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第39回 栄冠賞 7/1(火) 門別 1200m


2012年生まれ最初の重賞馬は、
父ワイルドラッシュ産駒の牝馬。



 日本で最も早く行われる2歳重賞「栄冠賞」には、全国の競馬ファンや関係者から、毎年多くの注目が集まる。2012年生まれ最初の重賞馬を目指して至極の素質馬が集うことに加え、優勝馬には7月19日(土)に函館競馬場で行われるJRA最初の2歳重賞「函館2歳S(G3、芝1200m)」への出走権が与えられ、全国区のスターダムへ駆け上がるための第一歩となる可能性があるからだ。栄冠賞出走馬から、エンゼルカロ(1999年)、モエレジーニアス(2005年)、ハートオブクィーン(2007年)と3頭の函館2歳S優勝馬が出現していることも、この一戦の重要性を物語っている。また、オリオンザサンクス(1998年)、ネフェルメモリー(2008年)、クラーベセクレタ(2010年)のように、このレースの優勝馬が翌年の南関東クラシック戦線の主役となる可能性も高い。

 今年、その大一番に臨んだ精鋭は14頭。期待の新種牡馬(バトルプラン、ローレルゲレイロ、アドマイヤオーラ、カネヒキリ)産駒も4頭含まれ、例年にも増して高レベルなメーバーが揃った。そんな中、単勝2.1倍の1番人気に支持されたのは、前走のデビュー戦で後続を6馬身突き放して勝ったクリノショウスーシ(牝、父サウスヴィグラス)。3.8倍でオヤコダカ(牡、父サムライハート)、7.4倍でルージュロワイヤル(牝、父フレンチデピュティ)とつづき、単勝オッズ10倍をきったのはこの3頭。まだ1~2戦しかしていない若駒ばかりで未知数な部分も多く、その状態を見極めようと真剣な眼差しがパドックに向けられていた。

 ゲートが開いて、まっ先に飛び出したのはクリノショウスーシ。最内から6番人気バトルルーラー(牡、父バトルプラン)も並びかけ、2頭が並んでレースを引っ張る形となった。後続もそれほど離されずに追走し、4コーナーではさらに差が詰まって14頭がひと塊に。そのまま直線に入ると、内外分かれて5~6頭が横一戦に並ぶ激しい叩き合いが繰り広げられる。逃げたクリノショウスーシが粘り込もうとするところ、内ラチ沿いをピッタリとまわってきた14番人気フィーリンググー(牝、父セイントアレックス)が内から抜け出し、外に持ち出したオヤコダカも前を交わす。この2頭で決まるかと思われたところ、さらに外を通って脚を伸ばしてきたのが7番人気ティーズアライズ(牝、父ワイルドラッシュ)。並ぶ間もなく一気に突き抜け、先頭でゴール板を駆け抜けた。2着フィーリンググー、3着オヤコダカとの差はクビ、クビ。まさに手に汗握る大激戦だった。ティーズアライズを優勝に導いた松井伸也騎手は、福山競馬からホッカイドウ競馬に移籍して2年目、騎手生活12年目にして初の重賞勝利という感動的なフィナーレとなった。

 父ワイルドラッシュ産駒で栄冠賞に優勝した牝馬といえば、4年前のクラーベセクレタを思い出す。その後、南関東へ移籍して牝馬ながらに羽田盃、東京ダービーを制した同馬の活躍ぶりは、地方競馬の一時代を築くものだった。そのクラーベセクレタが引退した今年、入れ替わるように現れた同父の牝馬。ティーズアライズにも今後、クラーベセクレタ級の活躍を期待したくなる。

 今年の栄冠賞は結果的に、6月12日に行われた「ウイナーズチャレンジ1」から再度、函館2歳S出走権を懸けて臨んできた3頭(2着馬→5着馬→4着馬)の決着となり、現時点での完成度を含めた2歳馬たちの力量が少しずつ見え始めてきた。優勝したティーズアライズはもちろん、栄冠賞上位3頭に完勝しているエンターザスフィア(牡、父ヴァーミリアン)も、中央馬を相手にした芝の重賞でどこまでやれるか楽しみは広がる。これから本格的な夏を迎える北海道は、2歳馬たちの躍進とともにますますヒートアップしてくる。


松井伸也騎手コメント
前走でいい脚を長く使ってくれるのがわかっていたので、後ろにつけて直線勝負に懸けようと思っていました。道中も手応え十分で、これなら届くと確信しながら乗っていました。GOサインに素直に反応してくれて、非常に乗りやすい馬です。自分にとっても初めての重賞勝利で、本当に嬉しいです。
 
小野望調教師コメント
繊細なところのある牝馬で、今日もいれ込みが見られたので心配しましたが、最後はきっちり差してくれましたね。日本一レベルの高いホッカイドウ競馬の2歳戦で、最初に重賞を勝つことができて誇りに思います。大目標にしていた函館2歳Sの権利が獲れたので、そこへ向けてしっかり調整していきたいです。
  文:浜近英史(うまレター)
写真:中地広大(うまレター)