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レースハイライト

第27回 ゴールデンジョッキーカップ

2018年9月12日(水) 園田競馬場

ファイティングジョッキー賞

戸崎圭太(JRA)

スワンナプーム

エキサイティングジョッキー賞

田中 学(兵庫)

イネディットタイド

山口騎手が4年ぶり2度目の優勝
第3戦除外でも戸崎騎手が2位

 今年も園田競馬場に通算2000勝以上の騎手が集結した。JRAから3名、地方競馬から9名が選抜されてのゴールデンジョッキーカップは今年で27回目。当日の第1レースでは今年4月デビューの石堂響騎手が地方通算34勝を挙げ、兵庫県競馬における新人最多勝利記録を更新した。「ゴールデンジョッキーカップには騎乗経験のある馬が出走しているので、先輩方がどんなレースをするのか学びたいです。そして、僕も10年後に出場できるようにがんばります」と、ルーキーも憧れのまなざしを送った。
 「園田の一大イベントだよ」と顔をほころばせたのは川原正一騎手(兵庫)。笠松と兵庫でそれぞれ2000勝を超える勝ち鞍を挙げる“Wゴールデンジョッキー”で地方通算5345勝。その勝ち鞍を唯一超えるのは8月12日に地方競馬通算最多勝記録を更新した的場文男騎手(大井)。さらに記録を伸ばし、現在は地方通算7167勝となっている。昨年と一昨年は的場騎手の誕生日当日、今年は記録更新後の参戦とあり、場内には的場騎手の勝負服Tシャツを着たファンも駆け付けるなど注目を集めた。
 第1戦ファイティングジョッキー賞は1230メートル。スタートから1コーナーまでが短い中、「外の馬に行かれるなら自分が」と吉原寛人騎手(金沢)が先手を奪った。2番手には外から岩田康誠騎手(JRA)、その後ろは馬群がかたまり1コーナーに入った。直線では吉原騎手が必死に粘るところ、中団外からスワンナプームと戸崎圭太騎手(JRA)がゴール前でクビ差、差し切った。同馬を管理する田中範雄調教師は「スタートで立ち遅れたから終わったかと思ったけど、さすがやね!」と名手の腕を称えた。
 「いや~勝ちたかったねぇ!」と顔をクシャクシャにしたのは吉原騎手。5着の的場騎手も彼が勝ったと思ったらしく、「『吉原さん、おめでとう』って言ったら、『負けました』って言われちゃった」とのこと。その話を聞いた吉原騎手はすかさず「俺なんかにも『さん付け』ですもんね」と今回の出場騎手中最年少の騎手は笑った。3着には山口勲騎手(佐賀)。過去9回出場し、6回も総合3位以内に入っている。「4コーナーでは勝てる手応えだったんですが、意外とみんなと同じ脚色になってしまいました。次もがんばります」。
 第2戦エキサイティングジョッキー賞(1400メートル)は単勝1.6倍に支持されたイネディットタイドと田中学騎手(兵庫)がハナを奪った。管理する盛本信春調教師が「逃げたら渋太い」と話す馬。2番手外に福永祐一騎手(JRA)、その内に岩田騎手という隊列でレースは進んだ。直線では田中騎手がリードを広げ1着。第1戦では「張り切りすぎて仕掛けるのが早かったかな」と話していたが、ここできっちり勝利を収めた。「以前に乗った時、マイペースで走らせた方がいい印象でした。後ろから何か仕掛けてくるんじゃないかと緊張感と楽しみを持って乗れました」。5馬身差で2着の村上忍騎手(岩手)は「前に行ってほしいという指示だったんですが、周りが速くて。我慢して走ってくれて違う味を出してくれたかなと思います」。半馬身差3着の岩田騎手は「勝ちに行った分、前を追いかけて脚が上がってしまいました」と悔しそうな表情だった。それでも「このレースはお祭りみたいな感じで、しかも勝てば表彰台にいけるからね」と古巣でのレースを楽しんでいるようだ。
 2戦を終えてトップは1、4着の戸崎騎手。2位に5ポイント差をつけていたが、最終戦次第で優勝の行方は分からない状態だった。ところが、第3戦チャンピオンジョッキー賞の返し馬が終わってしばらくしたところで、戸崎騎手の騎乗馬が馬体検査。しばし緊張した空気に包まれたのち、競走除外のアナウンスが流れた。近走は2桁着順が多かった馬とはいえ、レースに参加できずに検量室に帰ってきた戸崎騎手の表情は硬かった。
 第3戦(1700メートル)は大外枠から好スタートを切った山口騎手が逃げ、内から積極的にポジションを取りに行った的場騎手が2番手。山口騎手が3コーナー手前からリードを広げると、3馬身差での完勝だった。2着は“的場ダンス”で追った的場騎手。その後ろの3着争いは接戦に持ち込まれた。「気難しい馬と聞いていたので、ムチを使わない方がいいと思った」と福永騎手が残したと思ったところ、道中は後方のインでじっとしていた吉原騎手が猛然と追い込んできた。結果はアタマ差で吉原騎手が3着、4着福永騎手。後述するが、この3着争いが総合3位争いに大きな影響を与えた。
 全3戦を終えて、3、7、1着の山口騎手が4年ぶり2回目の総合優勝。それを聞くと、左手でガッツポーズをつくった。総合2位は6ポイント差で戸崎騎手。3戦目は競走除外の2ポイントのみの加算となったが、しっかり上位をキープした。
 熾烈だったのは総合3位争い。わずか1ポイント差の間に3名の騎手がひしめく中、表彰台に立ったのは吉原騎手だった。「よしっ!よしっ!」と笑顔炸裂で、横にいた赤岡修次騎手(高知)からは「やっぱりねぇ、この人、上手やから」と茶々を入れられていた。勝利こそなかったものの、第3戦で10番人気ながらアタマ差3着に入ったことが表彰台を引き寄せたのだった。
 一方、「あーっ、残念っ!」と声を上げたのは的場騎手。3位とはわずか1ポイント差。田中騎手と同ポイントだったが、『最上位着順を記録した者が上位』という規程により5位だった。62歳になっても全力投球の的場騎手に対し「一緒に乗れる機会があまりないから、今日は嬉しかったです」と話したのは福永騎手。他の騎手たちも、楽しそうな表情でレースを振り返るなど、明るく生き生きとした雰囲気に包まれた検量前。ファンだけでなく、名手たちもレースを楽しんだようだった。
取材・文:大恵陽子
写真:桂伸也(いちかんぽ)

コメント

総合優勝
山口勲騎手
(佐賀)

2戦目が終わってみんなから「優勝できるんじゃないか」と言われていた通りになって良かったです。3戦目は予想以上に楽に先手を取ることができ、道中も手応えが良かったです。騎手交流戦の秘訣は特にないですが、初騎乗の馬はある程度、癖を把握したり乗った感じでコンタクトを取るよう努めています。

総合2位
戸崎圭太騎手
(JRA)

1戦目はスタートでやってしまったと思ったのですが、いい脚で伸びてくれました。2戦目は他馬を気にすると聞いたので、集中して走らせて4着。最終戦は競走除外になりましたが、こうした機会で乗せていただけるのは幸せです。優勝した山口騎手はさすがですよね。

総合3位
吉原寛人騎手
(金沢)

1ポイント差での3位、嬉しいです。最終戦の馬は涼しくなり状態も上向いていてチャンスがあると思っていました。なんとか3着に…と思っていたところ、馬が最後まで一生懸命走って差し切ってくれました。1、2戦目で(戸崎)圭太さんが上手に馬群を捌いて上位にきていたので、お手本にしました。