昨年まで秋に実施されていた『ワールドスーパージョッキーズシリーズ』が、大きくリニューアル。『ワールドオールスタージョッキーズ』と名を変え、8月29・30日にJRA札幌競馬場で行われる。その出場権を賭けて地方競馬のトップジョッキーが争う『スーパージョッキーズトライアル（SJT）』が今年は7月に開催。地方競馬代表騎手2名のうち、1名は北海道所属騎手のため、SJTからは優勝者のみがワールドオールスタージョッキーズに出場することができる。なお、金沢の吉田晃弘騎手が負傷のため藤田弘治騎手が繰り上がりで参戦。そして、ワイルドカードからは、川原正一騎手（兵庫）、青柳正義騎手（金沢）、山本聡哉騎手（岩手）の上位3名が通過。14名の熱き戦いが大井競馬場で始まった。
　今年のメンバーを見ると、初出場の騎手が4名もいることが印象的だ。近年めきめきと成績を伸ばしている騎手ばかりで世代交代を感じさせられる。「南関東は初めて。エキストラ騎乗の経験を活かしたいですね」（金沢・藤田弘治騎手）、「同期の藤田にだけは負けないようがんばります」（笠松・吉井友彦騎手）、「まずは次のステージにいけるようにしないと」（高知・永森大智騎手）、「なるようになりますよ」（船橋・左海誠二騎手）と、それぞれに言葉を残し、戦いの舞台に向かった。
　そんな初出場騎手たちの活躍にも期待していたのだが、第1戦シルバーサドル賞（1200メートル）の主役は、メンバー中、最多出場で最年長の的場文男騎手（大井）だった。
　激しい先行争いを山口勲（佐賀）騎手が制し、それに左海騎手と村上忍騎手（岩手）が続き、的場騎手は4番手の絶好位につけた。直線で村上騎手が先に抜け出すと、内から青柳騎手も伸びてきて、その間にいた的場騎手の進路が一瞬塞がれた。しかし冷静に外に切り替えると前の2頭を一気に交わして突き抜けた。2着に青柳騎手、3着に村上騎手が続いた。
　「外に出した時には勝てると思いました。ホッとしましたよ」と興奮気味の的場騎手。昨年のSJTの際は、「年齢的にもこれが最後のチャンスだと思っている」と口にしていたのだが、今年もきっちり出場し、初戦を勝って場内をしっかり盛り上げた。ファンの期待を裏切らない58歳の大ベテランには魅了されるばかりだ。
　さて、レース前ほとんどの騎手が話していたのは、「とにかく第2ステージにいけるようにポイントを獲りたい」ということ。次のステージに繋げるためにも、全4戦の中で第2戦が一番重要になるレースなのかもしれない。そして、やはり今年も熾烈なポイント争いが繰り広げられた。
　第2戦シルバーブライドル賞（1800メートル）は、永森騎手がハナを奪い、1番人気の真島大輔騎手（大井）が2番手、大外枠から積極策の藤田騎手が並びかけて先行集団を形成した。3コーナーで早くも真島騎手が先頭に立ち、各ジョッキーの腕がさかんに動き始めたところ、抜群の手ごたえで前に接近していたのが山本騎手だ。直線に入ると大外を豪快に伸び、残り200メートルを過ぎたところで真島騎手をとらえると、その後はぐんぐんと突き放し7馬身差の圧勝劇を披露した。2着は最後まで粘った真島騎手。直線で末脚を伸ばした村上騎手が14番人気で3着と好走した。
　第1戦は最年長騎手の勝利だったが、第2戦は、最年少27歳の山本騎手のパフォーマンスが光った。「ある程度の位置につけたいと思っていたんですが、出遅れてしまったので、馬の力を信じてリズムだけは崩さないように乗りました」とコメント。ワイルドカード第1戦で、最後方から一気の脚で掴んだ勝利は記憶に新しいところだが、どんな状況にも動じない精神力には目を見張るものがある。ワイルドカードからの本戦優勝者はまだ出ていないが、山本騎手のこの勢いには期待したいところだ。
　そして第1ステージの結果は、なんと上位3人が26ポイントで並ぶという、昨年同様の大混戦。規定により、1位は山本騎手（6着・1着）、2位は真島騎手（4着・2着）、3位は村上騎手（3着・3着）となり、岩手勢の活躍が目立った。現在、地元岩手では激しいリーディング争いが繰り広げられているだけに、「そういう状況も良い刺激になって、こういう結果に繋がっているのかもしれませんね」と山本騎手は語った。また村上騎手は、昨年ケガのために第2ステージ欠場となっただけに今年こそはの気持ちだ。
　ポイントの知らせを聞いた真島騎手は「めちゃくちゃ面白い戦いですね！」と思わず大きな声。この真剣勝負を騎手自身が心底楽しんでいる様子が見られるのもこのシリーズの魅力である。しかし、この中からワールドオールスタージョッキーズに出場できるのは1人だけ。果たして戦いを制するのは誰なのか。最終決戦の第2ステージは7月23日、園田競馬場で行われる。

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（YouTube地方競馬チャンネル内）