戦よりも先行争いが激しくなった。 しかし10頭はほとんどひとかたまりで進み、7番枠からスタートして8着に敗れた高橋昭平騎手(大井・現在は笠松で期間限定騎乗中)は「外を回らされてしまいました」と敗因を話し、先手を主張した栗原大河騎手(金沢)は早々に失速して最下位に。その流れ、展開を味方につけたのは「ずっと前が詰まっていて、4コーナーでも内を突くしかなかったです」という加藤祥太騎手(JRA)。最後までしぶとく伸びて、クビ差で勝利をもぎ取った。
 2着は好位の外で流れに乗った藤本騎手。3着にはほとんど最後方からじわじわと差を詰めてきた柴田騎手が入った。
 第1戦も第2戦も混戦必至のメンバーだけに、道中の立ち回りが結果につながった面が大きかったようだ。地元所属の松木騎手にしても「普段とはレースの流れがまったく違いましたね」という感想。今年はヤングジョッキーズシリーズが全国の競馬場で開催されるが、そこでも同じような状況になるのかもしれない。
 だからこそ、そういったなかで好成績をおさめることには価値があるといえそう。総合優勝は2戦とも2着に入った藤本騎手。第1戦は後方から、第2戦は先行策で結果を残した騎乗が光った。
 第2位には第1戦を制し、第2戦は6着だった林騎手。林騎手の勝負服は、現地で各騎手の戦いぶりを見守った桑島孝春さんから引き継いだもの。そこで2位に入ったことは、今後への自信と励みになったことだろう。
 第3位は加藤騎手。このあとのヤングジョッキーズシリーズに登場してくる可能性は十分で「その意味でもいい経験になりました」と話した。
 今回の全日本新人王争覇戦は、4月から始まるシリーズへのプロローグともいえそう。ここで戦った10名の若手騎手がこの経験を飛躍の糧にすることを期待するとともに、これからスタートする若手騎手同士の戦いが大いに盛り上がることにも期待したい。

取材・文:浅野靖典
写真:桂伸也(いちかんぽ)

総合優勝
藤本現暉騎手
(大井)
1着を獲りたかったという思いはありますが、頑張ってくれた馬、関係者のみなさんに感謝したいですね。技術的にまだまだ足りないところはありますが、(期間限定騎乗をしていた)佐賀でたくさん乗せていただいた経験も生きていると感じます。今後は地方競馬を代表できるような騎手になりたいです。
総合2位
林謙佑騎手
(船橋)
第1戦は高知での経験をうまくいかすことができましたが、第2戦はもう少し追い出しを我慢して、メリハリがある競馬ができればよかったと思います。それでもひとつ勝てたのはうれしいことですね。でも技術的にはまだまだだと思いますし、これからもっと頑張っていきたいです。
総合3位
加藤祥太騎手
(JRA)
まず、今回の代表に選んでいただいたことに感謝したいですね。第2戦は直線の入口あたりではちょっと厳しいかなと思いましたが、最後は馬の力で勝たせてもらいました。改めて、地方競馬にも上手な騎手がたくさんいることを実感しました。今回の経験はとてもいい刺激になりました。