レースハイライト
第29回 テレ玉杯オーバルスプリント JpnⅢ
2018年9月24日(振・月) 浦和競馬場 1400m
ロケットスタートから逃げ切る
JBCへ弾みつく重賞初制覇
浦和競馬場開場70周年を記念して実施されているこの浦和開催。場内装飾や、花で作られた馬モニュメントの設置、浦和所属だった名馬たちの名を冠したレースが組まれるなど、華やかなお祝いムードの中で行われている。
そのメインイベントでもあるテレ玉杯オーバルスプリントJpnⅢは、ダートグレードレースに格上げされてから初めて浦和所属馬が優勝するという、ドラマチックな展開で幕を下ろした。南関東リーディング・浦和の小久保智調教師が管理するノブワイルド。オーナーはTUBEの前田亘輝さんだ。
ノブワイルドは中央デビューだが、3歳夏から浦和で再スタート。「自分の持っている能力以上に芯がしっかりしていなかった」(小久保調教師)。能力の高さに定評はあったものの、体が弱く2度の骨折を発症しながらも、じっくりゆっくりと育てられてきた。
レースでは左海誠二騎手を配し、ロケットスタートのようにゲートから飛び出すと、好枠を生かして先手を取り切った。すかさず、ネロやスアデラ、単勝1番人気ウインムートなどが続いていき、大きく縦長の展開。
「スタートはタイミングひとつなので、一完歩でもズレていたら出遅れていたかもしれません。そこまで競られることもなかったので、自分の形でいけたのもよかったです」(左海騎手)。
そのままノブワイルドのペースで進み、3コーナー付近ではギアを上げると、ネロをはじめとした先行勢の手応えが怪しくなった。
「セーフティリードを取っておきたいと思って早めに動かしました。さきたま杯(7着)は競られたこともあって手応えがなくなったので心配でしたが、今回は動ける余力がありましたね。動いた時に他馬がスッと見えなくなったのでヨシと思いました。ペースは飛ばしていたと思うので、これも馬の力です」。
4コーナーを回ったところでは3、4馬身のリードがあり、ゴール前では中団後方にいた馬たちも追い込んできたが届かず。ノブワイルドが2着のオウケンビリーヴに3/4馬身差をつけた。記念すべき重賞初勝利。3着は小久保厩舎の外厩馬としてエスティファーム小見川でトレーニングを積んでいるトーセンハルカゼ、4着には小久保厩舎生え抜き馬のアンサンブルライフが入った。
前田オーナーにとっても重賞初制覇。仕事のために浦和競馬場へ来場することはできなかったそうだが、小久保調教師が電話で話した際に、シービスケットが好きで馬主を始めたことで、怪我から復活した愛馬とシービスケットを重ね合わせて涙が出てきたと喜ばれていたそうだ。
意外にも小久保厩舎の地元・浦和でのダートグレードレースは初勝利だが、「勝ってうれしいというより、勝っていかなきゃいけない」と小久保調教師は気を引き締めていた。この後のノブワイルドは京都競馬場で実施されるJBCスプリントJpnⅠに挑戦予定だ。この路線の新星としてどんな戦いを挑むのか、今から待ち遠しい。
取材・文:高橋華代子
写真:宮原政典(いちかんぽ)
コメント
ホッとしました。前走はとても楽な勝ち方でしたが、自己条件とメンバーも違うので、今回はさきたま杯のような二の舞は嫌だなぁと思っていました。さきたま杯に比べるとレース展開も向いてくれたし、元々の能力は高い馬ですが力もついてきています。もっと強くなってくれると思うので楽しみにしています。
騎手とはイケイケの話しかしていないので、レースでの細かい作戦はありません。サマーセールで惚れ惚れして気に入って購入して頂いた馬なので、余計に勝つことができたのはうれしいです。ゆったりしたローテーションだったので仕上げやすかったですが、まだ体の弱さがあるのでケアをしていきたいです。