レースハイライト
第18回 JBCクラシックJpnⅠ
2018年11月4日(日) JRA京都競馬場 1900m
中団追走からゴール前抜け出す JpnⅠ・3勝目でさらなる高みへ
18回目にして初のJRA開催となったJBC。JpnⅠレースが3つという豪華版で、好天に恵まれたこともあり、京都競馬場には3万8865人の観衆が詰めかけた。
フルゲート16頭のうち、地方からは3頭が出走。東京記念を制したシュテルングランツ(浦和)、白山大賞典JpnⅢ・3着のカツゲキキトキト(愛知)、姫山菊花賞を勝ったタガノゴールド(兵庫)が淀に参戦してきた。
人気はやはり、中央勢が中心。単勝1番人気には今年GⅢ/JpnⅢを2勝し、本格化したサンライズソアで3.2倍。もちろん、この背景には直前のJBCスプリントJpnⅠをグレイスフルリープで勝ち、4週連続GⅠ/JpnⅠ制覇を達成した絶好調のクリストフ・ルメール騎手という要素も人気を押し上げていた。これに3歳ながらシリウスステークスGⅢで古馬を一蹴したオメガパフュームが3.7倍、JpnⅠで2勝、2着3回のケイティブレイブが4.2倍、一昨年の東京大賞典GⅠの勝ち馬で、ミルコ・デムーロ騎手のアポロケンタッキーが7.7倍で続き、この4頭が単勝ひと桁台だった。
逃げたのはルメール騎手のサンライズソア。これに外からテーオーエナジーとテイエムジンソク、内からJRA史上最年長騎乗記録となる62歳1カ月28日の的場文男騎手(それまでの記録は佐々木竹見騎手の59歳3カ月16日)のシュテルングランツがつけた。ケイティブレイブは中団外で待機。オメガパフュームはさらにうしろという位置取りだった。
3コーナー過ぎ。ケイティブレイブが外から徐々に進出すると、オメガパフュームもうしろから脚を伸ばす。4コーナーで逃げるサンライズソアを射程圏に入れたケイティブレイブがラスト100メートルで先頭に立つと、オメガパフュームの猛追を3/4馬身振り切り、17年帝王賞、今年の川崎記念に続くJpnⅠ・3勝目をマークした。
外々を回っての差し切り勝ちは横綱相撲だった。杉山晴紀調教師は「前走(日本テレビ盃1着)は休み明けでも強い勝ち方だったが、今回はさらに、上積みを感じていた。ここは勝たないといけないと思っていた」と自信を持って臨んでいたことを明かした。今年3月、定年解散の目野哲也厩舎から引き継いで以降、ダイオライト記念、日本テレビ盃とJpnⅡは2勝したが、帝王賞JpnⅠではゴールドドリームにクビ差2着に惜敗。今回は杉山調教師にとって、念願のJpnⅠ初制覇となった。
昨年3月から、13戦続けて騎乗している福永祐一騎手は脚質転換の成功を勝因にあげた。昨年の平安ステークスGⅢまでは逃げか先行して2番手からでないと結果が出なかったケイティブレイブだったが、続く帝王賞JpnⅠでは出遅れて後方追走から直線一気の末脚で差し切って、周囲を驚かせた。それ以降は、福永騎手がどんな展開になっても、対応できる競馬を教えた。距離不足で11着に敗れたフェブラリーステークスGⅠを別とすれば、9戦4勝、2着、3着が各2回、4着1回とすっかり安定した。「今日もポジションは決めずに、流れに任せて無理せず、リズムが守れる外めにつけました。今では何でもできる馬になりました」と胸を張った。
今後は、12月2日中京のチャンピオンズカップGⅠ(ダート1800メートル)に向かう。「(帝王賞で負けた)ゴールドドリームと(3歳でマイルチャンピオンシップ南部杯を制した)ルヴァンスレーヴが相手になりますが、対戦できる勲章は今日、得ることができたと思います」と福永騎手。JBCクラシックJpnⅠからチャンピオンズカップGⅠ、東京大賞典GⅠと続く、秋のダート王道路線が、ますます面白くなってきた。
地方から参戦の3頭はタガノゴールドが9着、カツゲキキトキトが12着、シュテルングランツが16着に終わった。「3~4コーナーは思ったより手応えは良かったし、よく頑張った。あともう1つ上の着順が欲しかったですね」とタガノゴールドの下原理騎手。カツゲキキトキトの大畑雅章騎手は「今回は相手が強いので控えました。強い相手と経験を積んで慣れてくれば」と悲願でもあるダートグレード競走制覇に向け、今後に期待をかけた。的場騎手は「3番手のいい位置が取れたが、最後は力の差かな」と振り返った。
地方馬最先着は9着のタガノゴールド(兵庫)と下原理騎手
取材・文:松浦渉
写真:いちかんぽ(桂伸也・早川範雄)