レースハイライト
第19回 チャンピオンズカップ GⅠ
2018年12月2日(日) JRA中京競馬場 ダート1800m
好スタートは成長の証 ゴール前突き放して完勝
レースを前にした水曜日、ゴールドドリームの回避が発表された。このレース連覇に加え、2年連続でのJRA賞最優秀ダートホースのタイトルもかかっていただけに、関係者にとっては無念だったに違いない。そのゴールドドリームをマイルチャンピオンシップ南部杯JpnⅠで負かした3歳のルヴァンスレーヴ、さらに京都で行われたJBCクラシックJpnⅠ制覇が初めてのJRAでの重賞勝ちとなり、さらなる充実ぶりを印象付けたケイティブレイブ。期待されたダート3強対決は、その一角が不在となって実現せず。それでもノンコノユメ、アポロケンタッキー、アンジュデジールに、アメリカのパヴェルとGⅠ/JpnⅠ勝ち馬6頭が顔を揃える好メンバーとなった。
ゴールドドリームの回避によって単勝1.9倍という断然の支持を集めたルヴァンスレーヴ。これまでにも、全日本2歳優駿、ジャパンダートダービー、そしてマイルチャンピオンシップ南部杯と、JpnⅠタイトルを重ねるごとに驚きの強さを見せてきたが、JRA・GⅠの舞台で、3歳秋を迎えてさらなる充実ぶりを見せた。
逃げたのは1番枠に入った牝馬のアンジュデジール。外枠からヒラボクラターシュも積極的に位置を取りに来たが、1コーナーを回って隊列が決まった時、ルヴァンスレーヴは2番手につけていた。スタートに課題があり、たとえ出遅れたとしても直線勝負で圧倒的な強さを見せてきた馬だけに、アンジュデジールの引っ張るゆったりした流れで2番手では、太刀打ちできる馬はいないのではないか、そう思わせる展開だった。
果たして直線を向いての勝負はそのようになった。残り200メートルあたり、ルヴァンスレーヴが先頭のアンジュデジールをとらえようとしたところ、5番手を追走していたサンライズソアが交わし去ろうかという勢いで伸びてきた。しかしその瞬間、ギアを一段階上げたかのようにルヴァンスレーヴが一瞬にして他馬を置き去りにした。鞍上のM.デムーロ騎手はゴールに入る前から右手の拳を握りしめる余裕のゴールとなった。
もう1頭、驚かされたのが2馬身半差で2着に入った8番人気の伏兵ウェスタールンド。道中は1頭だけ離れた最後方を追走。4コーナーで馬群が大きく広がったところでラチ沿いぴったりを回って位置取りを上げ、サンライズソアをクビ差とらえてのゴール。前半脚を使わなかったとはいえ、乾いた良馬場のダートで上り3ハロン34秒4は強烈。思えば2走前のシリウスステークスGⅢで、4コーナー最後方からオメガパフュームのクビ差2着に突っ込んだときも、不良馬場ではあったものの35秒1という末脚を使っていた。人気薄ゆえ思い切った騎乗ができたこともあっただろうし、持ち味を存分に発揮しての好走だった。
そして3着がサンライズソア。JBCクラシックJpnⅠでは逃げて3着に粘っていたが、ここでもその実力を見せた。「直線、反応して伸びてくれたけど、勝った馬が強かった」(J.モレイラ騎手)ということだから、しかしルヴァンスレーヴには完敗だった。
そして牝馬ながら牡馬一線級相手に4着と健闘したのがアンジュデジール。前走JBCレディスクラシックJpnⅠは好位からの差し切りで、そのとき逃げたアイアンテーラーのペースは1000メートル通過が60秒4。そして今回、同じ1800メートルの良馬場で1000メートル通過が61秒9なら、アンジュデジールにとってはマイペース。内枠ゆえに思い切って逃げた横山典弘騎手の好判断でもあった。
残念だったのは、JBCクラシックJpnⅠの覇者ケイティブレイブ。レース後、福永祐一騎手は、「んー、何とも言えない。手ごたえはよかったんですけど、4コーナーで西日をやたらと気にして、伸び負けじゃなくて、まったく伸びていない」と。また前走比プラス10キロでデビュー以来最高馬体重の528キロということもあったかもしれない。見せ場をつくれず11着だった。
ただ勝ったというだけでなく、圧巻のレースぶりを見せたルヴァンスレーヴの強さは成長力にある。「トモに力がついてきて、左右の差がなくなってきたのが、好スタートを切れるようになった理由だと思います」と萩原清調教師。デムーロ騎手は、「スタートで一番いいところにつけられて、直線は馬なりで伸びました」というから、やはり能力が抜けていた。加えて萩原調教師は、「体も成長途上で、まだレベルアップできるポイントもある」と、さらに強くなる可能性があると見ている。次走や具体的な目標についての明言は避けたが、近い将来、世界が視野に入ってくることは間違いない。
取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ(早川範雄・国分智)