SJT タイトル
 本年11月29日および30日にJRA東京競馬場で実施される第28回ワールドスーパージョッキーズシリーズ(WSJS)には、地方競馬から代表騎手1名が参加しますが、この出場権を地方競馬トップジョッキーが競う「ワールドスーパージョッキーズシリーズ地方競馬代表騎手選定競走」の呼称です。下記に示しました、SJT本戦(第1ステージ、第2ステージ)の4レースにおける着順に応じた得点の合計により、WSJSの(※)地方競馬代表騎手(第2位の者が補欠騎手)が選ばれます。
 また、SJT本戦に先がけて、各地方競馬場リーディング2位(南関東地区は5位)の騎手等による、本戦への出場を懸けた『SJTワイルドカード』が実施されます。
 ※ 地方競馬代表騎手については、地方競馬全国協会から代表騎手1名、補欠騎手1名を日本中央競馬会に推薦し、同会が決定します。
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地元の利を生かし鮫島騎手が優勝
勝負をあきらめず吉原騎手が2位

 今年は11月29・30日にJRA東京競馬場での開催となるワールドスーパージョッキーズシリーズ(WSJS)。その地方代表出場権を賭けた戦いが、今年は佐賀から始まった。各地のリーディング2位(南関東は全体で5位、8月29日現在)の騎手といっても、当然のことながらトップの騎手とは紙一重。そして選定委員によって選ばれた2名は、昨年54歳で自身初の全国リーディングとなり、WSJSにも2度目の出場を果たした川原正一騎手(兵庫)と、金沢所属ながら大井のハッピースプリントで南関東二冠を制し、ジャパンダートダービーJpnⅠでは惜しくも2着だった吉原寛人騎手。ワイルドカードとはいえ錚々たる顔ぶれだ。
 1400メートルで争われる第1戦は、吉原騎手のアイスウィッチが1番人気。吉原騎手といえば、先の南関東二冠制覇をはじめ、近年では全国各地の重賞でのスポット参戦が目立ち、地方競馬では今もっとも勢いのある騎手のひとり。しかし意外にも佐賀競馬場での騎乗は今回が初めてとのこと。レース前、1番枠に入ったことで、佐賀コースの深いラチ沿いをどう立ち回るかを気にしていた。
 逃げが予想されたうちの1頭、永森大智騎手(高知)のドリームスクリーンがダッシュよく飛び出してハナに立ち、2番手に藤田弘治騎手(金沢)、3番手に田中学騎手(兵庫)で、1~2コーナーを回るところでほぼ隊列が決まった。吉原騎手はスタート後の直線から外に持ち出すところがないか気にしていた様子だが、結局向正面まで外には出せず。覚悟を決めて内から仕掛けていった。
 4コーナー、先頭の永森騎手に、内から吉原騎手が並びかけ、直線ではこの2人の追い比べ。ゴール前、じわじわと前に出た永森騎手が吉原騎手に3/4馬身差をつけて勝利。外から伸びた藤田騎手がクビ差で3着に入った。
 スローペースで単騎の逃げに持ち込んだ永森騎手は、してやったりの表情。対して吉原騎手は最後まで内に閉じ込められたままで、「佐賀のラチ沿いは想像していた以上に重くて、馬に力はあるのに最後は進んでくれなかった」と。吉原騎手が第2戦で騎乗する馬は印が薄く、人気馬に当たった第1戦は何が何でも勝つという意気込みだっただけに、2着とはいえ悔しさを表していた。
 1800メートルで争われる第2戦。逃げたのは単勝1番人気に支持された田中騎手のドリームルーツで、藤田騎手がぴたりと2番手を追走。第1戦で1、2着の永森騎手、吉原騎手はと見れば、最後方で轡(くつわ)を並べ、ポイント争いは混戦を予感させた。
 向正面に入ると、中団の内で折り合いに苦労していたダイワボルドーの鮫島克也騎手(佐賀)が、馬の行く気に任せて内から一気に先頭に立った。そのまま徐々に差を広げ、直線を向いたところでは後続との差が5馬身ほど。そのリードを保ったままの圧勝となった。2着には中団から徐々に位置取りを上げてきた岩橋勇二騎手(北海道)が入り、田中騎手が3着。上位人気3頭が3着までを占める結果となった。
 そして優勝は、5着、1着の30ポイントで鮫島騎手。「2戦目はある程度勝ち負けになりそうだったので、1戦目は5着までに入れるようにと思って乗りました」とのこと。鮫島騎手は今回騎乗した2頭とも過去に騎乗経験があり、さらにほとんどの馬を知っているという地元の利は大きかったようだ。
 そして2位は、2着、5着で25ポイントの吉原騎手。第1戦が終わったあとの悔しい表情からは一変、結果を聞いて破顔一笑。2戦目は3コーナーでもまだ最後方。追って追って追いまくって5着に持ってきた。「ゲートを出てから躓いてしまって、どうしようかと思いました。2コーナーあたりからひたすら追い通しでした」と笑った。
 第1戦を制した永森騎手は、第2戦では9着。吉原騎手にわずか2ポイント差で、盛岡への切符を逃した。ちなみに吉原騎手の第2戦での6着馬との差はわずか半馬身。どこかで気を抜いて6着だったら、永森騎手が2位になるところだった。着順ポイントによって争う対抗戦では、いかに人気薄の馬をひとつでも上の着順に持ってこられるか、それが結果を大きく左右することをあらためて思い知らされた。
 スーパージョッキーズトライアル第1ステージの盛岡(10月6日)では、ながらく佐賀のリーディングを争ってきた鮫島騎手と山口勲騎手が揃い踏みとなり、全国でその名を知られる吉原騎手も加わって、一層豪華メンバーによる争いとなりそうだ。
ワイルドカード
優勝

鮫島克也騎手
(佐賀)
(2戦目は)掛かる馬なので、あまり出したくなかったんですけど、いいスタートで掛かりすぎてしまいました。以前、先頭に立って止ったことがあるので心配だったんでが、直線を向いて馬にまだヤル気があったので大丈夫だと思いました。地元なので馬場を知っていると、やはり有利なところはあります。
ワイルドカード
準優勝
吉原寛人騎手
(金沢)
とにかく次の出場権がほしかったので、2位でもいいです。勝つつもりの初戦を落として、どうしようかと思っていたところ、2戦目は最後方からになって、逆に思い切った競馬で、今度は馬場の軽い外を回して、馬もそれにこたえてくれて、掲示板を確保できました。東京(WSJS)に行けるようにがんばります。

騎手紹介の場面。各騎手、少し緊張した面持ち。
第2戦のブロンズホイップ賞。
後続を大きく引き離した地元・鮫島克也騎手(佐賀)が1着。
本戦10月6日(月)・盛岡への出場は、
鮫島克也騎手(佐賀)と吉原寛人騎手(金沢)に決定。



取材・文:斎藤修
写真:桂 伸也(いちかんぽ)




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(YouTube地方競馬チャンネル内)