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レースハイライト

第18回 JBCスプリントJpnⅠ

2018年11月4日(日) JRA京都競馬場 1200m

人気馬マークでゴール前とらえる 8歳にして掴んだビッグタイトル

 今年で18回目を迎えたJBC競走が、地方競馬から中央競馬に舞台を移して行われた。ダートのスプリンターにとっては国内唯一のJpnⅠの舞台でもあるJBCスプリントから、その戦いの火ぶたが切られた。
 単勝10倍以下は3頭で、1番人気はプロキオンステークスGⅢで日本レコードを叩き出したマテラスカイが2.0倍。2番人気が桜花賞GⅠ優勝や高松宮記念GⅠ・2着(2回)など、芝を中心に活躍してきたレッツゴードンキで6.4倍。3番人気がフェブラリーステークスGⅠや韓国のコリアスプリントなどを優勝しているモーニンで6.6倍。
 しかしそれら人気馬に立ちはだかったのは、4番人気グレイスフルリープだった。昨年は韓国のコリアスプリントを優勝し、それ以降はダートグレードを戦い続けている。今年4月の東京スプリントJpnⅢでは武豊騎手で逃げ切り勝ちを収めたが、前走東京盃JpnⅡから手綱をとるクリストフ・ルメール騎手にエスコートされ、ダートスプリント王へと上り詰めた。
 レースは、マテラスカイが先頭に立つと、ウインムートや浦和のノブワイルドが続いていき、グレイスフルリープはその後ろの内をキープ。3~4コーナーに向けて馬群がばらけても、グレイスフルリープはマテラスカイの後ろをキープした。
 直線に入り、マテラスカイが後続を離しにかかったが、グレイスフルリープは残り300メートルを過ぎて外に持ち出され、200メートルを切ってステッキが入れられると、一完歩ずつマテラスカイに詰め寄っていった。芸術的なレース運びで、最後は測ったかのようにクビ差交わしたところがゴール。勝ちタイムは1分10秒4(良)だった。
 「馬の状態もよかったです。武さん(マテラスカイ)マークでいいポジションでレースをすることができて、最後も交わせると思いました。完璧な内容でした」と、自身のレースぶりをも褒めたルメール騎手は、JRAで行われたGⅠ(JpnⅠ)では史上初となる4週連続制覇と年間7勝を達成した。
 グレイスフルリープを管理する橋口慎介調教師は、JRAの重賞初制覇がJpnⅠのタイトルとなった。「昨年のコリアスプリント優勝後から、馬体のハリや毛づやなどが目に見えて良化し、走る気持ちも前向きになり、馬が自信をつけたかのよう」と橋口調教師。今年8歳とはいえ年齢を感じさせない走りを続けている。まだまだ奥が深そうな馬だ。
 一方、東京盃JpnⅡ連覇の勲章を引っ下げて、地方競馬の期待を一身に背負った船橋のキタサンミカヅキは3着。道中は中団を追走し、直線ではこの馬の持ち味でもある末脚をしっかり繰り出した。
 「(キタサンミカヅキの強みは)地方競馬レベルにはいないくらいのパワー」と森泰斗騎手がいうほどの馬。そんなパワータイプだけに、ダートが軽いと言われる京都競馬場で、地方に移籍してからの力強い走りが見られるのかは懸念されていた。
 レース後、森騎手は神妙な面持ちで、「無念です。南関東のダートと質が違うので、軽いダートが堪えた感じで、いつもより進みが悪かったです。それでも4コーナーで前が開いた時には何とかなるかなと思ったし、最後はいい脚で伸びているのですが、時計が速くなるぶん、前の馬たちも頑張るので……。重いダートでやれればこのメンバーでもヒケは取りません。いい勝負になるんじゃないかと思っていたので残念です」と肩を落としていた。今年8歳のキタサンミカヅキにとって、充実期ともいえるような今だからこそ、残念な3着だった。
 中央時代はオープン特別で1勝を挙げたものの、移籍前には二桁着順も多く、頭打ちの感じもあった。しかし8歳となって確実にパワーアップし、再び中央のJpnⅠの舞台での堂々とした走りは本当にすばらしい。胸を張って欲しい。

地方馬最先着は3着のキタサンミカヅキ(船橋)と森泰斗騎手
取材・文:高橋華代子
写真:いちかんぽ(早川範雄・桂伸也)